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Mission1 前世を思い出せ!
2.役立たず
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この従者、もともと我が家で雇っていた使用人夫婦の息子だった。
気の毒なことに、数年前の流行り病で両親がふたりとも死亡し、身よりもなく途方に暮れていたところを、領地の別荘で静養中のお祖母様が、周囲の反対を押し切って拾ったのだ。
なので、お祖母様だけには、とても忠実な従者だ。
そして、お祖母様のウケもいい。
なのに、孫であるあたしに対する接し方と、お祖母様に対する接し方が全然、ちがう!
それも面白くない。
真面目で働き者なんだけど、真面目すぎるので、あたしは嫌だ。
こいつといても、これっぽっちも、面白くないのだ。
色々と「あれはだめだ」「それは禁止されている」「これをしなければならない」「こんなことは許されない」「もっとおしとやかに」「こんなこともできないのか」とか、色々と干渉してくるし、口うるさい。
あたしの監視役だから、そうなのかもしれないけど……。
二つしか年齢が違わないのに、こいつは、わたしにはとても偉そうだ。
なのに、周囲の顔色を伺ってばかり。
いつもオドオドしているので、あたしは、こいつは嫌いだ。
勉強もできるし、従者としての仕事もしくじることはない。
まあ、まだ成人していないので、そんな難しい仕事はしていないだろうけど、失敗して爺や――この別荘の管理を任されている、お祖母様専属の執事――に怒られているところはあまりみかけない。
屋敷内の武術訓練でも優秀らしいんだけど、常になにかに怯えるようで、下ばっかり見ていて……一緒にいるとイラッとする。
今だってそうだ。
従者は、あたしと一緒に、枝から降りられなくなった子猫を助けようともせずに、ただあたしに「危険だ、危険だ」と言うだけで、なにもしない。
手伝うどころか、あたしを止めようともしないのだ。
ただ、木の根元でオロオロ、ウロウロするだけである。
木の下にいる役立たずは放置で、まずは、目の前の子猫に集中する。
みゃぉぅ……。
可哀想に、茶トラの子猫は怯えて、鳴きすぎて、衰弱している。
早く助けてあげたい。
(このままじゃダメだ!)
あたしは意を決すると、幹からそっと手を離した。
震える太ももに力をいれ、枝からずれおちないようにする。
「お嬢様! 手を離してはなりません! 木に……木の幹に捕まっていてください!」
従者の甲高い悲鳴が聞こえたが、今は集中しよう。
あたしは、ゆっくりと、慎重に幹から枝へと重心を移動させていく。
こういうとき、女の子のドレスって不便だ。木登りするためにデザインされていないのが、残念だ。
子猫がいる枝は、下から見ていた以上に細く、ゆらゆらとしなっていた。
つまり、今にも折れそうで、安定感がないというわけだ。
「…………だ、大丈夫」
あたしは、自分自身に言い聞かせる。
夏だから、いや、緊張のために、全身にびっしょりと汗をかいている。
大人なら折れてしまいそうだが、子どもの体重ならば、なんとか耐えてくれそうだ。
耐えてもらなわないと困る
(あたし、がんばるから! だから、猫ちゃんもがんばって!)
心の中で、あたしは必死に祈る。
気の毒なことに、数年前の流行り病で両親がふたりとも死亡し、身よりもなく途方に暮れていたところを、領地の別荘で静養中のお祖母様が、周囲の反対を押し切って拾ったのだ。
なので、お祖母様だけには、とても忠実な従者だ。
そして、お祖母様のウケもいい。
なのに、孫であるあたしに対する接し方と、お祖母様に対する接し方が全然、ちがう!
それも面白くない。
真面目で働き者なんだけど、真面目すぎるので、あたしは嫌だ。
こいつといても、これっぽっちも、面白くないのだ。
色々と「あれはだめだ」「それは禁止されている」「これをしなければならない」「こんなことは許されない」「もっとおしとやかに」「こんなこともできないのか」とか、色々と干渉してくるし、口うるさい。
あたしの監視役だから、そうなのかもしれないけど……。
二つしか年齢が違わないのに、こいつは、わたしにはとても偉そうだ。
なのに、周囲の顔色を伺ってばかり。
いつもオドオドしているので、あたしは、こいつは嫌いだ。
勉強もできるし、従者としての仕事もしくじることはない。
まあ、まだ成人していないので、そんな難しい仕事はしていないだろうけど、失敗して爺や――この別荘の管理を任されている、お祖母様専属の執事――に怒られているところはあまりみかけない。
屋敷内の武術訓練でも優秀らしいんだけど、常になにかに怯えるようで、下ばっかり見ていて……一緒にいるとイラッとする。
今だってそうだ。
従者は、あたしと一緒に、枝から降りられなくなった子猫を助けようともせずに、ただあたしに「危険だ、危険だ」と言うだけで、なにもしない。
手伝うどころか、あたしを止めようともしないのだ。
ただ、木の根元でオロオロ、ウロウロするだけである。
木の下にいる役立たずは放置で、まずは、目の前の子猫に集中する。
みゃぉぅ……。
可哀想に、茶トラの子猫は怯えて、鳴きすぎて、衰弱している。
早く助けてあげたい。
(このままじゃダメだ!)
あたしは意を決すると、幹からそっと手を離した。
震える太ももに力をいれ、枝からずれおちないようにする。
「お嬢様! 手を離してはなりません! 木に……木の幹に捕まっていてください!」
従者の甲高い悲鳴が聞こえたが、今は集中しよう。
あたしは、ゆっくりと、慎重に幹から枝へと重心を移動させていく。
こういうとき、女の子のドレスって不便だ。木登りするためにデザインされていないのが、残念だ。
子猫がいる枝は、下から見ていた以上に細く、ゆらゆらとしなっていた。
つまり、今にも折れそうで、安定感がないというわけだ。
「…………だ、大丈夫」
あたしは、自分自身に言い聞かせる。
夏だから、いや、緊張のために、全身にびっしょりと汗をかいている。
大人なら折れてしまいそうだが、子どもの体重ならば、なんとか耐えてくれそうだ。
耐えてもらなわないと困る
(あたし、がんばるから! だから、猫ちゃんもがんばって!)
心の中で、あたしは必死に祈る。
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