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Mission1 前世を思い出せ!
28.アドルミデーラ家の女帝
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成人前までは各地を放浪し、好き勝手なことをしていたライースでも、お祖母様にはかなわず、お祖母様の前では大人しく言うことをきくし、逆らうことはしない。
ジェルバが正妻に頭があがらない――気性の激しい女性を苦手とする――のは、お祖母様の影響もあるのではないだろうか? と、あたしは密かに思った。
「わたくしたちはこの後、別室でもう少しデイラル先生とお話をいたします」
「はい」
「尋ねたいことがあるのなら、今のうちですよ。なにか質問はありませんか?」
お父様と同じ茶色の瞳が、じっとあたしを見ている。
「尋ねたいこと……?」
お祖母様の言葉に、あたしはしばし考え込む。
前世を思い出したばかりのあたしにしてみれば、知りたいことはいっぱいあるが、お祖母様が言っているのは、そういうことではないだろう。
(お祖母様に尋ねたいこと、デイラル先生に尋ねたいこと)
老医師とアドルミデーラ家の女帝を忙しく見比べる。
(あたしと一緒に池に落ちてしまった子猫は、助かったのかな?)
細い枝先でみゃあみゃあ泣いていた茶トラの子猫を唐突に思い出す。
あたしと一緒に池に落ちてしまってから一週間がたっている。
あたしは……水中で見た十六歳の若いライース・アドルミデーラに助けてもらったが、ライースの性格設定からすると、彼が猫まで助けるとは到底、思えなかった。
ライース・アドルミデーラは、好きなものと興味のないものに対する扱いの差が激しい人間だった。
気に入ったモノ以外にはとことん無関心で、冷淡なところがある。その他大勢の扱いなど、ひどいものだった。
ヒロインとの親密度があがると、偏愛が激しくなり、執着が強くなる。
その激しいセリフにユーザーたちはメロメロになって課金しまくるのだが、あくまでも、ゲーム、二次元の世界だからよいのだ。
リアルでこんな執着系な彼氏がいたら、ストーカー認定され、ぜったいにドンびくレベルだ。
「おまえがおれを好きでいてくれれば、それでいい。あとのことはどうでもいい」
という言葉が、呼吸するくらいに自然にでてくるキャラだ。そして、それをためらいなくやってしまう。
そんなライース・アドルミデーラの好きなもののなかに、猫はなかった。
子猫の安否はすごく気になるが、今は、周囲の反応が怖くて聞けない。
見た目は六歳児、中身は三十路となると、空気くらいはよめる。
今は、子猫の話題は厳禁だ。
周囲にあわせるのが得策だろう。
(でも……)
「フレーシア……訪ねたいことがあるのではなくて?」
あたしの迷いに、お祖母様の声がかぶさる。
「あの……ねこ……」
あたしが言葉を発するたびに、みんなの視線が集まるようで恥ずかしい。大注目されている。
「いっしょに……池に……おちたねこは……助かった……のでしょうか?」
質問する声が震えていた。
お父様だったら「今は猫の話をしている場合ではないだろう」と怒りだすだろうし、なによりも、助からなかった……とか言われたら、とても悲しい。
ジェルバが正妻に頭があがらない――気性の激しい女性を苦手とする――のは、お祖母様の影響もあるのではないだろうか? と、あたしは密かに思った。
「わたくしたちはこの後、別室でもう少しデイラル先生とお話をいたします」
「はい」
「尋ねたいことがあるのなら、今のうちですよ。なにか質問はありませんか?」
お父様と同じ茶色の瞳が、じっとあたしを見ている。
「尋ねたいこと……?」
お祖母様の言葉に、あたしはしばし考え込む。
前世を思い出したばかりのあたしにしてみれば、知りたいことはいっぱいあるが、お祖母様が言っているのは、そういうことではないだろう。
(お祖母様に尋ねたいこと、デイラル先生に尋ねたいこと)
老医師とアドルミデーラ家の女帝を忙しく見比べる。
(あたしと一緒に池に落ちてしまった子猫は、助かったのかな?)
細い枝先でみゃあみゃあ泣いていた茶トラの子猫を唐突に思い出す。
あたしと一緒に池に落ちてしまってから一週間がたっている。
あたしは……水中で見た十六歳の若いライース・アドルミデーラに助けてもらったが、ライースの性格設定からすると、彼が猫まで助けるとは到底、思えなかった。
ライース・アドルミデーラは、好きなものと興味のないものに対する扱いの差が激しい人間だった。
気に入ったモノ以外にはとことん無関心で、冷淡なところがある。その他大勢の扱いなど、ひどいものだった。
ヒロインとの親密度があがると、偏愛が激しくなり、執着が強くなる。
その激しいセリフにユーザーたちはメロメロになって課金しまくるのだが、あくまでも、ゲーム、二次元の世界だからよいのだ。
リアルでこんな執着系な彼氏がいたら、ストーカー認定され、ぜったいにドンびくレベルだ。
「おまえがおれを好きでいてくれれば、それでいい。あとのことはどうでもいい」
という言葉が、呼吸するくらいに自然にでてくるキャラだ。そして、それをためらいなくやってしまう。
そんなライース・アドルミデーラの好きなもののなかに、猫はなかった。
子猫の安否はすごく気になるが、今は、周囲の反応が怖くて聞けない。
見た目は六歳児、中身は三十路となると、空気くらいはよめる。
今は、子猫の話題は厳禁だ。
周囲にあわせるのが得策だろう。
(でも……)
「フレーシア……訪ねたいことがあるのではなくて?」
あたしの迷いに、お祖母様の声がかぶさる。
「あの……ねこ……」
あたしが言葉を発するたびに、みんなの視線が集まるようで恥ずかしい。大注目されている。
「いっしょに……池に……おちたねこは……助かった……のでしょうか?」
質問する声が震えていた。
お父様だったら「今は猫の話をしている場合ではないだろう」と怒りだすだろうし、なによりも、助からなかった……とか言われたら、とても悲しい。
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