俺の犬

任意同行

「紀伊さん、君もやけになるんじゃない…って、君なんでそんなに顔真っ赤なんだい？」
俺は本当に恋に落ちてしまったかもしれない。
「べ、別に…」
「それより紀伊さん」
近づいてきてくいっと顔を正面に向けられた。
「な、何するんだよ」
「どうしてあんなすぐわかる嘘をついたんですか」
「嘘？」
「レイプなんてされてない。って」
「それは…」
「何でかはあえて聞かないことにしましょうか」
「そうかよ。ありがとな」
「え？」
「ありがとうって言ったんだよ」
「ははっ」
「何笑ってるんだ」
「君からありがとうを聞く日が来るとはね」
「…」
「俺はこの人たちを任意同行で警察署まで連れて行くから君とはここでさよならだ」
「あのさ、携帯の番号…知りたいんだけど」
「何で？」
「は？」
「いや、なんでかなって」
「何でって…何でも何もあるか！あんたが好きだから！だから…」
「好きねー」
「何だよ」
「俺警察官だからさ、危ないこともするわけ。だから恋人とか作らないんだわ」
ごめんね、そう謝られ
「じゃあ行くから」
そのまま去って行ってしまった。
「ちっくしょー！」
俺は壁を足でけり上げた。気持ちをぶつけるかのように。