転生お転婆令嬢は破滅フラグを破壊してバグの嵐を巻き起こす

のりのりの

文字の大きさ
上 下
44 / 119
Mission2 げきまじゅおくちゅりを克服せよ!

44.おばあちゃん子

しおりを挟む
 ライース兄様の叱責が飛んだ。

「アタタ……。お許しください。若様、痛いです。髪を……そんなに強く引っ張らないでください」

 カルティのまとめられた後ろ髪をライース兄様がむずっとつかんで、思いっきりひっぱりあげていた。
 ライース兄様ってば、手加減なしだ。

 うん、あれは痛そうだ……。
 絶対に痛いだろう。
 見ているあたしも痛くなってきた。
 カルティの目には涙が浮かんでいるよ。

「カルティ、下ばかり見るな。ちゃんと正面を見据えろ!」
「はい……」

 カルティの顔が正面を向いた時点で、ライース兄様はぱっとその手を離す。
 乱れた髪を手で直しながら、カルティは姿勢を正した。

「おまえは、一流のアドルミデーラ家で、一流の教育を受けた、アドルミデーラ家の従者だ。もっと自信を持て。アドルミデーラ家に選ばれた一流の従者であることを誇れ。堂々としていろ」

 何回『一流』って言ってます?
 少し、ライース兄様の口調が刺々しいような気もするけど、あたしが言いたかったことをライース兄様がフォローしてくれた。
 さすが、ライース兄様だ。

「カルティは素敵な従者になれるよ」

 がんばってね、という気持ちをめいっぱいに込めて、あたしはカルティを見上げる。

「わ、わ、わかりました」

 顔を真赤に染め上げたまま、カルティはコクコクと頷く。
 その勢いで、後ろで一つにまとめられた髪がぴょこぴょこと馬の尻尾のように跳ねている。

 ……本編では、すごく捻くれて扱いにくいのに、幼いカルティは正反対の性格をしている。この素直さと反応は可愛すぎる。
 いつまでも愛でていたい。

 というか、このままの状態で育って欲しい。

 食器の片付けを再開したカルティを、あたしは生暖かい目線で見守る。

 カルティって、すごい『おばあちゃん子』なんだな――と、改めて実感する。

 あたしにとって、お祖母様はヒトとして尊敬する対象だけど、血縁関係者としては……ちょっと怖い。

 あたしは実母の身分が低かったこともあったし、正妻から隠れるようにして息を殺して生きていたので、貴族としての教育はさほど受けることができなかった。
 正妻の妨害で、支給品も滞り、さほどよい暮らしもしていない。

 身分が低いお母様はそれが当然と思っていたようで、あえて現状を父上に訴えることはしなかった。

 下手に訴えて、さらに嫌がらせの度合いが酷くなっても困る……とでも思ったのだろうか。

 言葉遣いもこんなんだし、礼儀作法もなってなくて、あたしを見たお祖母様は頭を抱え込んでしまったくらいだ。

 今は体調を崩されてちょっぴり控えめになったけど、最初の頃はマナーがなってない、とビシバシ怒られた。

 その厳しさが刷り込まれているから、お祖母様に対する苦手意識が消えないでいる。
 ま、前世を思い出した今なら、貴族世界で生きていくにはあまりにも未熟すぎるあたしに、お祖母様はあせりと責任を感じたのだろう。
しおりを挟む
数々の作品あるなか、ご訪問ありがとうございます。
これもなにかの『縁』でございます!
お気に入り、ブクマありがとうございます。
まだの方はぜひ、ポチッとしていただき、更新時もよろしくお願いします。
ポチっで、モチベーションがめっちゃあがります。
↓別のお話もアップしています。そちらも応援よろしくお願いします。↓
勇者召喚された魔王様は王太子に攻略されそうです
生贄奴隷の成り上がり〜魂の片割れとの巡り合い〜
感想 2

