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東方の冒険者
門出
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春の木漏れ日が木々から漏れる穏やかな1日、この日の事は俺は一生忘れることが出来ないだろう!
俺、エドワード・カイザンは今日の成人の儀でようやく大人の仲間入りをすることになった。
この国の法律では15歳で成人を迎え、同時に結婚をする事が出来る様になる。
だが、それは貴族や金持ちなどのごく一部だけで平民は大体が18歳前後だ。
まぁ平民の中でも15歳で成人を迎える者もいるし、中には20歳までに成人を迎える人もいる。
そして今日、俺は15歳になり卒業後も通い続けた同じ様に働くことが出来る、特に俺の住む和国は15歳で仕事に就くことを美学とし、侍と貴族以外の職に就き和国中に旅立っていく、俺の場合は離れて暮らす父親が侍であるからこれからギルドで職業を侍で登録をする事できる。登録後は侍として仕事をすることになるのだが…………..。
「えっと…….、ここか。」
地図を見ながら何とかギルドに着くことが出来た。サガミの街のギルドは平屋だが、かなり大きさの建物で入口の方には幾人もの冒険者が群がっており喧騒に包まれていた。
(物語だと、ここから俺が主人公って勘違いして暴走する新人多かったよな~)って頭の中で思いながら人かき分けて入口へと向かう。
「こんにちわー」
緊張のあまり入口から入ってすぐの場所で大声で挨拶をしてしまう、ギルドの中は賑わっているようで多くの人に変な目で見られてしまう。
(うわぁー、やっちまったー!)
冒険者はもちろんのこと受付嬢もいる、さらにギルドマスターまで執務室から出て見ているのているのではないか!
「こんにちわ、本日はどのようなご用件でしょうか?」
そう言って何事も無かったかのように、声をかけてくれたのはこのギルドで一番美人な受付嬢だった。
「あ、あのすいません父さんの紹介でここに来ました、侍になりたいんですけど……」
父さんからもらった紹介状を胸のポケットから取り出し、受付嬢に渡した。
受付嬢は、紹介状の裏の封蝋の紋章を見て少し驚いた表情をしたが、直ぐに平常に戻る。
「まぁ貴方が、ナグル・カイザン公爵様のご子息ですか!」
受付嬢は、あまり大きい声では無いがよく通る声で訪ねる、周りの冒険者の視線が再び俺に集まってくる。(一般人の振りをして登録に来たのに正体をばらすなよ(怒)!)
「はい、そうですけど……何か問題でもありましたか?」
つい、喧嘩口調になりそうになるのを堪える。
"スパーン"、俺の前でニヤニヤしていた受付嬢が後ろから叩かれる、叩かれた勢いが強かったのか反動でカウンターの天板で顔を強打する。顔を強打した受付嬢は鼻から血を垂らしうずくまるを尻目に、ニコニコと愛想笑いを振り撒き新たな受付嬢が立つ。
「いえいえ、そういう訳ではありませんよ?ただ貴方のお父様から聞いた話だともっとこう……なんというか大人ぽい感じの話しだったので」
受付嬢の目からは俺は父親から聞いていたより幼く見えるらしい。
「うっ…….そ、そんな事より早く登録して下さい、今日は刀が拝領されると聞いて来たのですから時間が惜しいんです」
そう、ここ工戸国では侍になる者には最初の刀を支給しているのだ、侍になった者の大半が工戸国に士官し冒険者になるのはごく一部の者だけである。
「あら、そうですね。それではこちらへどうぞ」
そう言われて案内された場所は小さな個室だった。
「まず、冒険者登録をしますので、龍神石に手をかざしたままここで少々お待ちくださいね。」
そう言うと、受付嬢は机に龍神石を机に置くと奥の扉に入っていった。
「分かりました、やってみます。」
受付嬢が奥に行くのを確認し龍神石に手をかざしてみる、龍神石は青い淡い光を放ち周りを少し明るくさせるのであった。
しばらく待っているとドアが開かれ先ほどの女性が戻ってきた。
「色々と準備が整いましたので、行きましょうか。」
「はい」
そしてまた別の部屋へと移動した。
そこには一人の無骨な老人がいた。
「ほぉう、おめぇがカイザン公爵家の息子か」
少し豪快な人間だが、何故か憎めないタイプの性格のようで圧倒されてしまう。
少し気後れしてしてしまうが、ここで躓くと後々ヤバい気がする 、ここは無難な挨拶をしておこう。
「初めまして、エドワード・カイザンと申します」
これで、切り抜けたはず大丈夫なはず!
「ふむ、わしはこのギルドで剣術講習と刀匠をしているオガミと言う者ぢゃ。よろしく頼むぞ」
「はい、こちらこそお願いします」
俺は、オガミに軽く頭を下げ挨拶をし、彼と会話を続けた。
「まずは、尋ねるが剣術について聞きたい。先ずはどの流派を使う?」
オガミは、出来たばかりの俺のギルドカードを訝しげに訪ねてくる。
俺は、オガミの問いにはあまり答えたくは無かったが、なるべく答えることにした。
「俺が使える流派は4つです、一つ目の流派は式典での演武に使う皇武演桜流ですね、2つ目はカイザン流抜刀術です、3つ目は極法流で最後が無天流です。」
俺は偽ることなく、現在使える流派を答えた。オガミは、そんな俺を品定めをするかのように見据えている。
「カイザン流抜刀術か....、道理で断罪と見届け人のスキルと称号を持っている訳ぢゃな」
知っているのか...?カイザン流抜刀術の修練方を?何故に?」
「つぎは、手を見せてみぃ!」
俺は、オガミにそう言われると両手の平を上に向け見える位置に差し出した。だがオガミは、差し出した俺の手をさらに引っ張り、ゴツゴツした手で俺の手を触り一つ一つ確認していく。
「よく使いこまれた良い手だ、この手なら.....」
オガミは黙り込み考え込むと
「そこで少し待っておれ、とっておきのを見繕ってやるわい。」
オガミはそう言うと奥へと続く通路に消えると一本の刀を持って戻ってきた。
「これが今日から貴様の相棒となる刀だ。大事にするんだぞ?」
「ありがとうございます」
渡された刀を見てみるととても綺麗で思わず見惚れてしまった。
鞘の色は黒を基調としており鍔の部分にも龍のような装飾が施されている。柄巻は白に近い灰色をしており、柄頭には小さい水晶玉のようなものが付いている。
刃紋はとても美しく波打っておりまるで生きているようだ。
「凄い......、本当にいいのかこれ貰って?」
俺は刀を見た瞬間から目が離せなくなり、本当にこの刀と釣り合いが取れているのか不安になっていく。
オガミは、そんな俺を励ますかのように、
「構わんさ、妖刀龍翔じゃがこいつが勝手にお前を選んだじゃからな!よく言うだろう、超一流武具は使い手を選ぶと。」
(まさか、インテリジェンス・ウエポン)
「え!?そうなんですか!?」
オガミは厳つい顔を破顔しながら答える。
「ああそうだ、だからこいつに選ばれたお前は立派な侍になれるんじゃ」
「はい!頑張ります!」
こうして俺は侍としての一歩を踏み出したのだ。
「それで、カイザン公爵家の方針ははこれからどうするのだ?」
オガミは、エドワードの事をよほど気にいったらしく
「まずは、修行しろって言われてるんで暫くはこの国で生活しようと思います」
「そうか、まぁその方が安全ぢゃろうな。それにこの国は治安も良いし安心できるしの!」
「はい!俺、必ず強くなってみせます!」
「おお!そうか!頑張ってくれよ!それじゃあそろそろ時間だし行くとするかな」
「あ、はい!今日はありがとうございました!」
「気にするな。それと今度ワシの道場兼工房にもに遊びに来るといい。きっと良い経験になるはずぢゃ。」
「本当ですか!是非行かせてもらいます!」
俺は、小部屋を出るとギルドの受付へ戻って行った。
「お疲れさまでした、これで手続きは全て終了しました」
「ありがとうございました!それでは失礼します!」
「はい、お気をつけて」
そう言って俺はギルドを後にした。
「よし!早速帰って母さんに伝えよう!」そう思いながら帰路についた。
「ただいまー」
そう言いながら玄関の扉を開けるとそこに居たのは普段は父の公務先に着いて回るメイド達がが立っていた。
「おかえりなさいませエドワード様、旦那様が聖城京よりお戻りになられています、エドワード様がお戻りになられたら執務室まで来るように言われておられました。」
メイド達は、俺にまで丁寧な口調で伝言を伝えてくる。
「え?父さんが?」
「はい、至急とのことでしたので急いでご準備をして下さいませ。」
「わ、わかった、着替えたら行くよ」
そうして俺はとりあえず、身なりを整える為に自室へと向かった。
ここで俺の事を少し語るとしよう。俺、エドワード・カイザンはカイザン家の跡取りであるが実は4男である、物心がつく前に兄たちは死んでしまってもうこの世に居ないのである。つまりは、成人まで生きられた俺は自動的に跡取りとなってしまったのである。こんな経緯がある為、俺は兄たちに比べたら暗殺対策を厳重に施されたうえで比較的自由に生きさしてもら得ている。剣の修行はかなり厳しいものだったが。とりあえずは着替えを終わらせよう。
数分後、着替えを済ませた俺は父のいる執務室に向かった。
「父さん、来たよ」
すると父さんは執務の途中らしく机の前に座っていた。
「あぁ、すまないないきなり呼び出したりなんかして。とりあえず座ってくれ」
そう言われたので俺は机の近くにあるソファーに座ることにした。
「父さん、何の用?」
俺は、とりあえずどんな用か尋ねてみる。
「実はな…….お前に紹介したい人がいるんだ」
「紹介したい人?」
「あぁ、まぁお目付け役みたいなもんだがな。そろそろ来ることだが。」
「へー」
すると突然目の前に見たこともない五芒星の魔法陣が現れた。
「来たのか、転移不可の結界をも無効とは!」
転移?此処にか?
「父さん……これって……」
「あぁ、恐らく転移魔法の類いだ」
そう言っている間に魔法陣から一人の青年が出てきた。
「この度は、秘密のお目通りと言うことで転移にて失礼致します。我が養父可部 靖迷 の命により可部 靖迷 に成り代わりご子息の成年の儀に馳せ参じました。私は陰陽師のミトゥース・ニードルと申します。」
そう言うとその男は深々と頭を下げてきた。
「は、初めましてカイザン家4男のエドワード・カイザンです。えっと……父さんの知り合いですか?」
陰陽師か、俺の体格と比べると華奢な感じがするな、お目付け役らしいけど大丈夫か?
「ええ、まぁそんなところです。しかし驚きました、まさかカイザン家の跡取りがこんなにも若い方だったとは……」
「え?そうですか?」
「ええ、普通ならもっと年配の方が多いですから」
「まぁ、そうですよね」
「さて、挨拶はこれくらいにしておいて、そろそろ祝いの場に移ろう。」
「それもそうですね、エドワード君もお腹が空いたでしょう」
「いえ、まだそこまでは…….」
「遠慮しなくていいんですよ、ほら、食堂に行きましょう」
「は、はい」
そして俺は二人の後を付いていった。
食堂では普段と違い豪勢なものがいくつも並んでいた、美味しそうなご馳走を目の前にしてたまらず飛びつきたくなる。
「おっ美味しい!!なんだよこの肉!!」
「そうじゃろう?なんせ、このわしが直々に買い付けをさせたドラゴン肉のステーキだからな」
「うん、確かに美味しいけど……流石にこれは食べ過ぎじゃない?」
「何を言っとるんじゃ!これからは修行に出るからいい物はいつ食えるか解らんぞ」
確かにそうだ明日からギルドで受けた依頼をやらないといけなくなるかもしれないからな。
「それにしても、エドワード殿は本当によく食べるんですねぇ」
「ええ、昔からそうなんであまり気にしないでください」
「いやいや、とても凄い事だと思いますよ?私なんていつも残してしまうので」
ははは、そう言えばミトゥースさんって歳いくつなんです?」
「ん?ああ、そういえば詳しい自己紹介がまだでしたね。私は今年で16歳になります」
「へぇー!俺の一つ上かぁ」
「ふむ、それじゃあエドワード殿は15歳なんですね?」
「そうですね、やっと成人しました!」
「そっか、私の方が一つ上なのか」
俺は、ミトゥースさんと自己紹介を兼ねた談笑で、時間を忘れるほど会話を楽しんでいた。
「おい、二人とももう食い終わったんなら早く行くぞ」
そう言って父さんは先に部屋を出て行った。
「あはは、それではまた明日来ますので」
ミトゥースはそう言い転移魔法で屋敷を後にする。
「あ、待ってよ父さん!」
そうして俺は、自分の部屋に戻って行った。
「ふぅー、やっと寝れるな」
そう思いベッドに横になった瞬間、部屋の扉がノックされた。
(誰だろう?)
俺は起き上がってドアノブに手をかけた。
「はい、誰ですか?」
するとゆっくりと扉が開かれていった。
「あら、やっぱり起きていたのね」
「母さん!?」
扉の向こうには母さんがいた。
「どうしたの母さんこんな時間に」
そう聞くと母さんは少しだけ恥ずかしそうに言った。
「実はね、あなたに伝えないといけないことがあるの」
「伝えないと行けない事?」
「ええ、それはね.....、修業は和国から出て、中大で行うようにしてね。」
その言葉を聞いた時俺は自分の耳を疑った。
「俺が、和国を出て外の国に?」
「ええ、お父さんと話し合って決めたことなの」
正直なところ不安しかないが、俺だって男だしこういう展開に憧れが無かったわけでもない。
「でも、どうして急に?」
すると母さんは真剣な顔で話し始めた。
「実はね、最近この辺りの森で魔物が増えているらしいのよ」
「それで、父さん達が討伐に行くことになったの?」
「ええ、そう言うことなるわ。それともう一つあるのだけど」
「何?」
「実は、この前ギルドに行った時に聞いたんだけど、なんでもあのオルバの悲劇の再来が近いの、此処も無事ではなくなるって噂があるのよ」
「へぇー、そうだったんだ」
「だからもし、何かあった時にはすぐに逃げるようにして欲しいの」
「うん、わかった。その時はすぐに帰ってくるよ」
「ありがとう。それと最後にお願いなんだけど…….」
「ん?なに?」
「あなたも、気を付けてね」
「わかっているって。じゃあお休み」
そして俺は眠りについた。
翌朝、俺達は朝食を食べて早速ギルドに向かって歩いていた。
「なぁ父さん、昨日母さんから聞いたんだけどさ」
「エドワード、なんだ?」
「オルバの悲劇の再来が近いのていうあれ、本当だと思う?」
「さぁな、ただのデマかもしれんし、真実だったとしても今の俺たちがどうにか出来る相手じゃないからな」
「確かにそうだよね」
そうこうしているうちにギルドにたどり着いた。中に入ると相変わらず人がたくさんいて賑やかだ。
「さて、まずはどんな依頼主にちゃんと会うんだぞ、ワシはギルドマスター達との用事があるから、ミトゥース殿と頑張れよ」そう言って父さんはカウンターの方に歩いて行った。
(まぁ、別に良いけど……初仕事か....なんか緊張するな..)
俺は冒険者としての初仕事で緊張してギルド入口で少し固まってしまった。そんな俺を後ろから呆れたような声で
「エドワード殿でも緊張をされることもあるんですか?」
ミトゥースが声掛けてくる、彼なりの優しさのようで声を掛けてくれたおかげで俺の緊張が解けたようだ。
「それでは、エドワード殿。行きましょうか」
ミトゥースに促されギルドの中へ入るのであった。
俺、エドワード・カイザンは今日の成人の儀でようやく大人の仲間入りをすることになった。
この国の法律では15歳で成人を迎え、同時に結婚をする事が出来る様になる。
だが、それは貴族や金持ちなどのごく一部だけで平民は大体が18歳前後だ。
まぁ平民の中でも15歳で成人を迎える者もいるし、中には20歳までに成人を迎える人もいる。
そして今日、俺は15歳になり卒業後も通い続けた同じ様に働くことが出来る、特に俺の住む和国は15歳で仕事に就くことを美学とし、侍と貴族以外の職に就き和国中に旅立っていく、俺の場合は離れて暮らす父親が侍であるからこれからギルドで職業を侍で登録をする事できる。登録後は侍として仕事をすることになるのだが…………..。
「えっと…….、ここか。」
地図を見ながら何とかギルドに着くことが出来た。サガミの街のギルドは平屋だが、かなり大きさの建物で入口の方には幾人もの冒険者が群がっており喧騒に包まれていた。
(物語だと、ここから俺が主人公って勘違いして暴走する新人多かったよな~)って頭の中で思いながら人かき分けて入口へと向かう。
「こんにちわー」
緊張のあまり入口から入ってすぐの場所で大声で挨拶をしてしまう、ギルドの中は賑わっているようで多くの人に変な目で見られてしまう。
(うわぁー、やっちまったー!)
冒険者はもちろんのこと受付嬢もいる、さらにギルドマスターまで執務室から出て見ているのているのではないか!
「こんにちわ、本日はどのようなご用件でしょうか?」
そう言って何事も無かったかのように、声をかけてくれたのはこのギルドで一番美人な受付嬢だった。
「あ、あのすいません父さんの紹介でここに来ました、侍になりたいんですけど……」
父さんからもらった紹介状を胸のポケットから取り出し、受付嬢に渡した。
受付嬢は、紹介状の裏の封蝋の紋章を見て少し驚いた表情をしたが、直ぐに平常に戻る。
「まぁ貴方が、ナグル・カイザン公爵様のご子息ですか!」
受付嬢は、あまり大きい声では無いがよく通る声で訪ねる、周りの冒険者の視線が再び俺に集まってくる。(一般人の振りをして登録に来たのに正体をばらすなよ(怒)!)
「はい、そうですけど……何か問題でもありましたか?」
つい、喧嘩口調になりそうになるのを堪える。
"スパーン"、俺の前でニヤニヤしていた受付嬢が後ろから叩かれる、叩かれた勢いが強かったのか反動でカウンターの天板で顔を強打する。顔を強打した受付嬢は鼻から血を垂らしうずくまるを尻目に、ニコニコと愛想笑いを振り撒き新たな受付嬢が立つ。
「いえいえ、そういう訳ではありませんよ?ただ貴方のお父様から聞いた話だともっとこう……なんというか大人ぽい感じの話しだったので」
受付嬢の目からは俺は父親から聞いていたより幼く見えるらしい。
「うっ…….そ、そんな事より早く登録して下さい、今日は刀が拝領されると聞いて来たのですから時間が惜しいんです」
そう、ここ工戸国では侍になる者には最初の刀を支給しているのだ、侍になった者の大半が工戸国に士官し冒険者になるのはごく一部の者だけである。
「あら、そうですね。それではこちらへどうぞ」
そう言われて案内された場所は小さな個室だった。
「まず、冒険者登録をしますので、龍神石に手をかざしたままここで少々お待ちくださいね。」
そう言うと、受付嬢は机に龍神石を机に置くと奥の扉に入っていった。
「分かりました、やってみます。」
受付嬢が奥に行くのを確認し龍神石に手をかざしてみる、龍神石は青い淡い光を放ち周りを少し明るくさせるのであった。
しばらく待っているとドアが開かれ先ほどの女性が戻ってきた。
「色々と準備が整いましたので、行きましょうか。」
「はい」
そしてまた別の部屋へと移動した。
そこには一人の無骨な老人がいた。
「ほぉう、おめぇがカイザン公爵家の息子か」
少し豪快な人間だが、何故か憎めないタイプの性格のようで圧倒されてしまう。
少し気後れしてしてしまうが、ここで躓くと後々ヤバい気がする 、ここは無難な挨拶をしておこう。
「初めまして、エドワード・カイザンと申します」
これで、切り抜けたはず大丈夫なはず!
「ふむ、わしはこのギルドで剣術講習と刀匠をしているオガミと言う者ぢゃ。よろしく頼むぞ」
「はい、こちらこそお願いします」
俺は、オガミに軽く頭を下げ挨拶をし、彼と会話を続けた。
「まずは、尋ねるが剣術について聞きたい。先ずはどの流派を使う?」
オガミは、出来たばかりの俺のギルドカードを訝しげに訪ねてくる。
俺は、オガミの問いにはあまり答えたくは無かったが、なるべく答えることにした。
「俺が使える流派は4つです、一つ目の流派は式典での演武に使う皇武演桜流ですね、2つ目はカイザン流抜刀術です、3つ目は極法流で最後が無天流です。」
俺は偽ることなく、現在使える流派を答えた。オガミは、そんな俺を品定めをするかのように見据えている。
「カイザン流抜刀術か....、道理で断罪と見届け人のスキルと称号を持っている訳ぢゃな」
知っているのか...?カイザン流抜刀術の修練方を?何故に?」
「つぎは、手を見せてみぃ!」
俺は、オガミにそう言われると両手の平を上に向け見える位置に差し出した。だがオガミは、差し出した俺の手をさらに引っ張り、ゴツゴツした手で俺の手を触り一つ一つ確認していく。
「よく使いこまれた良い手だ、この手なら.....」
オガミは黙り込み考え込むと
「そこで少し待っておれ、とっておきのを見繕ってやるわい。」
オガミはそう言うと奥へと続く通路に消えると一本の刀を持って戻ってきた。
「これが今日から貴様の相棒となる刀だ。大事にするんだぞ?」
「ありがとうございます」
渡された刀を見てみるととても綺麗で思わず見惚れてしまった。
鞘の色は黒を基調としており鍔の部分にも龍のような装飾が施されている。柄巻は白に近い灰色をしており、柄頭には小さい水晶玉のようなものが付いている。
刃紋はとても美しく波打っておりまるで生きているようだ。
「凄い......、本当にいいのかこれ貰って?」
俺は刀を見た瞬間から目が離せなくなり、本当にこの刀と釣り合いが取れているのか不安になっていく。
オガミは、そんな俺を励ますかのように、
「構わんさ、妖刀龍翔じゃがこいつが勝手にお前を選んだじゃからな!よく言うだろう、超一流武具は使い手を選ぶと。」
(まさか、インテリジェンス・ウエポン)
「え!?そうなんですか!?」
オガミは厳つい顔を破顔しながら答える。
「ああそうだ、だからこいつに選ばれたお前は立派な侍になれるんじゃ」
「はい!頑張ります!」
こうして俺は侍としての一歩を踏み出したのだ。
「それで、カイザン公爵家の方針ははこれからどうするのだ?」
オガミは、エドワードの事をよほど気にいったらしく
「まずは、修行しろって言われてるんで暫くはこの国で生活しようと思います」
「そうか、まぁその方が安全ぢゃろうな。それにこの国は治安も良いし安心できるしの!」
「はい!俺、必ず強くなってみせます!」
「おお!そうか!頑張ってくれよ!それじゃあそろそろ時間だし行くとするかな」
「あ、はい!今日はありがとうございました!」
「気にするな。それと今度ワシの道場兼工房にもに遊びに来るといい。きっと良い経験になるはずぢゃ。」
「本当ですか!是非行かせてもらいます!」
俺は、小部屋を出るとギルドの受付へ戻って行った。
「お疲れさまでした、これで手続きは全て終了しました」
「ありがとうございました!それでは失礼します!」
「はい、お気をつけて」
そう言って俺はギルドを後にした。
「よし!早速帰って母さんに伝えよう!」そう思いながら帰路についた。
「ただいまー」
そう言いながら玄関の扉を開けるとそこに居たのは普段は父の公務先に着いて回るメイド達がが立っていた。
「おかえりなさいませエドワード様、旦那様が聖城京よりお戻りになられています、エドワード様がお戻りになられたら執務室まで来るように言われておられました。」
メイド達は、俺にまで丁寧な口調で伝言を伝えてくる。
「え?父さんが?」
「はい、至急とのことでしたので急いでご準備をして下さいませ。」
「わ、わかった、着替えたら行くよ」
そうして俺はとりあえず、身なりを整える為に自室へと向かった。
