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Mission1 前世を思い出せ!

7.並よりはちょい上

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 鏡の中の少女の年齢は……従兄弟の子どもに小学一年生の女の子がいたが、それとほぼ同じくらい……に思えた。
 ということは、六、七歳くらい?

 あたしは、小さな手をゆっくり動かし、頬をさわる。
 鏡のなかのあたしも、おなじように手を動かし、頬をさわっている。

 従兄弟の子どもよりも肉づき、肌艶が悪いようだが、二十歳代にはない若さのハリがあった。

 笑ってみる。
 鏡の中の少女も笑った。

 アッカンベーをしてみると、少女も同じようにアッカンベーをした。

(まちがいない……。これが、今のあたし!)

 残念なことに、びっくりするくらい、可愛い、とか、驚くほど美人……ではなかった。
 天使のように愛らしい顔でもなければ、見るものを凍らせるような悪女顔でもない。
 みなが驚くような、絶世の美女でもなかった。

 世知辛い現実に、ちょっぴりがっかりする。

(モブだ……。ぜったい、これは、モブ顔だ……)

 がっかりはしたが、涙を流して嘆くほどでもない。
 もう一度、モブらしい自分のモブ顔を観察してみる。
 まずは、自分の顔からこの先のヒントが見つかればいいんだけど……。

 資料のプリントアウトがどんどん遠のいていくが、もう、こうなっては仕方がない。

 鏡に映っている、六歳くらいの病的な少女。
 顔色は悪く、やつれてはいたが、目を覆いたくなるほど醜いというわけでもなく、平均的、並といった単語が浮かんだ。

 といっても、自分の感性での判断なので、この世界が絶世の美男美女ばかりなら、あたしの評価は、もう少し下方修正が必要だろう。

 ただ、わかることは『前世』のあたしとは、似ても似つかない。
 どちらが可愛かったか……と言われると、返答に困るけどね。

 ぼんやりとしか前世の自分の顔を思い出せないし、それだけ印象に残っていない……ということは、その程度だったんだろう。

 つまり、今も、昔も、平均的。だけど、ちょっとがんばれば、まあ、それなりに……という具合だ。

 前世のあたしはそんなにがんばらず、二次元の推しキャラに、思いっきり情熱を注いだけどね。
 この生き方に後悔はしていない。

 まあ……田舎の両親があたしの部屋をみたら呆れるですむだろうけど、会社の同僚に見られたら、言い訳が思いつかない。

 恥ずかしい本が大量にクローゼットの中にあるとか、パソコンのデータとブラウザの履歴とか、消したいものはたくさんあるが、ここから遠隔操作できるわけでもない。

 他にも心残りといえば、第三部であたしの推しキャラがどういうポジションになるのか、気にはなるけど……安定の人気キャラなので、冷遇はされないだろう。
 第三部がプレイできないのは……まぁ、仕方がない。

 打ち切りや、原作者死亡という作品にたくさん出会い、完結を知ることのできない悲しみ耐性もできあがっている。
 第三部はすぱっとあきらめよう。

 推しキャラには存分に貢いだ。
 それだけは胸を張れる。
 後悔はまったくない!

 この世界にまで推しを連れてくることはできないだろうから、今回は、女性として努力を怠らず、ちゃんと手入れをして、身なりを整えれば、今回のあたしも、並よりはちょい上……くらいはいきそうだ。
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