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キスする前に出来ること【解決編】

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「……泣かせて……ごめんね?」
「……ん?」
「昨日までのこと………改めて、ごめん」
「…なんだよ、そんなの…もういいってば……昨日もたくさん謝ってくれたじゃん」
「…だけど…!」
「あー…けど!朝っぱらからお前が投げつけた睡眠薬の掃除させられたことは謝って欲しいかな!!瓶の破片も錠剤もすっげー散らばっててマジでめんどかった!!!」
「え……!?アレかなが片付けてくれたの!!!?」
「ん……、やっと…片付けが出来る精神状態になったからな」


穏やかに笑うかなは、コクリとコーヒーを飲み込む。

かなは普段強くて凛とした人だけど、でも案外繊細な一面もあって心の中と部屋の中の状態がリンクしがちなんだ。心が荒れれば部屋も荒れる。他人には見せないそのちょっと弱い部分も、俺はかわいくて大好きだ。だから今まではかなが精神的に参った時、俺が部屋の片付けをしてあげてたんだけど…今回は自分で片付けをさせてしまったみたいだ。

俺自身が原因なのに…心底情けない。


「……ありがと……ごめんね?」
「いいよ…、というかこっちこそ…ごめんな?」
「…え?」
「ほんとはさ…今回のことは俺が勝手に勘違いしてただけで、お前は悪くないだろ?だから…」
「そんなことない!!!勘違いさせるような状況作った俺に非があるんだから、かなは謝らないでよ!!!」


いくら親と揉めていたからと言って…

かなが俺の態度に悩んでいたことにも、浮気を疑われていたことにも気付かず……挙句最愛の人を不眠症になるまでボロボロにしたんだ。

今まで散々爽に対して、『俺は絶対結城 要を傷付けない』と宣言してきたくせにこのザマなんて…

最低すぎて、もう一発暁人に殴ってもらいたいくらいだ。


「……なら、行こう」
「……え、どこに……?」
「昨日言ったろ?お前の妹に会いに行こう」
「………それ……俺いまだによく意味わかんないんだけど……なんで急に…、」
「決着付けんだよ」
「え…なんの?」
「親とのこと」
「…え!!?」


予想外すぎる返答に思わず固まる。


…は?

親?



「えっ…?いや、妹に会うんだよね?わかってると思うけど親は家にいないよ!?」
「知ってるよ」
「はい…?…あの…俺かなが何言ってんのか全然理解出来ないんだけど…?」
「反省してんだろ?俺を泣かせたこと」
「そりゃもちろん」
「なら、行こう……恭介」


意味わかんない!!!ちゃんと説明して!!!

…と、心の中では叫んでいるのに言葉が出ない。



だってしょうがないじゃん!!!

美脚丸出しのエッロい恋人がベッドで俺に向かって上目遣いしてんだよ!?こんなの逆らえる奴いる!!?


絶対無理!!!結婚してください!!!



「…あのっ…いい、けど……」
「よし決まり!!じゃあコーヒー飲んだらすぐ行くからさっさと着替えよーぜ!」
「ええっ!!!?」
「…と、その前に…」
「…え」


かなは俺の手からマグカップを奪うと、自分のと一緒にベッドサイドのテーブルに置いた。

そしてそのまま、寝起きでまだ布団の中にいた俺に跨る。
声を出す間も無く、かなの柔らかい太ももの感触が俺の下半身に広がった。同時に、いつもかながしている花のような甘い香水の香り。

俺の上で前髪をかき上げたかなの姿が、一瞬…スローモーションみたいに見えた。



あまりにも…綺麗だ。




「抱っこ」
「…」
「…………あれ」
「…」
「オーイ恭介?…なんだよ、無反応?ちぇっ…やってみたかっ…わっ!!!」


俺は衝動的にかなを抱きしめて、そのまま前に倒れ込む。図らずもベッドに押し倒す形になり、絶世の美青年を真上から見下ろした。ぱっちり二重の美しい瞳は、驚きで小さく揺れている。


「びっくりした…!」
「かな…」
「な、に…」
「…煽りすぎ…」
「…っ…、恭…」
「…頼むから、ベッドの上でそんなかわいいことしないで……」


自分でもちょっと驚くぐらい低い声が出た。たぶん相当余裕がなかったんだと思う。

かなは両手で口元を押さえて、俺を見上げた。シルク糸みたいな柔らかいミルクティーベージュの髪が俺の手を撫でる。オーバーサイズのパジャマが彼の手を覆っていて、上手いこと萌え袖になっているのもポイントが高い。そもそも…いつも自信満々なかなが俺の下で小さくなっているってだけで叫び出したいくらい興奮してしまう。



俺はこの人が、

かわいくてかわいくてたまらない。



身体中にキスをして、愛していると唇で伝えたい。


彼の中に根元まで押し入って、気持ちいいと鳴く姿が見たい。



口に出せるはずのない願望が心の奥で渦巻く。けれどそれは、叶わぬ願いなのだと自分に言い聞かせるほか無い。それでいい。いいんだ。




俺の欲望なんか、関係ない。





「あの………ごめん、恭介……煽るつもりは無かったんだけど…」
「…」
「俺、なんていうか…普通の恋人同士がすること…なんにもしたことないから……初めての朝とか…たぶん変に憧れてて…その、……ダメ、だった…?」


上目遣いで呟いた恋人の凄まじい破壊力に、俺はとうとう身体を離し横に倒れ込む。そして、溜め込んだ熱をなんとか解放させたくてひたすらベッドの上をゴロゴロ転がりまくる。

…危ねぇええええっ!!!!!!まじでこの人ヤバい!!!!!危うく無理矢理接吻してしまうところだった!!!!

素でこれ言ってくるのは…ずるすぎでしょ!!!!!


「うあーーーんっ!!!かなのバカあああああああ!!!!!」
「…はい?」
「もうやめてっ!!!俺まじで必死に我慢してるからっ!!!!俺の朝勃ちちんこがかなをロックオンしてるから!!!!!!」
「下品かよ!!!」
「下品で結構だよ!!!!あーもうヤバいっ勃ちすぎて痛いってほんと!!!!!こんな勃ってたらトイレも行けないじゃん!!!どうしてくれんの!!!!?」
「…ぶはっムードねぇー」
「笑うなぁーーーーー!!!!!!」


大爆笑を始めたかなは、しばらくして何か思い付いたように静止する。

そして、クイーンサイズの豪華なベッドの上を匍匐前進で進んできて…


最後にあざとく首を傾げた。


「恭介…」
「…な…なにっ…?」
「ふふっ…」
「なに!!?」
「で…抱っこは?」
「…このっ……小悪魔ーーーーーーーっ!!!!!!!」




こうして、年下の恋人と迎える初めてのクリスマスは……




かなり刺激的に幕を開けた。


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