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ちびっ子は冒険者編(1)

依頼人かにゃ?

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「あのう……すみません」
「にゃ? にゃ?」

 フィリアの爽やかすぎる笑顔にあてられ、ペルナは幸せ気分にどっぷりと浸り、ぼ――っとしていたようである。

「依頼人かにゃ?」

 どこからか、場違いな可愛らしい子どもの声が聞こえた。

 ペルナは慌ててお魚定食の幻影を脳内から消し去ると、キョロキョロと周囲に視線をめぐらす。
 が、声の主らしき人物はカケラも見当たらない。

 さっきまでホールに子どもはいなかった。それはちゃんと確認した。

 癒やしを渇望するあまり、ついに空耳が聞こえるようにまでなったのだろうか。
 ペルナの猫耳がせわしなくパタパタと動く。

「すみません!」

 まだ声変わりを迎えていない少年の高い声が、今度ははっきりと下から聞こえた。

「……もしかして?」

 ペルナは勢いをつけると、カウンターから身を乗り出した。床下に視線を落とす。

「みゃあああっっっ!」

 興奮のあまり猫耳がピンと立ち上がり、目がランランと輝きはじめる。嬉しさで体がふるふると震えた。

(みゃあっ! い……い……癒やしが……真の尊い癒やしが向こうから勝手にやってキタ――ッ!)

 心のなかでガッツポーズをとりながら、ペルナは眼下の小さな来訪者たちを凝視する。感激のあまり心拍数が跳ね上がり、ちょっとばかり呼吸が荒くなった。

 赤髪の少年。
 丈の短いフードを目深に被った女の子。
 そして、前髪を長く伸ばした黒髪の女の子。

 三人の子どもが、ちんまりと背の順に並んでハイカウンターの真下にいた。

 筋肉隆々な大男たちを相手にしてきたペルナにしてみれば、もう、そのサイズ感だけで天にも昇れるような気分になれた。

 もう少しカウンターから距離をとって声をかけていれば、子どもたちはペルナの視界に入っていただろうが、ハイカウンターの真下からでは死角になってしまう。

 冒険者にはガタイの良いものが多く、また、大柄な獣人、竜人といった異種族にもあわせて、冒険者ギルドのカウンターは高めにつくられている。

 カウンターだけではなく、ドアノブの高さや家具など、大柄な異種族も利用できることを想定してしつらえられている。

 受付側の方は、カウンター周りの床を高くしてその高さに対応しているが、子どもが使うことは全く想定していない。

 子どもたちは十歳くらいだろうか。黒髪の女の子は、他のふたりよりもあきらかに小さくて幼く、六、七歳にみえた。

 赤髪の少年は革鎧を身にまとい、子どもサイズの長剣を背中に背負っている。
 目元がしっかりしており、意志の強さが垣間見られる。
 少し緊張しているのか、表情は硬いが、茶目っ気たっぷりで、悪戯が好きそうな、元気あふれる少年だった。

 なんともかわいい存在だ。

 丈の短いフードつきの外套を着た女の子は、子どもサイズの魔法の杖を手にしていた。
 ペルナの視線を感じたのか、フードを引っ張って、さらに顔を隠す。

 外套とスカートの丈が短いのは、子どもにあわせて動きやすさを重視したため。そこから覗く二本の細い脚が、なんともよい具合だ。
 もじもじと身体を揺らせながら、恥ずかしがる姿がとってもかわいい。

 最後の、一番小さな黒髪の女の子は、動きやすさを重視した、ぴったりと体にフィットする黒革のスーツを着ていた。
 華奢な体のラインがさらに強調され、首に巻いている大きめのマフラーが似合っている。腰には短剣を帯びていた。

 服で隠れて見えないところにも、色々と武器を仕込んでいそうである。なんとなく、そんな気がした。

 前髪を長く伸ばしており、顔の半分くらいを隠しているので、瞳の色とかはわからないが、存在そのものが小さくてかわいい。

(こ、こ、これは……貴重な)
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