あなたにおすすめの小説

結婚しましたが、愛されていません

うみか
恋愛
愛する人との結婚は最悪な結末を迎えた。 彼は私を毎日のように侮辱し、挙句の果てには不倫をして離婚を叫ぶ。 為す術なく離婚に応じた私だが、その後国王に呼び出され……

「いなくても困らない」と言われたから、他国の皇帝妃になってやりました

ネコ
恋愛
「お前はいなくても困らない」。そう告げられた瞬間、私の心は凍りついた。王国一の高貴な婚約者を得たはずなのに、彼の裏切りはあまりにも身勝手だった。かくなる上は、誰もが恐れ多いと敬う帝国の皇帝のもとへ嫁ぐまで。失意の底で誓った決意が、私の運命を大きく変えていく。

婚約破棄されるのらしいで、今まで黙っていた事を伝えてあげたら、婚約破棄をやめたいと言われました

新野乃花(大舟)
恋愛
ロベルト第一王子は、婚約者であるルミアに対して婚約破棄を告げた。しかしその時、ルミアはそれまで黙っていた事をロベルトに告げることとした。それを聞いたロベルトは慌てふためき、婚約破棄をやめたいと言い始めるのだったが…。

冤罪から逃れるために全てを捨てた。

四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)

悪役令嬢の居場所。

葉叶
恋愛
私だけの居場所。 他の誰かの代わりとかじゃなく 私だけの場所 私はそんな居場所が欲しい。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ※誤字脱字等あれば遠慮なく言ってください。 ※感想はしっかりニヤニヤしながら読ませて頂いています。 ※こんな話が見たいよ!等のリクエストも歓迎してます。 ※完結しました!番外編執筆中です。

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた

アリエール
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。

政略結婚だからと諦めていましたが、離縁を決めさせていただきました

あおくん
恋愛
父が決めた結婚。 顔を会わせたこともない相手との結婚を言い渡された私は、反論することもせず政略結婚を受け入れた。 これから私の家となるディオダ侯爵で働く使用人たちとの関係も良好で、旦那様となる義両親ともいい関係を築けた私は今後上手くいくことを悟った。 だが婚姻後、初めての初夜で旦那様から言い渡されたのは「白い結婚」だった。 政略結婚だから最悪愛を求めることは考えてはいなかったけれど、旦那様がそのつもりなら私にも考えがあります。 どうか最後まで、その強気な態度を変えることがないことを、祈っておりますわ。 ※いつものゆるふわ設定です。拙い文章がちりばめられています。 最後はハッピーエンドで終えます。

転生したら使用人の扱いでした~冷たい家族に背を向け、魔法で未来を切り拓く~

沙羅杏樹
恋愛
前世の記憶がある16歳のエリーナ・レイヴンは、貴族の家に生まれながら、家族から冷遇され使用人同然の扱いを受けて育った。しかし、彼女の中には誰も知らない秘密が眠っていた。 ある日、森で迷い、穴に落ちてしまったエリーナは、王国騎士団所属のリュシアンに救われる。彼の助けを得て、エリーナは持って生まれた魔法の才能を開花させていく。 魔法学院への入学を果たしたエリーナだが、そこで待っていたのは、クラスメイトたちの冷たい視線だった。しかし、エリーナは決して諦めない。友人たちとの絆を深め、自らの力を信じ、着実に成長していく。 そんな中、エリーナの出生の秘密が明らかになる。その事実を知った時、エリーナの中に眠っていた真の力が目覚める。 果たしてエリーナは、リュシアンや仲間たちと共に、迫り来る脅威から王国を守り抜くことができるのか。そして、自らの出生の謎を解き明かし、本当の幸せを掴むことができるのか。 転生要素は薄いかもしれません。 最後まで執筆済み。完結は保障します。 前に書いた小説を加筆修正しながらアップしています。見落としがないようにしていますが、修正されてない箇所があるかもしれません。 長編+戦闘描写を書いたのが初めてだったため、修正がおいつきません⋯⋯拙すぎてやばいところが多々あります⋯⋯。 カクヨム様にも投稿しています。

処理中です...