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深淵編(1)
世間に知られたら、非常に不味い装備です
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「でしょー? でしょー? めっちゃ、自信作! アタシの持てる知識と技能をめっちゃ凝縮しました! これはどこに出しても、誰に見せても、恥ずかしくない仕上がりっすッ!」
褒められた子どもたち本人よりも、この衣装を用意した作業着姿のリュウフウの方が嬉しそうだった。
(いや、コレ、世間に知られたら、非常に不味い装備です……よ……ね……?)
リョクランは、磨き終わったグラスを棚に戻し、リュウフウをため息混じりに睨みつけた。
胸を張って自慢しているリュウフウには悪いが、リョクランの記憶では、駆け出し冒険者は、薬草摘みとモブなゴブリンの退治しかできなかったはずだ。
それ以上の行動は、危険行為として禁止されている。
一体、敵になにを想定したら、ここまでの過剰装備になるのか……。
(この子たちに、ドラゴン退治でもさせるつもりなのでしょうか……)
真面目に考えれば、考えるほど、リョクランの頭は痛くなる。
子どもたちに、どこでなにを討伐させようとしているのか。リュウフウの常識を疑いたくなる。いや、そもそもリュウフウに常識を求めるのが間違いなのだ……。
リョクランのため息が止まらない。
リュウフウの暴走は、今日が初めてではない。とはいえ、これはかなりすごい状況だった。
はたして、この状態で、この子たちを外にだしてよいものか……リョクランはふと考えてしまう。
装備も規格外だが、身につけている者たちも規格外なのだ。
その相乗効果を考えると、グラスを持つ手が勝手に震えてくる。
コクランが止める様子もないので、このまま子どもたちは外に放たれるのだろう。
(色々な意味で危険すぎるませんかね……)
このメンバーに良識と常識を求めるのは最初から無理な話だが、今回ばかりは、世間一般の良識と常識とやらを参考にした方がよいのではないだろうか……と、リョクランは心の中だけで思った。
リョクランの見立てでは、子どもたちの過剰装備には、偽装の回路も忘れずにしっかりと埋め込まれている。
なので、腕の良い職人が見ても、普通の装備にしか見えない。そうやすやすと看破されることはないだろう。
わかりづらいところに、鑑定阻害の回路も組み込まれている。
偽装に使われている回路のひとつをとっても、ただごとではない。
理論上としては認知されているが、実用に関しては、研究開発中の技術だ。
いわゆる、まだ誰も実装に成功していない回路である。
それらの未知な回路が、惜しげもなく、矛盾も解消されたうえで、ものすごく巧妙に組み込まれているのだ。
ある意味、子どもたちはリュウフウの実験体、モニターなのだろう。
であっても、被験者は慎重に選んで欲しい。
リュウフウは身だしなみに関連する感度と金銭感覚は残念な獣人だが、魔道具の開発と製作においては、神業レベルの持ち主だ。
そんな国宝級レベルの装備を、惜しげもなく子どもに与えているなど、帝国の上層部が知ったら大騒ぎになる。今現在、帝国とのトラブルは極力避けたい。自分たちが率先して、トラブルの火種を撒き散らすなど、もってのほかだ。
リョクランの心配をよそに、赤狐族の獣人は興奮気味に言葉をつづける。
「ホラ、みてくださいよ! ここの仕様! この相反する回路を同時に発動させるのに……」
「リュウフウ、全部聞かなくても、この装備の素晴らしさは余すこと無く伝わったわ……」
「……もう伝わっちゃいました?」
「ええ。なかなかの仕上がりに驚いたわ。ところで、貴女はいつから寝てないの?」
リュウフウの言葉をバッサリと遮り、コクランは手に持つ煙管の先端を赤狐族の獣人へと向ける。
子どもたちがリュウフウの勢いに、若干引き気味になっているが、リュウフウ本人は気づいていない。
これはいわゆる、睡眠不足からくるナチュラルハイ状態だ。
リュウフウは目をパチクリさせながらも、素直にコクランの質問に答えた。
「えっと……。オーダー頂いてから寝てませんが?」
褒められた子どもたち本人よりも、この衣装を用意した作業着姿のリュウフウの方が嬉しそうだった。
(いや、コレ、世間に知られたら、非常に不味い装備です……よ……ね……?)
