生贄奴隷の成り上がり〜堕ちた神に捧げられる運命は職業上書きで回避します〜

のりのりの

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ちびっ子は冒険者編(3)

冒険者って、自由なんだろ!

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 『赤い鳥』にちびっ子たちを加える……。
 人数的に大所帯にはなるが、その選択もないことはない。

 女性陣は子どもたちを――特にリオーネを――いたく気に入っている。

 ギルは……若干一名に対して苦手意識があるようだが、険悪な仲というわけではなさそうだ。
 ギルも子ども好きなので、そのうち慣れるだろう。ギルの適応能力は高い。

 フロルは適度な距離感で人と付き合うのが上手いので、心配はいらない。
 子どもたちを玩具にしながらも、責任をもってしっかりフォローするだろう。

 子どもたちの実力なら、 『赤い鳥』に加わっても十分に通用する。
 というか、フィリアたちの方が、子どもたちの能力に振り回されそうではある。

 だが……。
 まだ未熟なちびっ子たちを『赤い鳥』に近づけすぎるのにも不安がある。

 今日のことで身にしみて理解したのだが、子どもはなにをしでかすか、全く予測できない。

 ちびっ子たちがトンデモナイことをしでかして、両方が潰れてしまっては、元も子もない。

 そもそも、そこまでの権限はルースにはなかった。
 自分たちのボス――ギンフウ――の指示を仰がねばならない内容だった。

 面倒なちびっ子育成をフィリアに全投げしたいのに、それができないもどかしさに、ルースは苛立ちを覚える。

「……いや、それはやめておこう。不自然すぎて目立ちすぎる。それに『赤い鳥』のパーティーランクは下げたくない」
「わかりました」

 答えるまでに少し間があったことに対して、フィリアは内心で驚いていた。
 なにに対してルースは迷ったのだろうか? これはそんなに魅力的な提案だったのだろうか?

 パーティーランクは、パーティーメンバーのバランスを見て判定する。
 というのが、ギルド側の説明で、判定基準の詳細は伏せられている。

 いっぽう、冒険者たちの間では、パーティーランクは、パーティーメンバーの中の、最も低いランクの冒険者を基準にして判定しているのだろう、という説が浸透している。

 根も葉もない憶測というわけではない。
 メンバーに低ランクの冒険者が加わればパーティーランクが下がり、低ランクの冒険者を追放して、高ランク冒険者と入れ替えれば、パーティーランクが上がるのだから、そう思われても仕方がないことである。

 ここで、見た目だけは十歳そこそこの、冒険者としてデビューしたての子どもたちが三人も『赤い鳥』に加われば、パーティーランクはどうなるか。

 普通であるならば、パーティーランクはかなり下がる。下がらなければおかしい。

 パーティーランクが下がると、難易度の高い依頼が『赤い鳥』にだせなくなる。

 だが、ここでパーティーランクがそのままであったら、他の冒険者たちは、どう思うだろうか。

 ただの冒険者ならば、ギルド側の不正、贔屓を疑うだろうが、他の組織は、子どもたちの能力を確信する一つのピースとなるだろう。

 子どもたちの能力を隠そうと画策しているのに、こちら側からヒントを提供しているようでは、本末転倒もはなはだしい。

「トレス、ちびっ子たちの依頼受注条件に、『赤い鳥』のメンバー同伴および監視必須、を設定する手配をしておいてくれ」
「わかりました。それで、期限はどういたしましょうか?」
「当分の間でいい」
「……当分の間……ですか?」
「当分の間だ」

 介入の度合いがすぎるのではないか、と、とまどいをみせるトレス。他の職員にどう説明するつもりなのか、とルースに無言で問いかける。

 しかし、それくらいで迷いをみせるルースではない。ここは、ギルド長権限で強引に押し切るつもりでいるようだ。

 ギルド長の鈍色の目には強い意思が宿っており、ゆらぐことはなかった。
 承知しました、とトレスはあきらめたように頷き、書類作成をはじめる。

「ちょっと待て! 大人たちで勝手に決めんなよ。おれたちのジユウイシってないのか!」

 リオーネがソファから立ち上がり、猛然と抗議するが、トレスの反応は冷ややかなものであった。

「自由意志? そのようなものはない」
「なんでだ! 冒険者って、自由なんだろ!」
「勘違いするな!」

 ルースの怒声が室内を揺らした。
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