白の甘美な恩返し 〜妖花は偏に、お憑かれ少女を護りたい。〜

魚澄 住

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第0章 使命と呼ぶには仰々しく

00話

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 ——— “ 私が、あの子の傍にいられなくなるときが来たら。きっとあなたが護ってあげてね、リリィ ”


 記憶に残された声は艶やかで、あるいは陽だまりのようでもあった。朽ち果てる寸前だった本体・・は、彼女の声に何度癒されただろう。何度、同じ言葉を繰り返されようと構わなかった。

 ……ただ、その渾名あだなだけはどうにかならないものか。
 りんは密かに願っていた。願うほど、平和な日々だった。

『リリィにいってきます、って言ってきた?』

『あっ……おはよう、リリィ。いってきます』

 救済の手を伸ばした二人の、愛おしい声。リリィ・・・も甘んじて受け入れながら、心穏やかに俯瞰していた。

『お母さん……?』

 消え入るような言葉を最後に聴こえなくなった、あの夏までは。


 White, sweet Return.

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