197 / 222
フィリア編(3)
12.そんな話、聞いていません
しおりを挟む
なぜ、ここまでギルド長がピリピリしているのかフィリアにはわからない。
「この先、スキルアップして威力が増したら、一週間どころじゃなくなるぞ」
「え、それって、ちょっと怖いですね」
「ちょっとどころではない!」
ルースの怒声がとぶ。
「いいか? めったやたらと魔力相性がいい者同士に必要なのは、自覚と自制だ! 流されるな!」
「…………?」
「返事は!」
「わ、わかりました」
ルースが怖い。
ものすごく怖かった。
「潜在能力が高くて、ものすごく魔力相性のいいヤツ同士が、魔力交換をするとだな……」
ルースはそこでいったん言葉を切る。
「魔力が増えるだけじゃなくて、それにひきずられて、色々なステータスも上昇するんだよ」
「え……? そんな話、聞いていません」
「当たり前だ。教える必要がないと思っていたから話さなかった。理解できないだろうしな。冒険者や平民の間で、そこまで相性のいい相手に巡り会えるなんて、ありえない話だからな」
「それは教えていただきました」
フィリアの返事に、ルースの顔がさらに渋いものに変化する。
「魔力相性のよい者同士との出会いは、上流貴族のさらに上流で、まれにしかおこらないことだ。それこそ神の采配レベルだ。頂点に立つ皇帝陛下であっても、そんな理想の相手に巡り合うことなどまずできない天文学的とまではいかないが、それに近い確率だ」
「えええっ!」
どうやら、かなりイレギュラーなことが起こってしまったようである。
「フィリア……お前の出自はわからないそうだが、どちらかが、いや、もしかしたら、どちらもかなり高貴な方である可能性が高くなったな! おめでとう!」
「…………」
ギルド長は「おめでとう」と言ったが、全然、めでたそうな顔をしていない。嫌味だろう。
「まあ、そういうわけで、冒険者カードの文字化けは、おまえのステータスが、通常の冒険者カードの許容量を超えただけだ」
「だけ……で片付けていいんですか?」
「かまわない。まあ、通常よりもいびつで、ヒトとしてはありえないくらいに一気に上昇しすぎたから、その反動が心配だが……」
「そ、それって、ヤバイという意味では?」
「カードの現象自体は破損ではない。ペナルティはつかない。カードの文字化けは、新しい上級者用の登録用紙に転写したら簡単に直る」
心配ないと言われても、にわかには信じがたい。
言葉の内容と、ルースの表情が全く合っていないからだ。
ルースはこの世の終わりが来たような陰鬱な表情になっている。
「登録用紙は、三種類あるんだ」
通常の羊皮紙製の登録用紙。
これは、初級冒険者から超級冒険者までが対象の用紙である。一般に多く流通しており、お手頃価格で用意できるので、普通はこれが使われている。
そして、伝説級冒険者以上を対象とした、見た目は同じ羊皮紙製なのだが、白銀を紙状に加工した登録用紙。
冒険者のステータスが、超級冒険者の上限値に近づいたら、頃合いをみてそちらに転写する。
超級冒険者の上限値に近づいた証が、冒険者カードの文字化けである。
この不可思議な記号の羅列には意味があり、持ち主本人を不安に陥れ、ギルドへ向かわなければならなくなる、という衝動を組み込んでいるらしい。
なので、フィリアは迷わず冒険者ギルドを訪問したのだ。
ルースはさらっと語ったが、なかなかに恐ろしいシステムではないだろうか。
最初から白銀製の登録用紙が使えたらよいのだが、コスト的なことと、大量生産ができないこと、超級冒険者かつ、ステータスが上限値にまで成長する冒険者の数が圧倒的に少ないという条件が重なり、この方法がとられているらしい。
すぐに死ぬかもしれない駆け出し冒険者に白銀製の登録用紙など、もったいなくて使ってられない、ということだ。
「この先、スキルアップして威力が増したら、一週間どころじゃなくなるぞ」
「え、それって、ちょっと怖いですね」
「ちょっとどころではない!」
ルースの怒声がとぶ。
「いいか? めったやたらと魔力相性がいい者同士に必要なのは、自覚と自制だ! 流されるな!」
「…………?」
「返事は!」
「わ、わかりました」
ルースが怖い。
ものすごく怖かった。
「潜在能力が高くて、ものすごく魔力相性のいいヤツ同士が、魔力交換をするとだな……」
ルースはそこでいったん言葉を切る。
「魔力が増えるだけじゃなくて、それにひきずられて、色々なステータスも上昇するんだよ」
「え……? そんな話、聞いていません」
「当たり前だ。教える必要がないと思っていたから話さなかった。理解できないだろうしな。冒険者や平民の間で、そこまで相性のいい相手に巡り会えるなんて、ありえない話だからな」
