幼馴染の御曹司と許嫁だった話

金曜日

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この先プラトニックにつき【挨拶編】

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「やーんあきちゃんおかえりなさぁい!!今日もとびっきりかわいい~!!!!」
「お母さん……近い」


実家の扉を開けると…両親が並んでお出迎えしてくれた。久しぶりに会った母に勢いよく抱きしめられ、なんだか照れ臭い。最近は爽に抱きしめられまくってたから、お母さんが余計に小さく思えた。俺も、成長したってことなのかな。父は相変わらず無口で、俺の顔を見て無言のままニコッと小さく笑った。

煉瓦造りの2階建てのかわいらしいデザインの家は、完全に母の趣味。爽の実家とは比べるまでもなく狭いけど、俺は結構気に入ってる。なんて言うか…家全体がちっちゃな秘密基地みたいで、かわいいでしょ?


「だって、あきちゃん全然帰ってきてくれないからぁ…お母さんもお父さんもすっごく寂しかったのよ?」
「ねぇ…俺大学生だよ?用事なきゃ実家になんて来ないってばぁ……」
「まぁ、辛辣!こんなにかわいい顔に産んであげた母に、もうちょっと優しくしてくれてもいいのに!」
「しっかりコンプレックスでーす」


我が家は長男の俺が母似、次男の旭が父似で、それぞれ生き写しって言われるくらい似ている。この顔も女の子に生まれてたら武器になってたのかな。…まぁ、今は爽にも要にもかわいいって言ってもらえるからいいんだけどね。


「……暁人、ますます葉月に似てきたな」
「え、そうかな?」
「いいえ陽平さんっ!!!あきちゃんは私なんかよりずっと美人さんよ!!!見てよこの肌、この鼻、この瞳!!!完璧すぎてため息が出ちゃう…!!!さっすが爽くんを落としただけのことはあるわ!!!」
「……母親のセリフとは思えないんですけど」
「あらっお洋服も素敵ねぇあきちゃん!これ、前に話してくれたお友達が作ってくれてるものよね?かわいい~!!」
「…うん、そうだけど……っていうかお母さん…相変わらずスーパーマイペースだね…」




ガチャ


後ろから荷物をたくさん持った旭が入ってきた。俺も運ぶよ?って聞いたんだけど、普通に戦力外通告されたから俺だけ先に家に入ってたの。文字通り、俺じゃ力不足ってことみたい。俺も男なのに。


「お父さんお母さんただいまー!」
「旭!おかえりなさーい!!!」
「…おかえり」


旭の顔を見たお母さんは、俺の時と同じようにギュッと旭を抱きしめる。それを見てお父さんがクスリと笑う。とっても嬉しそう。家族が集まるのも半年ぶりだもんね。


「旭~っまた背が伸びたのねっ!はぁ~……若い時の陽平さんソックリ……」
「あははっ僕も鏡見るたび思ってたよ」




ガチャ


一拍遅れて、爽がヒョコッとドアから顔を出した。手には旭のものと思われるキャリーバッグやら、お土産やらがたくさん握られている。…まぁ、爽が一番力持ちだもんね。



「お邪魔します…!」
「キャーーーーーーーー!!!!!爽くーーんっ!!!!!相変わらず目眩がするほど素敵ね!!!!!」
「陽平さん、葉月さん…ご無沙汰してます」
「ちょっと待ってよ僕より爽くんへの歓声の方がすごいのはひどくない?僕帰ってきたの半年ぶりだよ?」
「うふふふふっだって爽くんいい男すぎるんだもの!」
「えーっ?もー…あきちゃんもお母さんも薄情だなぁ…」


ニコニコ笑うお母さんと、納得がいかないって表情の旭に笑ってしまう。相変わらず騒がしいなぁ、我が家は。


「…………さぁみんな、早く入りなさい」
「「はーい!!」」
「…お邪魔します」


お父さんの優しい号令で、みんなが家に入る。

久しぶりの我が家は、相変わらずどこもかしこもピカピカに磨き上げられていて床にはチリひとつない。この母親に仕込まれたんだ、俺は家事得意に決まってる。



「うっわ…!すっごい!」


リビングの扉を開けると、テーブルいっぱいに料理が並んでいる。しかも、俺と旭の好物ばっかり。
…あ、爽の好きなものもちゃんとある……さすがお母さん…!抜かりない。


「もぉ~みんなで集まるなんてほんっとに久しぶりねっ!嬉しくてお母さん全然眠れなかったのよぉ!」
「…………いや、寝てたぞ…たっぷり8時間」
「ちょ、陽平さんっ!なんで言うのよぉ~!!」
「……葉月は普段からちょっと大袈裟」
「なによぉ!いけないのぉ?」
「………ふっ…、いけなくはないよ」


お父さんがお母さんの頭を撫でると、途端に大人しくなった。見つめ合って、見るからにいい雰囲気。
俺はと言えば、息子たちの前で堂々とイチャつき始める両親に、少々目眩がした。爽の家もそうだけど、我が家もいつまで経っても新婚気分でいるタイプの両親で…息子としてはかなり恥ずかしい。


「ふふっ……お父さんとお母さん相変わらずだね」
「旭…笑い事じゃないって……爽もいるのに、俺すっごい恥ずかしい…!見てらんないっ!」
「え?なんだよ、素敵じゃん?俺あきの両親超憧れるわ」
「えーー?息子としてはめちゃくちゃ恥ずかしいよ?」
「俺んちだって似たようなもんじゃん」
「………まぁ、そうだけど」
「あははっ!確かに爽くんのご両親も仲良いよね?僕は親が仲良いのすごく嬉しいけどなぁ~」


そりゃ、仲が良いに越したことはないけどさ。人前ではもう少し控えてほしいよね。

……あ、もしかして………これ俺と爽を見る時の要の気持ちに近かったりする…?だとしたら、マジで反省。



「さぁ、みんな座って!ご飯食べましょ!」


お母さんがパンパンッと手を叩いて、俺たちを座らせる。

…が、爽がゆっくり手をあげたので、みんなが一斉にそちらを向いた。


「あの、すみません…!先に、話…いいですか?」
「あら……、何かしら?」


爽の真剣な声に空気が変わる。

この様子だと、両親も何も聞かされて無かったみたいだ。

爽は一度立ち上がり、ゆっくり両親の前まで歩いて行くと…そのまま床に正座した。お父さんもお母さんも、少し驚いた顔で互いを見合った後、姿勢を正して改めて爽に向き直った。

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