リョクランは、磨き終わったグラスを棚に戻し、リュウフウをため息混じりに睨みつけた。
胸を張って自慢しているリュウフウには悪いが、リョクランの記憶では、駆け出し冒険者は、薬草摘みとモブなゴブリンの退治しかできなかったはずだ。
それ以上の行動は、危険行為として禁止されている。
一体、敵になにを想定したら、ここまでの過剰装備になるのか……。
(この子たちに、ドラゴン退治でもさせるつもりなのでしょうか……)
真面目に考えれば、考えるほど、リョクランの頭は痛くなる。
子どもたちに、どこでなにを討伐させようとしているのか。リュウフウの常識を疑いたくなる。いや、そもそもリュウフウに常識を求めるのが間違いなのだ……。
リョクランのため息が止まらない。
リュウフウの暴走は、今日が初めてではない。とはいえ、これはかなりすごい状況だった。
はたして、この状態で、この子たちを外にだしてよいものか……リョクランはふと考えてしまう。
装備も規格外だが、身につけている者たちも規格外なのだ。
その相乗効果を考えると、グラスを持つ手が勝手に震えてくる。
コクランが止める様子もないので、このまま子どもたちは外に放たれるのだろう。
(色々な意味で危険すぎるませんかね……)
このメンバーに良識と常識を求めるのは最初から無理な話だが、今回ばかりは、世間一般の良識と常識とやらを参考にした方がよいのではないだろうか……と、リョクランは心の中だけで思った。
リョクランの見立てでは、子どもたちの過剰装備には、偽装の回路も忘れずにしっかりと埋め込まれている。
なので、腕の良い職人が見ても、普通の装備にしか見えない。そうやすやすと看破されることはないだろう。
わかりづらいところに、鑑定阻害の回路も組み込まれている。
偽装に使われている回路のひとつをとっても、ただごとではない。
理論上としては認知されているが、実用に関しては、研究開発中の技術だ。
いわゆる、まだ誰も実装に成功していない回路である。
それらの未知な回路が、惜しげもなく、矛盾も解消されたうえで、ものすごく巧妙に組み込まれているのだ。
ある意味、子どもたちはリュウフウの実験体、モニターなのだろう。
であっても、被験者は慎重に選んで欲しい。
リュウフウは身だしなみに関連する感度と金銭感覚は残念な獣人だが、魔道具の開発と製作においては、神業レベルの持ち主だ。
そんな国宝級レベルの装備を、惜しげもなく子どもに与えているなど、帝国の上層部が知ったら大騒ぎになる。今現在、帝国とのトラブルは極力避けたい。自分たちが率先して、トラブルの火種を撒き散らすなど、もってのほかだ。
リョクランの心配をよそに、赤狐族の獣人は興奮気味に言葉をつづける。
「ホラ、みてくださいよ! ここの仕様! この相反する回路を同時に発動させるのに……」
「リュウフウ、全部聞かなくても、この装備の素晴らしさは余すこと無く伝わったわ……」
「……もう伝わっちゃいました?」
「ええ。なかなかの仕上がりに驚いたわ。ところで、貴女はいつから寝てないの?」
リュウフウの言葉をバッサリと遮り、コクランは手に持つ煙管の先端を赤狐族の獣人へと向ける。
子どもたちがリュウフウの勢いに、若干引き気味になっているが、リュウフウ本人は気づいていない。
これはいわゆる、睡眠不足からくるナチュラルハイ状態だ。
リュウフウは目をパチクリさせながらも、素直にコクランの質問に答えた。
「えっと……。オーダー頂いてから寝てませんが?」
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