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この先プラトニックにつき【相談編】
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しおりを挟む「ぐーっ!!!くっそぉ!!!!かわいいっ!!!逆らえねぇっ!!!!」
「えへへ~っ!…じゃあ、一緒に行ってくれる?」
「もういいっ!!!お前が行くところなら、どこにでも行ってやる!!!!」
「やったー!!!!」
やっと降参した王子様に、俺は喜びのガッツポーズを見せつける。さすが親戚…爽と要はチョロさがソックリ。
「俺………マジであきに頭上がんなくなってねぇ…?」
「ふふっ…ご不満ですか?」
「いや……もう、いいです……幸せなんで……」
「あははっ!俺もだよ~!!!」
クスクス笑っていると、爽は優しい目で俺を見る。
目的は不純だけど、爽と一緒に海に行けるなんて嬉しすぎる。楽しみだなぁ。
「つーか…恭介も……なんで、海なんて言い出したんだ?アイツ海好きだっけ?」
「あー…それは多分……要と仲良くなるためじゃないかなぁ…?」
「……………え?」
爽は目を見開いて心底驚いた顔で静止する。
「……要も、来んの…?」
「え?うん、要と恭ちゃん会わせたら…恭ちゃん要に一目惚れしちゃったみたいでめちゃくちゃ口説いててさ…ほんと、恭ちゃんって美人に目がないよね」
「………それ、マジで?」
「…マジだけど……え?そんな驚くこと?恭ちゃんって美人にはとりあえず声かける主義でしょ?」
なんせ、自分でそう吹聴してたし。
実際、何度か恭ちゃんが綺麗な人に声かけてるのを見たことがある。
「そうだけど……」
「……?なに?爽なんでそんな驚いてるの?」
「いや、だって……口説いてたんだろ?」
「うん…ハッキリ『付き合って』とか『結婚して』とか言ってたよ」
爽は眉間に皺を寄せて黙ると、口元に手を当ててしばらく考え込む。俺は爽の行動の意味が全くわからず、ご飯を食べながら次のアクションを待っていた。
…うん、スープも美味しい!
爽ってば…何をそんなに考え込んでいるんだろ?恭ちゃんのナンパ癖なんて…いつものことなんじゃないの…?
「やっぱ…おかしい」
「…なにが?」
「アイツ……たしかに美人なら男女問わず声かけるけど………でも、絶対本気では口説かねぇんだよ……」
「……え?」
声はかけるのに、口説かない……?
え?なにそれ…どういうこと…?
爽は若干俯きながら、遠い目をする。
今まで見たことのない表情に、なんだかドキッとした。
「……あきの目には……恭介って…どう見える…?」
「どうって……」
「スッゲェ適当なチャラ男?」
「う~ん……まぁ、なんていうか……恋愛に関しては奔放そうだなってイメージかな」
恭ちゃんは少々騒がしいけど、優しいし、思いやりがある人だと思う。その反面、ちょっと軽いっていうか…ぶっちゃけチャラ男だなとは感じていた。だから、要を口説いたことにも俺は疑問を持たなかったし、多分本人は美人を口説くのは男の嗜みくらいに思ってそう。
「………そう、見えるよな?」
「…違うの?」
「うん……、本当はアイツ…すげぇ一途なんだよ」
「ええっ!!!?」
「そのせいで……悪い女に騙されて貯金盗まれたこともあったし」
「ハァ!!!?」
「その事件以来、恋愛自体しなくなっててさ……だから、アイツが口説いたってことは…多分、マジなんだと思う」
「ま、マジって……」
「マジで、要のこと好きになったんだと思うよ」
爽の話によると、恭ちゃんは幼少期から家庭の事情でかなりお金に苦労して生きてきたらしく…今の会社に就職するまで散々色んなバイトを掛け持ちして働かないご両親にお金を渡していたそうだ。それだけでもう泣ける話なのに…就職後は当時付き合っていた彼女との結婚の為に貯金をしていて、結局はそのお金も彼女に持ち逃げされたらしい。生まれてからずっと…人に利用されて、騙されて、お金を取られて……それでも恭ちゃんは一途に彼女のことを待ち続けていたらしい。爽は一文無しになった恭ちゃんを慰めて、家に居候させていた時期があり、その時にこの話を聞いたみたい。結局、彼女は他の男と結婚してしまい……恭ちゃんはその時初めて爽の前で涙を見せたそうだ。
楽天家でいつも明るく元気な恭ちゃんの、悲しすぎる過去の話に…ドバッと涙が溢れ出た。
「はぁ~……やっぱ、泣くよな?」
「ううーっ!!!泣くよぉ!!!」
「はいはい…ティッシュ持ってくっから…ちょっと待って」
「ぐすっ…ヤバイ、俺っ恭ちゃんのこと…すごく誤解してたっ」
「はははっ…!それでいーんだって…」
「良くないよぉ!」
爽はソファに置いてあったティッシュケースを持って戻ってきた。俺の隣に腰掛けて、ティッシュで俺の涙を拭いながらほっぺにキスをしてくれる。
「ったく…ほんとあきは泣き虫だなぁ」
「ううっ…」
「ま、そこもかわいいんだけど…」
涙を拭い終わった爽は、俺の頭をポンポンと優しく撫でながら頬杖をつく。
「恭介はさ、誤解されること前提であの態度なんだよ…」
「え……」
「アイツ…これまでの人生めちゃくちゃ傷付いて来たからさ……ああやって自分のこと守ってるんだと思う」
「守る…?」
「うん……ああやってチャラ男みたいな態度でいれば、誰も本気でアイツのこと好きにならないしアイツも誰にも本気にならずに済むだろ?」
「……」
「もう傷付きたくないから…恋愛にも臆病になってんだよ……あれが恭介の選んだ自己防衛ってこと」
「そんな…」
「まぁ、美人が好きなのは元からだと思うけど?」
自己防衛のために誤解されたままでいいなんて……そんなの、あまりにも悲しすぎる。
恭ちゃんはなんにも悪くないのに……
「だから、マジで驚いた……恭介……ついに好きになれる相手見つけたのかって」
「そっか……それが……要」
「うん…………めちゃくちゃ予想外だけど、考えてみたら結構お似合いじゃん」
「…やっぱそうだよね?俺も、2人が並んでるの見てそう思った」
「………まぁ…でも、要も一筋縄じゃいかない相手だと思うけどな…」
「たしかに……」
要は俺にとって初めて出来た大事な親友だ。
でも、今の話を聞いて…恭ちゃんになら任せてもいいって思えた。きっと、この話聞いたら要だって………
「俺、恭ちゃんの恋応援するっ!!!」
「えっ」
「だって、こんなの聞いて黙ってられないよ!!2人とも俺にとっては貴重な男友達なんだよ!?幸せになってもらわなきゃ困る!!!」
「………そっか……まぁ…俺はなんでもいいけど…」
爽はニコッと優しく笑うと、元の席に戻ってご飯の続きを食べ始める。
よし、これで…来週の海デートへのモチベーションがますます上がった。
もちろん、優先すべきは爽に俺と身体の関係持つ気があるのかどうか確かめることだけど……でも、恭ちゃんが要を口説き落とすお手伝いもしよう!!そりゃ、俺は恋愛初心者だし…なんのアドバイスもできないけど、2人の恋を見守る心構えは出来た。
やってやろーじゃん!!!
俺は手に持っていたお茶碗のご飯をモリモリとかき込む。それを見た爽は、おー!と言いながらケラケラ笑った。
決戦は1週間後……
こうして、樋口 爽誘惑大作戦の幕が切って落とされた。
…To be continued.
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