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ちびっ子は冒険者編(1)
まるで、小さな女王様だな……
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エルトの視線がフィリアから外れる。
「……悪い感じはしないよ。それよりも、受付のおねえさんの方が、ちょっと邪悪で怖い……」
「にゃっ!」
カウンターの向こう側でペルナが飛び上がったのが見えた。
「よし。わかった。エルトがそう言うのなら、タチアイたのもうぜ!」
「……立ち会いお願いします」
リオーネ少年の決定宣言に、ナニがフィリアに向かって丁寧に頭を下げる。エルトは無言で頭を下げた。
(へぇ。これは……なかなか、興味深い子どもたちだな)
フィリアは楽しげに、冒険者志願の子どもたちを見比べる。
孤児院で育ったフィリアは、孤児院を卒院するまで、年下の子どもたちの面倒をみており、子どもが嫌いではなかった。
今でも暇ができれば、世話になった孤児院に出向いて、手伝いやら、子どもたちの遊び相手になっている。
フィリアにとって、子どもの世話をするのは、とても自然なことで、抵抗は全くなかった。
むしろ、こうして子どもたちの相手をしている方が落ち着き、心がなごむくらいだ。
ここ帝都において、こんな年齢から冒険者になろうと思う子どもたちだ。
孤児院の子どもたちとは少し様子が違う。
それがどういう理由からなのかすごく気になり、フィリアの心をざわつかせる。
この子たちを前にすると、未知のダンジョンに挑むときのような、ものすごく楽しい気分になる。
子どもたちの中で、一番年長らしいリオーネ少年が、積極的な性格もあって、リーダー的存在に見える。
大人との交渉は彼が引き受けているようだった。
知識量でみれば、ナニが圧倒的にリオーネを上回っている。暴走しがちなリオーネを理知的なナニが抑え、彼に行動の選択肢を提示することで、子どもたちの行動の幅が広がる。
だが、重要なことに関する決定権は、エルトにあるようだった。
この子たちは、一番小さなエルトを中心に動いている……。
年少者を優先するという、単純な理由だけではないような気がした。
それだけ、他のふたりがエルトを大事にしており、エルト自身、そうされることが当然だと思っているようだった。
(まるで、小さな女王様だな……)
面白い。にこり、というよりは、にやり、という笑みが浮かんだが、慌てていつもの表情に戻ると、フィリアは後ろを振り返り、他の仲間たちに合図を送った。
その合図を待っていたかのように、残りの『赤い鳥』メンバーが席を立ち、カウンターに近寄ってくる。
斥候担当のフロル、魔術師のミラーノ、回復術師のエリーが、それぞれ順番に自己紹介をした。
急にカウンターがにぎやかになった。
とくにミラーノとエリーの女性陣は、子どもたちを前に、最初からテンションが異様に高かった。
「かわいい」とか「ちっちゃ」とか、思ったことを遠慮なく口にし、きゃっきゃウフフと騒いでいる。
冒険者になりたいと思っている子どもたちは、子ども扱いされるのが不服なようだ。
リオーネは不貞腐れたように眉をしかめ、頬をふくらます。
だが、それがまた子どもらしくてかわいいと、女性陣を喜ばせていた。
『赤い鳥』は、戦闘以外では女性陣の力の方が圧倒的に強く、男性陣はいつも隅に追いやられる格好となる。
今回も、フロルとギルは彼女達の興奮の度合いに少し……というか、かなり引き気味というか、逃げ腰で、じりじりと後ずさりをはじめた。
そして、少しばかり位置調整をした後、受付カウンターから離れすぎず近すぎずの場所を見定め、ようやく落ち着いたようである。
「ああ。キミはこうした方がいいかな?」
踏み台の上で一生懸命背伸びをしているエルトを、フィリアはひょいと抱き上げる。
(うわっ。ちょっと……なにこれ? ちっさ。軽い……)
驚きは心の中でとどめておく。
思ったことを素直に言って許されるのは、女性陣だけだ。
フィリアが女性陣と同じことを言えば、ナニの杖攻撃が自分にも飛んでくるだろう。
「……悪い感じはしないよ。それよりも、受付のおねえさんの方が、ちょっと邪悪で怖い……」
「にゃっ!」
カウンターの向こう側でペルナが飛び上がったのが見えた。
「よし。わかった。エルトがそう言うのなら、タチアイたのもうぜ!」
「……立ち会いお願いします」
リオーネ少年の決定宣言に、ナニがフィリアに向かって丁寧に頭を下げる。エルトは無言で頭を下げた。
(へぇ。これは……なかなか、興味深い子どもたちだな)
フィリアは楽しげに、冒険者志願の子どもたちを見比べる。
孤児院で育ったフィリアは、孤児院を卒院するまで、年下の子どもたちの面倒をみており、子どもが嫌いではなかった。
今でも暇ができれば、世話になった孤児院に出向いて、手伝いやら、子どもたちの遊び相手になっている。
フィリアにとって、子どもの世話をするのは、とても自然なことで、抵抗は全くなかった。
むしろ、こうして子どもたちの相手をしている方が落ち着き、心がなごむくらいだ。
ここ帝都において、こんな年齢から冒険者になろうと思う子どもたちだ。
孤児院の子どもたちとは少し様子が違う。
それがどういう理由からなのかすごく気になり、フィリアの心をざわつかせる。
この子たちを前にすると、未知のダンジョンに挑むときのような、ものすごく楽しい気分になる。
子どもたちの中で、一番年長らしいリオーネ少年が、積極的な性格もあって、リーダー的存在に見える。
大人との交渉は彼が引き受けているようだった。
知識量でみれば、ナニが圧倒的にリオーネを上回っている。暴走しがちなリオーネを理知的なナニが抑え、彼に行動の選択肢を提示することで、子どもたちの行動の幅が広がる。
だが、重要なことに関する決定権は、エルトにあるようだった。
この子たちは、一番小さなエルトを中心に動いている……。
年少者を優先するという、単純な理由だけではないような気がした。
それだけ、他のふたりがエルトを大事にしており、エルト自身、そうされることが当然だと思っているようだった。
(まるで、小さな女王様だな……)
面白い。にこり、というよりは、にやり、という笑みが浮かんだが、慌てていつもの表情に戻ると、フィリアは後ろを振り返り、他の仲間たちに合図を送った。
その合図を待っていたかのように、残りの『赤い鳥』メンバーが席を立ち、カウンターに近寄ってくる。
斥候担当のフロル、魔術師のミラーノ、回復術師のエリーが、それぞれ順番に自己紹介をした。
急にカウンターがにぎやかになった。
とくにミラーノとエリーの女性陣は、子どもたちを前に、最初からテンションが異様に高かった。
「かわいい」とか「ちっちゃ」とか、思ったことを遠慮なく口にし、きゃっきゃウフフと騒いでいる。
冒険者になりたいと思っている子どもたちは、子ども扱いされるのが不服なようだ。
リオーネは不貞腐れたように眉をしかめ、頬をふくらます。
だが、それがまた子どもらしくてかわいいと、女性陣を喜ばせていた。
『赤い鳥』は、戦闘以外では女性陣の力の方が圧倒的に強く、男性陣はいつも隅に追いやられる格好となる。
今回も、フロルとギルは彼女達の興奮の度合いに少し……というか、かなり引き気味というか、逃げ腰で、じりじりと後ずさりをはじめた。
そして、少しばかり位置調整をした後、受付カウンターから離れすぎず近すぎずの場所を見定め、ようやく落ち着いたようである。
「ああ。キミはこうした方がいいかな?」
踏み台の上で一生懸命背伸びをしているエルトを、フィリアはひょいと抱き上げる。
(うわっ。ちょっと……なにこれ? ちっさ。軽い……)
驚きは心の中でとどめておく。
思ったことを素直に言って許されるのは、女性陣だけだ。
フィリアが女性陣と同じことを言えば、ナニの杖攻撃が自分にも飛んでくるだろう。
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