「それは教えていただきました」
フィリアの返事に、ルースの顔がさらに渋いものに変化する。
「魔力相性のよい者同士との出会いは、上流貴族のさらに上流で、まれにしかおこらないことだ。それこそ神の采配レベルだ。頂点に立つ皇帝陛下であっても、そんな理想の相手に巡り合うことなどまずできない天文学的とまではいかないが、それに近い確率だ」
「えええっ!」
どうやら、かなりイレギュラーなことが起こってしまったようである。
「フィリア……お前の出自はわからないそうだが、どちらかが、いや、もしかしたら、どちらもかなり高貴な方である可能性が高くなったな! おめでとう!」
「…………」
ギルド長は「おめでとう」と言ったが、全然、めでたそうな顔をしていない。嫌味だろう。
「まあ、そういうわけで、冒険者カードの文字化けは、おまえのステータスが、通常の冒険者カードの許容量を超えただけだ」
「だけ……で片付けていいんですか?」
「かまわない。まあ、通常よりもいびつで、ヒトとしてはありえないくらいに一気に上昇しすぎたから、その反動が心配だが……」
「そ、それって、ヤバイという意味では?」
「カードの現象自体は破損ではない。ペナルティはつかない。カードの文字化けは、新しい上級者用の登録用紙に転写したら簡単に直る」
心配ないと言われても、にわかには信じがたい。
言葉の内容と、ルースの表情が全く合っていないからだ。
ルースはこの世の終わりが来たような陰鬱な表情になっている。
「登録用紙は、三種類あるんだ」
通常の羊皮紙製の登録用紙。
これは、初級冒険者から超級冒険者までが対象の用紙である。一般に多く流通しており、お手頃価格で用意できるので、普通はこれが使われている。
そして、伝説級冒険者以上を対象とした、見た目は同じ羊皮紙製なのだが、白銀を紙状に加工した登録用紙。
冒険者のステータスが、超級冒険者の上限値に近づいたら、頃合いをみてそちらに転写する。
超級冒険者の上限値に近づいた証が、冒険者カードの文字化けである。
この不可思議な記号の羅列には意味があり、持ち主本人を不安に陥れ、ギルドへ向かわなければならなくなる、という衝動を組み込んでいるらしい。
なので、フィリアは迷わず冒険者ギルドを訪問したのだ。
ルースはさらっと語ったが、なかなかに恐ろしいシステムではないだろうか。
最初から白銀製の登録用紙が使えたらよいのだが、コスト的なことと、大量生産ができないこと、超級冒険者かつ、ステータスが上限値にまで成長する冒険者の数が圧倒的に少ないという条件が重なり、この方法がとられているらしい。
すぐに死ぬかもしれない駆け出し冒険者に白銀製の登録用紙など、もったいなくて使ってられない、ということだ。
0
数々の作品あるなか、ご訪問ありがとうございます。
これもなにかの『縁』でございます!
お気に入り、ブクマありがとうございます。
まだの方はぜひ、ポチッとしていただき、更新時もよろしくお願いします。
ポチっで、モチベーションがめっちゃあがります。
↓別のお話もアップしています。そちらも応援よろしくお願いします。↓
転生お転婆令嬢は破滅フラグを破壊してバグの嵐を巻き起こす
勇者召喚された魔王様は王太子に攻略されそうです
これもなにかの『縁』でございます!
お気に入り、ブクマありがとうございます。
まだの方はぜひ、ポチッとしていただき、更新時もよろしくお願いします。
ポチっで、モチベーションがめっちゃあがります。
↓別のお話もアップしています。そちらも応援よろしくお願いします。↓
転生お転婆令嬢は破滅フラグを破壊してバグの嵐を巻き起こす
勇者召喚された魔王様は王太子に攻略されそうです
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
皇帝の番~2度目の人生謳歌します!~
saku
恋愛
竜人族が治める国で、生まれたルミエールは前世の記憶を持っていた。
前世では、一国の姫として生まれた。両親に愛されずに育った。
国が戦で負けた後、敵だった竜人に自分の番だと言われ。遠く離れたこの国へと連れてこられ、婚約したのだ……。
自分に優しく接してくれる婚約者を、直ぐに大好きになった。その婚約者は、竜人族が治めている帝国の皇帝だった。
幸せな日々が続くと思っていたある日、婚約者である皇帝と一人の令嬢との密会を噂で知ってしまい、裏切られた悲しさでどんどんと痩せ細り死んでしまった……。
自分が死んでしまった後、婚約者である皇帝は何十年もの間深い眠りについていると知った。
前世の記憶を持っているルミエールが、皇帝が眠っている王都に足を踏み入れた時、止まっていた歯車が動き出す……。
※小説家になろう様でも公開しています

王宮侍女は穴に落ちる
斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された
アニエスは王宮で運良く職を得る。
呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き
の侍女として。
忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。
ところが、ある日ちょっとした諍いから
突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。
ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな
俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され
るお話です。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

タジタジ騎士公爵様は妖精を溺愛する
雨香
恋愛
美醜の感覚のズレた異世界に落ちたリリがスパダリイケメン達に溺愛されていく。毎日19:00に更新します。
ヒーロー大好きな主人公と、どう受け止めていいかわからないヒーローのもだもだ話です。
逆ハーレム風の過保護な溺愛を楽しんで頂ければ。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

異世界で生きていく。
モネ
ファンタジー
目が覚めたら異世界。
素敵な女神様と出会い、魔力があったから選ばれた主人公。
魔法と調合スキルを使って成長していく。
小さな可愛い生き物と旅をしながら新しい世界で生きていく。
旅の中で出会う人々、訪れる土地で色々な経験をしていく。
3/8申し訳ありません。
章の編集をしました。

サイデュームの宝石 転生したら悪役令嬢でした
みゅー
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまった人達のお話です。
せつない話を書きたくて書きました。
以前かいた短編をまとめた短編集です。
更に続きの番外編をこちらで連載中です。
ルビーの憂鬱で出てくるパイロープ王国の国王は『断罪される前に婚約破棄しようとしたら、手籠にされました』の王太子殿下です。

悪妃の愛娘
りーさん
恋愛
私の名前はリリー。五歳のかわいい盛りの王女である。私は、前世の記憶を持っていて、父子家庭で育ったからか、母親には特別な思いがあった。
その心残りからか、転生を果たした私は、母親の王妃にそれはもう可愛がられている。
そんなある日、そんな母が父である国王に怒鳴られていて、泣いているのを見たときに、私は誓った。私がお母さまを幸せにして見せると!
いろいろ調べてみると、母親が悪妃と呼ばれていたり、腹違いの弟妹がひどい扱いを受けていたりと、お城は問題だらけ!
こうなったら、私が全部解決してみせるといろいろやっていたら、なんでか父親に構われだした。
あんたなんてどうでもいいからほっといてくれ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる