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トドメを刺してと君は言う【前編】
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「君、誰かに用事かな?」
「えっ……」
「うわっすごくかわいいなぁ…!!!学生さん…だよね?インターン?誰かの彼女?それとも娘さん?」
「えっ、あの…!」
50代くらいのおじさんだ。
捲し立てるように話しかけられて、全然返事が出来ない。
「どれも違う?」
「あのっ…」
「本当にかわいいなぁ……良かったら連絡先教えてくれない?いずれにしても悪いようにはしないよ?」
掴まれた肩がちょっと痛くて、抵抗できずにいたら周りでザワザワと見物人が俺たちを見る。
そんな見てるなら助けてよ…!
っていうか、俺完全に女の子だと思われてるじゃんめんどくさいっ!!!
「…君細いなぁ…もっと食べた方がいいんじゃないか?」
「ひゃっ!?さ、触らないでくださいっ!!」
「なんだ…うぶなんだねぇ…!ほら、私とご飯でも食べに行こう!ちょうどお昼に…」
「えっ!?え、いや、行けないです!それに俺は女の子じゃ…」
「なに!?行けない!?私はこの会社の…!」
「あきっ!!!!」
「……!爽!」
人だかりの中から見慣れたスーツの美青年が姿を現して、思わずホッと安堵した。
周りにいたギャラリーは、爽と俺の顔を交互に見てとても驚いている。
爽も少し驚いた顔をしたあと、俺の肩と腰を掴むおじさんの方を見た。今まで見た中で一番の無表情だ。
これは……怒ってる……?
「……常務、すみません…その子俺の知り合いです」
「や、やぁ…樋口くん…!君の連れだったか…!いやぁ…綺麗なお嬢さんだね?つい声をかけてしまったよ…!」
「……大切な人なので……もう、話しかけないでいただけると助かります」
「悪かった悪かった!!君も人が悪いなぁ!樋口くんの連れならそうと早く言ってくれれば…!」
「あき、行くぞ……常務、失礼します」
「あ、は、はいっ!あの、失礼します…!」
爽に手を引かれて、そのまま会社の中に連れていかれる。中もすごく綺麗だ。めちゃくちゃ広い。
すぐに首からvisitorのパスを下げられて、誰もいない部屋まで連行された。たぶん、会議室。大きなテーブルの周りにイスがたくさん置かれている。学生の俺からしたらものすごく新鮮だ。
そこまで来てやっと、
爽はこっちを見た。
「あき!!!お前何してんの!!!?」
「へっ…!?あ…あのっ…!」
「心配するから危ないことしないの!!!お前みたいな若くてかわいい子がおじさんの群れの中に来たらどうなるかくらいわかるだろ!?狼の中に入れられた羊と同じだからな!?現に、ロビーにすげー美少女がいるって社内チャットで噂広がって大変だったんだぞ!?」
「しゃ、社内チャット…?え、えっと…あのっ…爽…!」
「特徴聞いてすぐお前だってわかったから助けられたけど…!!あーもう、俺の父親の会社のこと知ってるやつだったからビビって手引いてくれたけど、じゃなきゃお前連れてかれてたかもしんねーんだぞ!?腐っても常務だからなさっきの!!」
「……っ」
「あきっ!!一体何でこんなところまでっ」
「爽っ!!!!!!」
全く俺の話を聞いてくれない爽に痺れを切らして、俺は思いっきり勢いをつけて爽の身体に抱きついた。だって…これしか思い付かなかったんだもん。
その衝撃に、爽は驚いて見事に固まる。
「……っ!」
「爽……心配かけてごめん…、でも、俺の話ちゃんと聞いて?」
「…………は、はい」
「……お弁当、持ってきたの」
「………え?」
俺は、爽から身体を離すとグイッとお弁当の入った保冷バッグを差し出す。
爽はそれを見てポカンとしたあと、もう一度俺を見た。
「あの…俺今日寝坊しちゃったから…届けにきたの…」
「……」
「迷惑だった?」
「……迷惑な…わけない」
「……なら、よかった…あの、騒ぎ起こしてごめんなさい…俺、帰るね?」
俺はそう告げると、立ち去ろうと歩き出す。
が、すぐに腕を掴まれて…気付いた時には
爽の腕の中にいた。
急に強い力で抱きしめられて、驚きで声が出ない。
「あき………、俺めちゃくちゃ嬉しいっ……お弁当のためにわざわざ来てくれたのか…?」
「ん…」
「その…、お前のこと心配で…強く言ってごめんな……?俺、嬉しくて死にそう」
「……やだ、爽大袈裟だよ」
「大袈裟じゃねぇって……マジで、お前といるとスッゲェキュンキュンする……」
「……爽、苦しっ…」
あまりにも腕の力が強くて抗議すると、爽は慌てて俺の身体を離した。いつになく焦っているようだ。
「ごめんっ…!!!」
「いや、全然…いいけど……あ、爽…!俺のために朝食までありがとね?」
「えっ…?ああ、あんなの全然…」
「えへへ…俺もすっごく嬉しかったよ!」
俺はそう言って、爽にニコリと笑いかける。
すると爽は、一瞬苦しそうな顔をした後ゆっくり俺の顎を持ち上げた。
身長差で、俺は完全に真上を見上げる形になる。
爽……?
どうして、そんな泣きそうな顔…するの?
「あき………俺、」
「ん……?」
「ストーーーーーーーップ!!!!!!」
大きな声と共に突然前方のドアが開き、驚いて声の主を見ると背の高い男前なお兄さんがこちらを見ている。見たところ、爽よりも高いみたい。すごい…スタイルいい…!
「オイ爽!!!お前ここ会社だぞ?流石にそれはないっての!!!」
「………チッ、邪魔すんじゃねーよ恭介」
「家でやれってのアホ!!!誰かに見られたらどーすんだ!!!こんなん俺に言われてちゃお前終わりだかんな!?」
「あーっクッソ!!!その通りだよ!!!家でやりゃーいいんだろ!!ちくしょう!!」
高身長コンビによる暴言の応酬にポカンとしていると、お兄さんに顔を覗かれた。
「えっ……」
「うわっすごくかわいいなぁ…!!!学生さん…だよね?インターン?誰かの彼女?それとも娘さん?」
「えっ、あの…!」
50代くらいのおじさんだ。
捲し立てるように話しかけられて、全然返事が出来ない。
「どれも違う?」
「あのっ…」
「本当にかわいいなぁ……良かったら連絡先教えてくれない?いずれにしても悪いようにはしないよ?」
掴まれた肩がちょっと痛くて、抵抗できずにいたら周りでザワザワと見物人が俺たちを見る。
そんな見てるなら助けてよ…!
っていうか、俺完全に女の子だと思われてるじゃんめんどくさいっ!!!
「…君細いなぁ…もっと食べた方がいいんじゃないか?」
「ひゃっ!?さ、触らないでくださいっ!!」
「なんだ…うぶなんだねぇ…!ほら、私とご飯でも食べに行こう!ちょうどお昼に…」
「えっ!?え、いや、行けないです!それに俺は女の子じゃ…」
「なに!?行けない!?私はこの会社の…!」
「あきっ!!!!」
「……!爽!」
人だかりの中から見慣れたスーツの美青年が姿を現して、思わずホッと安堵した。
周りにいたギャラリーは、爽と俺の顔を交互に見てとても驚いている。
爽も少し驚いた顔をしたあと、俺の肩と腰を掴むおじさんの方を見た。今まで見た中で一番の無表情だ。
これは……怒ってる……?