ここで俺の事を少し語るとしよう。俺、エドワード・カイザンはカイザン家の跡取りであるが実は4男である、物心がつく前に兄たちは死んでしまってもうこの世に居ないのである。つまりは、成人まで生きられた俺は自動的に跡取りとなってしまったのである。こんな経緯がある為、俺は兄たちに比べたら暗殺対策を厳重に施されたうえで比較的自由に生きさしてもら得ている。剣の修行はかなり厳しいものだったが。とりあえずは着替えを終わらせよう。
数分後、着替えを済ませた俺は父のいる執務室に向かった。
「父さん、来たよ」
すると父さんは執務の途中らしく机の前に座っていた。
「あぁ、すまないないきなり呼び出したりなんかして。とりあえず座ってくれ」
そう言われたので俺は机の近くにあるソファーに座ることにした。
「父さん、何の用?」
俺は、とりあえずどんな用か尋ねてみる。
「実はな…….お前に紹介したい人がいるんだ」
「紹介したい人?」
「あぁ、まぁお目付け役みたいなもんだがな。そろそろ来ることだが。」
「へー」
すると突然目の前に見たこともない五芒星の魔法陣が現れた。
「来たのか、転移不可の結界をも無効とは!」
転移?此処にか?
「父さん……これって……」
「あぁ、恐らく転移魔法の類いだ」
そう言っている間に魔法陣から一人の青年が出てきた。
「この度は、秘密のお目通りと言うことで転移にて失礼致します。我が養父可部 靖迷 の命により可部 靖迷 に成り代わりご子息の成年の儀に馳せ参じました。私は陰陽師のミトゥース・ニードルと申します。」
そう言うとその男は深々と頭を下げてきた。
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陰陽師か、俺の体格と比べると華奢な感じがするな、お目付け役らしいけど大丈夫か?
「ええ、まぁそんなところです。しかし驚きました、まさかカイザン家の跡取りがこんなにも若い方だったとは……」
「え?そうですか?」
「ええ、普通ならもっと年配の方が多いですから」
「まぁ、そうですよね」
「さて、挨拶はこれくらいにしておいて、そろそろ祝いの場に移ろう。」
「それもそうですね、エドワード君もお腹が空いたでしょう」
「いえ、まだそこまでは…….」
「遠慮しなくていいんですよ、ほら、食堂に行きましょう」
「は、はい」
そして俺は二人の後を付いていった。
食堂では普段と違い豪勢なものがいくつも並んでいた、美味しそうなご馳走を目の前にしてたまらず飛びつきたくなる。
「おっ美味しい!!なんだよこの肉!!」
「そうじゃろう?なんせ、このわしが直々に買い付けをさせたドラゴン肉のステーキだからな」
「うん、確かに美味しいけど……流石にこれは食べ過ぎじゃない?」
「何を言っとるんじゃ!これからは修行に出るからいい物はいつ食えるか解らんぞ」
確かにそうだ明日からギルドで受けた依頼をやらないといけなくなるかもしれないからな。
「それにしても、エドワード殿は本当によく食べるんですねぇ」
「ええ、昔からそうなんであまり気にしないでください」
「いやいや、とても凄い事だと思いますよ?私なんていつも残してしまうので」
ははは、そう言えばミトゥースさんって歳いくつなんです?」
「ん?ああ、そういえば詳しい自己紹介がまだでしたね。私は今年で16歳になります」
「へぇー!俺の一つ上かぁ」
「ふむ、それじゃあエドワード殿は15歳なんですね?」
「そうですね、やっと成人しました!」
「そっか、私の方が一つ上なのか」
俺は、ミトゥースさんと自己紹介を兼ねた談笑で、時間を忘れるほど会話を楽しんでいた。
「おい、二人とももう食い終わったんなら早く行くぞ」
そう言って父さんは先に部屋を出て行った。
「あはは、それではまた明日来ますので」
ミトゥースはそう言い転移魔法で屋敷を後にする。
「あ、待ってよ父さん!」
そうして俺は、自分の部屋に戻って行った。
「ふぅー、やっと寝れるな」
そう思いベッドに横になった瞬間、部屋の扉がノックされた。
(誰だろう?)
俺は起き上がってドアノブに手をかけた。
「はい、誰ですか?」
するとゆっくりと扉が開かれていった。
「あら、やっぱり起きていたのね」
「母さん!?」
扉の向こうには母さんがいた。
「どうしたの母さんこんな時間に」
そう聞くと母さんは少しだけ恥ずかしそうに言った。
「実はね、あなたに伝えないといけないことがあるの」
「伝えないと行けない事?」
「ええ、それはね.....、修業は和国から出て、中大で行うようにしてね。」
その言葉を聞いた時俺は自分の耳を疑った。
「俺が、和国を出て外の国に?」
「ええ、お父さんと話し合って決めたことなの」
正直なところ不安しかないが、俺だって男だしこういう展開に憧れが無かったわけでもない。
「でも、どうして急に?」
すると母さんは真剣な顔で話し始めた。
「実はね、最近この辺りの森で魔物が増えているらしいのよ」
「それで、父さん達が討伐に行くことになったの?」
「ええ、そう言うことなるわ。それともう一つあるのだけど」
「何?」
「実は、この前ギルドに行った時に聞いたんだけど、なんでもあのオルバの悲劇の再来が近いの、此処も無事ではなくなるって噂があるのよ」
「へぇー、そうだったんだ」
「だからもし、何かあった時にはすぐに逃げるようにして欲しいの」
「うん、わかった。その時はすぐに帰ってくるよ」
「ありがとう。それと最後にお願いなんだけど…….」
「ん?なに?」
「あなたも、気を付けてね」
「わかっているって。じゃあお休み」
そして俺は眠りについた。
翌朝、俺達は朝食を食べて早速ギルドに向かって歩いていた。
「なぁ父さん、昨日母さんから聞いたんだけどさ」
「エドワード、なんだ?」
「オルバの悲劇の再来が近いのていうあれ、本当だと思う?」
「さぁな、ただのデマかもしれんし、真実だったとしても今の俺たちがどうにか出来る相手じゃないからな」
「確かにそうだよね」
そうこうしているうちにギルドにたどり着いた。中に入ると相変わらず人がたくさんいて賑やかだ。
「さて、まずはどんな依頼主にちゃんと会うんだぞ、ワシはギルドマスター達との用事があるから、ミトゥース殿と頑張れよ」そう言って父さんはカウンターの方に歩いて行った。
(まぁ、別に良いけど……初仕事か....なんか緊張するな..)
俺は冒険者としての初仕事で緊張してギルド入口で少し固まってしまった。そんな俺を後ろから呆れたような声で
「エドワード殿でも緊張をされることもあるんですか?」
ミトゥースが声掛けてくる、彼なりの優しさのようで声を掛けてくれたおかげで俺の緊張が解けたようだ。
「それでは、エドワード殿。行きましょうか」
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働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
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