61 / 222
ちびっ子は冒険者編(1)
説明、長すぎるわよ!
しおりを挟む
退屈そうにしている一同には気づかず、ペルナの説明は途切れることなくつづく。
よくもまあ、これだけよどみなくしゃべりつづけることができるものだ、とフィリアは感心すると同時に呆れ返りもする。
話題は超級冒険者から、最高位にあたる『神話級冒険者』の説明へと移っていた。
神話級冒険者とは、世界の危機を救う勇者様やそれに類する偉業をなしえた英雄などに与えられる称号になる。
このレベルになると、持って生まれた『運命』やら『天与スキル』といった、人の努力ではどうしようもない、『神様』とかかわる特殊なものが重要になってくる。
つまり、現実的に考えると、実力で到達できる実質の最高ランクは『伝説級冒険者』ともいえた。
「おれたちなら伝説級冒険者になれるんじゃね?」
とリオーネが隣のナニに小声で囁き、ナニに「私語禁止」と怒られている。
ペルナの説明を適度に聞き流しながら、フィリアはそっとため息をつく。
ペルナたち受付嬢は、ことあるごとにフィリアに『伝説級冒険者』を目指すように言ってくるが、これがなかなかに難しいのだ。
ルースギルド長から内々に説明があったが、目安となるステータスを聞いたとき、『伝説級冒険者』になるということは、人間を辞めるということと同義だと思うくらい、メチャクチャな数値を教えられ、心底驚いたのを覚えている。
魔法剣士ならば、ひとりで上級ドラゴンの群れを瞬殺できるくらいの数値を、ルースギルド長は事務的な口調で教えてくれた。
それを聞いた時、フィリアは自分には無理だ、と瞬時に悟った。
もちろん、口にだしたら、ルースギルド長から「最初からあきらめるとはけしからん!」と怒られるに決まっているから、反論せずに黙って聞いた。
そもそも、そこまで強くならなければならない理由が、フィリア自身には見当たらない。
お金があれば、孤児院が潤うので報酬は遠慮なく頂いている。
しかし、地位とか名誉とか、そういった欲はない。むしろ煩わしいもので、今くらいが、ちょうどいいとフィリアは考えていた。
上位にいけばいくほど、贅沢な暮らしができるかもしれないが、それ以上に、縛りが多くなる。
得るものと失うものを比べると、失うものの方が、フィリアには大事に思えた。
自分は『伝説級冒険者』になるのをあきらめたが、もしかしたら、この子どもたちなら目指せるかもしれない。と、フィリアはぼんやりする頭で考える。
「……それから、冒険者ランクは、上がるだけではありません。老化や怪我などで能力の低下が見られた場合や、冒険者としてふさわしくない行いをした、とギルドが判断した場合は、降格や除籍もありますから、日々の鍛錬を怠らず、行動には気を付けてくださいね」
なにか、ここまでで質問はありませんか? というペルナの問いに、子どもたちは首を横に振った。
それが賢明な判断だろう。
下手に質問などしたら、さらに長い説明が待っている。
基本的な説明は終わったし、わからないことがあれば、そのつど受付嬢なり、立会人に質問すればよい。
ようやく、受付嬢の長い説明が終わった。
子どもたちの口から、大きな溜息がでる。
受付嬢の話を黙って聞きつづけるのは疲れただろう。
「よくがんばって聞けたね」
と、フィリアは思わず褒めてしまったのだが、リオーネに「子ども扱いするな!」と厳しい目で睨まれてしまった。
「ちょっと、ペルナちゃん! 説明、長すぎるわよ!」
「もうちょっと、短くする努力をしないと!」
ミラーノとエリーがぶうぶう文句を言っているが、ペルナは聞く耳をもたない。
「できない相談です」
と言って、ふたりの抗議をピシャリとはねのける。
よくもまあ、これだけよどみなくしゃべりつづけることができるものだ、とフィリアは感心すると同時に呆れ返りもする。
話題は超級冒険者から、最高位にあたる『神話級冒険者』の説明へと移っていた。
神話級冒険者とは、世界の危機を救う勇者様やそれに類する偉業をなしえた英雄などに与えられる称号になる。
このレベルになると、持って生まれた『運命』やら『天与スキル』といった、人の努力ではどうしようもない、『神様』とかかわる特殊なものが重要になってくる。
つまり、現実的に考えると、実力で到達できる実質の最高ランクは『伝説級冒険者』ともいえた。
「おれたちなら伝説級冒険者になれるんじゃね?」
とリオーネが隣のナニに小声で囁き、ナニに「私語禁止」と怒られている。
ペルナの説明を適度に聞き流しながら、フィリアはそっとため息をつく。
ペルナたち受付嬢は、ことあるごとにフィリアに『伝説級冒険者』を目指すように言ってくるが、これがなかなかに難しいのだ。
ルースギルド長から内々に説明があったが、目安となるステータスを聞いたとき、『伝説級冒険者』になるということは、人間を辞めるということと同義だと思うくらい、メチャクチャな数値を教えられ、心底驚いたのを覚えている。
魔法剣士ならば、ひとりで上級ドラゴンの群れを瞬殺できるくらいの数値を、ルースギルド長は事務的な口調で教えてくれた。
それを聞いた時、フィリアは自分には無理だ、と瞬時に悟った。
もちろん、口にだしたら、ルースギルド長から「最初からあきらめるとはけしからん!」と怒られるに決まっているから、反論せずに黙って聞いた。
そもそも、そこまで強くならなければならない理由が、フィリア自身には見当たらない。
お金があれば、孤児院が潤うので報酬は遠慮なく頂いている。
しかし、地位とか名誉とか、そういった欲はない。むしろ煩わしいもので、今くらいが、ちょうどいいとフィリアは考えていた。
上位にいけばいくほど、贅沢な暮らしができるかもしれないが、それ以上に、縛りが多くなる。
得るものと失うものを比べると、失うものの方が、フィリアには大事に思えた。
自分は『伝説級冒険者』になるのをあきらめたが、もしかしたら、この子どもたちなら目指せるかもしれない。と、フィリアはぼんやりする頭で考える。
「……それから、冒険者ランクは、上がるだけではありません。老化や怪我などで能力の低下が見られた場合や、冒険者としてふさわしくない行いをした、とギルドが判断した場合は、降格や除籍もありますから、日々の鍛錬を怠らず、行動には気を付けてくださいね」
なにか、ここまでで質問はありませんか? というペルナの問いに、子どもたちは首を横に振った。
それが賢明な判断だろう。
下手に質問などしたら、さらに長い説明が待っている。
基本的な説明は終わったし、わからないことがあれば、そのつど受付嬢なり、立会人に質問すればよい。
ようやく、受付嬢の長い説明が終わった。
子どもたちの口から、大きな溜息がでる。
受付嬢の話を黙って聞きつづけるのは疲れただろう。
「よくがんばって聞けたね」
と、フィリアは思わず褒めてしまったのだが、リオーネに「子ども扱いするな!」と厳しい目で睨まれてしまった。
「ちょっと、ペルナちゃん! 説明、長すぎるわよ!」
「もうちょっと、短くする努力をしないと!」
ミラーノとエリーがぶうぶう文句を言っているが、ペルナは聞く耳をもたない。
「できない相談です」
と言って、ふたりの抗議をピシャリとはねのける。
1
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。
【完結】転移魔王の、人間国崩壊プラン! 魔王召喚されて現れた大正生まれ104歳のババアの、堕落した冒険者を作るダンジョンに抜かりがない!
うどん五段
ファンタジー
勇者に魔王様を殺され劣勢の魔族軍!ついに魔王召喚をするが現れたのは100歳を超えるババア!?
若返りスキルを使いサイドカー乗り回し、キャンピングカーを乗り回し!
経験値欲しさに冒険者を襲う!!
「殺られる前に殺りな!」「勇者の金を奪うんだよ!」と作り出される町は正に理想郷!?
戦争を生き抜いてきた魔王ババア……今正に絶頂期を迎える!
他サイトにも掲載中です。
迷い人と当たり人〜伝説の国の魔道具で気ままに快適冒険者ライフを目指します〜
青空ばらみ
ファンタジー
一歳で両親を亡くし母方の伯父マークがいる辺境伯領に連れて来られたパール。 伯父と一緒に暮らすお許しを辺境伯様に乞うため訪れていた辺境伯邸で、たまたま出くわした侯爵令嬢の無知な善意により 六歳で見習い冒険者になることが決定してしまった! 運良く? 『前世の記憶』を思い出し『スマッホ』のチェリーちゃんにも協力してもらいながら 立派な冒険者になるために 前世使えなかった魔法も喜んで覚え、なんだか百年に一人現れるかどうかの伝説の国に迷いこんだ『迷い人』にもなってしまって、その恩恵を受けようとする『当たり人』と呼ばれる人たちに貢がれたり…… ぜんぜん理想の田舎でまったりスローライフは送れないけど、しょうがないから伝説の国の魔道具を駆使して 気ままに快適冒険者を目指しながら 周りのみんなを無自覚でハッピーライフに巻き込んで? 楽しく生きていこうかな! ゆる〜いスローペースのご都合ファンタジーです。
小説家になろう様でも投稿をしております。
小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします
藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です
2024年6月中旬に第一巻が発売されます
2024年6月16日出荷、19日販売となります
発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」
中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。
数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。
また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています
この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています
戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています
そんな世界の田舎で、男の子は産まれました
男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました
男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます
そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります
絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて……
この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです
各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます
そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます
カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております
【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい
うどん五段
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。
ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。
ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。
時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。
だから――。
「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」
異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ!
============
小説家になろうにも上げています。
一気に更新させて頂きました。
中国でコピーされていたので自衛です。
「天安門事件」
めんどくさがり屋の異世界転生〜自由に生きる〜
ゆずゆ
ファンタジー
※ 話の前半を間違えて消してしまいました
誠に申し訳ございません。
—————————————————
前世100歳にして幸せに生涯を遂げた女性がいた。
名前は山梨 花。
他人に話したことはなかったが、もし亡くなったら剣と魔法の世界に転生したいなと夢見ていた。もちろん前世の記憶持ちのままで。
動くがめんどくさい時は、魔法で移動したいなとか、
転移魔法とか使えたらもっと寝れるのに、
休みの前の日に時間止めたいなと考えていた。
それは物心ついた時から生涯を終えるまで。
このお話はめんどくさがり屋で夢見がちな女性が夢の異世界転生をして生きていくお話。
—————————————————
最後まで読んでくださりありがとうございました!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる