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ちびっ子は冒険者編(1)
あんにゃにガリガリだった子が
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伝説級冒険者に最も近い男フィリアは、『赤い鳥』という五人組パーティーのリーダーを名乗り、帝都を拠点に地道に地味に活動していた。
眩しい容貌にもかかわらず、他の冒険者たちが敬遠する面倒でわりにあわないような依頼も、積極的に請けてくれるという、受付嬢たちにとっては、神様みたいな存在だ。
元来、魔法剣士になる者のステータスは優れており、彼だけがいちはやく超級冒険者になっていたのだが、他のメンバーも、ようやく超級へのランクアップ条件を満たしたようである。
すでに超級冒険者であるフィリアが査定を待つ必要はないのだが、わざわざ仲間に付き合っていることからして、他の有象無象の冒険者とは存在自体が違って見えた。
(がんばっているにゃあ)
目頭が熱くなる。
フィリアが冒険者となったのは、七年前。彼が十二歳になった頃だった。
ペルナが彼の冒険者登録に立ち会ったので、なんとなく、親近感を持っているというか、成長を見守るオカンのような、生暖かい気持ちになっていた。
今日もフィリアの立派に成長した姿をみてこっそり涙を浮かべてしまう。
(あんにゃにガリガリだった子が、こんにゃにステキな冒険者になるんだからにゃ)
だらけた冒険者が多い中、彼は姿勢正しく、所作もとても美しかった。
ひいき目フィルターがかかっているとはいえ、フィリアは酒場の中でひとり光を放っているように見える。
雑多な石ころの中に、一粒だけ宝玉が混じっている……そんなかんじだ。
フィリアは七年の間に背も高くなり、体格も子どもから大人のものへと急成長していた。
均整のとれた筋肉は、無駄な部分が全く無く、どちらかというとスレンダーだ。本人は、どうがんばっても筋肉がつかないと嘆いている。
いやいや、必要以上につかなくてもよい。むしろ、今の状態をキープしてくれ。とペルナたちは密かに願っている。
ムキムキ筋肉は十分すぎるほどいるので、正直なところおなかいっぱいだ。
隣の席に座っている、幼馴染の筋骨隆々の重戦士ギルと並んでいることが多いので、視覚の錯覚でフィリアは余計に細く、繊細な青年に感じてしまうだけだ。
もしかしたら、そのせいで、フィリアは筋肉少ないコンプレックスになっているのかもしれない。
フィリアは、肩まで伸びた美しい金髪を、邪魔にならないよう後ろで一つに束ね、シンプルな軽装鎧を好んで身につけていた。
どの魔法剣士もそうなのだが、魔法で簡単に防御力をあげることができるので、動きに制限がかかる鎧を忌避する傾向がある。
鍛錬の一環として、寝る時も、風呂に入るときも、常に薄く【防御】の魔法をまといつづけている、ストイックな強者もいるくらいだ。
さらに、フィリアは、機動力重視、叩き潰すではなく、斬る戦い方をしているので、武器も軽めの中剣を愛用していた。
なので、こざっぱりとした印象を受ける。
己のレベルに見合った魔剣を探しているようなのだが、まだこれといった剣との出会いはない、と話しているのを小耳に挟んだことがある。
大体の冒険者が、上級冒険者止まり。
超級冒険者だけで構成されているパーティともなると、大陸全土を見渡しても数えるほどである。
もしかしたら、今日の結果では『超級冒険者のみで構成された』貴重なパーティーが一つ増えるかもしれないのだ。
(ちょっとワクワクするにゃ)
ペルナの視線に気づいたのか、フィリアはにっこりと笑うと、獣人の受付嬢に向かって手をひらひらと振った。
(にゃにゃにゃにゃにゃ!)
眩しい容貌にもかかわらず、他の冒険者たちが敬遠する面倒でわりにあわないような依頼も、積極的に請けてくれるという、受付嬢たちにとっては、神様みたいな存在だ。
元来、魔法剣士になる者のステータスは優れており、彼だけがいちはやく超級冒険者になっていたのだが、他のメンバーも、ようやく超級へのランクアップ条件を満たしたようである。
すでに超級冒険者であるフィリアが査定を待つ必要はないのだが、わざわざ仲間に付き合っていることからして、他の有象無象の冒険者とは存在自体が違って見えた。
(がんばっているにゃあ)
目頭が熱くなる。
フィリアが冒険者となったのは、七年前。彼が十二歳になった頃だった。
ペルナが彼の冒険者登録に立ち会ったので、なんとなく、親近感を持っているというか、成長を見守るオカンのような、生暖かい気持ちになっていた。
今日もフィリアの立派に成長した姿をみてこっそり涙を浮かべてしまう。
(あんにゃにガリガリだった子が、こんにゃにステキな冒険者になるんだからにゃ)
だらけた冒険者が多い中、彼は姿勢正しく、所作もとても美しかった。
ひいき目フィルターがかかっているとはいえ、フィリアは酒場の中でひとり光を放っているように見える。
雑多な石ころの中に、一粒だけ宝玉が混じっている……そんなかんじだ。
フィリアは七年の間に背も高くなり、体格も子どもから大人のものへと急成長していた。
均整のとれた筋肉は、無駄な部分が全く無く、どちらかというとスレンダーだ。本人は、どうがんばっても筋肉がつかないと嘆いている。
いやいや、必要以上につかなくてもよい。むしろ、今の状態をキープしてくれ。とペルナたちは密かに願っている。
ムキムキ筋肉は十分すぎるほどいるので、正直なところおなかいっぱいだ。
隣の席に座っている、幼馴染の筋骨隆々の重戦士ギルと並んでいることが多いので、視覚の錯覚でフィリアは余計に細く、繊細な青年に感じてしまうだけだ。
もしかしたら、そのせいで、フィリアは筋肉少ないコンプレックスになっているのかもしれない。
フィリアは、肩まで伸びた美しい金髪を、邪魔にならないよう後ろで一つに束ね、シンプルな軽装鎧を好んで身につけていた。
どの魔法剣士もそうなのだが、魔法で簡単に防御力をあげることができるので、動きに制限がかかる鎧を忌避する傾向がある。
鍛錬の一環として、寝る時も、風呂に入るときも、常に薄く【防御】の魔法をまといつづけている、ストイックな強者もいるくらいだ。
さらに、フィリアは、機動力重視、叩き潰すではなく、斬る戦い方をしているので、武器も軽めの中剣を愛用していた。
なので、こざっぱりとした印象を受ける。
己のレベルに見合った魔剣を探しているようなのだが、まだこれといった剣との出会いはない、と話しているのを小耳に挟んだことがある。
大体の冒険者が、上級冒険者止まり。
超級冒険者だけで構成されているパーティともなると、大陸全土を見渡しても数えるほどである。
もしかしたら、今日の結果では『超級冒険者のみで構成された』貴重なパーティーが一つ増えるかもしれないのだ。
(ちょっとワクワクするにゃ)
ペルナの視線に気づいたのか、フィリアはにっこりと笑うと、獣人の受付嬢に向かって手をひらひらと振った。
(にゃにゃにゃにゃにゃ!)
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