「……常務、すみません…その子俺の知り合いです」
「や、やぁ…樋口くん…!君の連れだったか…!いやぁ…綺麗なお嬢さんだね?つい声をかけてしまったよ…!」
「……大切な人なので……もう、話しかけないでいただけると助かります」
「悪かった悪かった!!君も人が悪いなぁ!樋口くんの連れならそうと早く言ってくれれば…!」
「あき、行くぞ……常務、失礼します」
「あ、は、はいっ!あの、失礼します…!」
爽に手を引かれて、そのまま会社の中に連れていかれる。中もすごく綺麗だ。めちゃくちゃ広い。
すぐに首からvisitorのパスを下げられて、誰もいない部屋まで連行された。たぶん、会議室。大きなテーブルの周りにイスがたくさん置かれている。学生の俺からしたらものすごく新鮮だ。
そこまで来てやっと、
爽はこっちを見た。
「あき!!!お前何してんの!!!?」
「へっ…!?あ…あのっ…!」
「心配するから危ないことしないの!!!お前みたいな若くてかわいい子がおじさんの群れの中に来たらどうなるかくらいわかるだろ!?狼の中に入れられた羊と同じだからな!?現に、ロビーにすげー美少女がいるって社内チャットで噂広がって大変だったんだぞ!?」
「しゃ、社内チャット…?え、えっと…あのっ…爽…!」
「特徴聞いてすぐお前だってわかったから助けられたけど…!!あーもう、俺の父親の会社のこと知ってるやつだったからビビって手引いてくれたけど、じゃなきゃお前連れてかれてたかもしんねーんだぞ!?腐っても常務だからなさっきの!!」
「……っ」
「あきっ!!一体何でこんなところまでっ」
「爽っ!!!!!!」
全く俺の話を聞いてくれない爽に痺れを切らして、俺は思いっきり勢いをつけて爽の身体に抱きついた。だって…これしか思い付かなかったんだもん。
その衝撃に、爽は驚いて見事に固まる。
「……っ!」
「爽……心配かけてごめん…、でも、俺の話ちゃんと聞いて?」
「…………は、はい」
「……お弁当、持ってきたの」
「………え?」
俺は、爽から身体を離すとグイッとお弁当の入った保冷バッグを差し出す。
爽はそれを見てポカンとしたあと、もう一度俺を見た。
「あの…俺今日寝坊しちゃったから…届けにきたの…」
「……」
「迷惑だった?」
「……迷惑な…わけない」
「……なら、よかった…あの、騒ぎ起こしてごめんなさい…俺、帰るね?」
俺はそう告げると、立ち去ろうと歩き出す。
が、すぐに腕を掴まれて…気付いた時には
爽の腕の中にいた。
急に強い力で抱きしめられて、驚きで声が出ない。
「あき………、俺めちゃくちゃ嬉しいっ……お弁当のためにわざわざ来てくれたのか…?」
「ん…」
「その…、お前のこと心配で…強く言ってごめんな……?俺、嬉しくて死にそう」
「……やだ、爽大袈裟だよ」
「大袈裟じゃねぇって……マジで、お前といるとスッゲェキュンキュンする……」
「……爽、苦しっ…」
あまりにも腕の力が強くて抗議すると、爽は慌てて俺の身体を離した。いつになく焦っているようだ。
「ごめんっ…!!!」
「いや、全然…いいけど……あ、爽…!俺のために朝食までありがとね?」
「えっ…?ああ、あんなの全然…」
「えへへ…俺もすっごく嬉しかったよ!」
俺はそう言って、爽にニコリと笑いかける。
すると爽は、一瞬苦しそうな顔をした後ゆっくり俺の顎を持ち上げた。
身長差で、俺は完全に真上を見上げる形になる。
爽……?
どうして、そんな泣きそうな顔…するの?
「あき………俺、」
「ん……?」
「ストーーーーーーーップ!!!!!!」
大きな声と共に突然前方のドアが開き、驚いて声の主を見ると背の高い男前なお兄さんがこちらを見ている。見たところ、爽よりも高いみたい。すごい…スタイルいい…!
「オイ爽!!!お前ここ会社だぞ?流石にそれはないっての!!!」
「………チッ、邪魔すんじゃねーよ恭介」
「家でやれってのアホ!!!誰かに見られたらどーすんだ!!!こんなん俺に言われてちゃお前終わりだかんな!?」
「あーっクッソ!!!その通りだよ!!!家でやりゃーいいんだろ!!ちくしょう!!」
高身長コンビによる暴言の応酬にポカンとしていると、お兄さんに顔を覗かれた。
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