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プロローグ
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女子力ゼロ――というか、人としてすべきこともやっていないような気がする――の11歳、和泉心温は、ある日なぜか海に転落した。
ぼーっと歩いていたら落ちたのだ。
彼女は、普段からぼーっとしているわけではない。
学校で言われたことについて考えていたら、気付かず右折する道を直進してしまった。
運悪く直進した先は港である。彼女はそのまま気づかず海に真っ逆さま……。
右折する道に気付かないほど考えていたこととは――
☆★☆★
「ねえねえ、心温ちゃんってさ、女子力無くない?」
「確かにー!」
たったこれだけのつぶやきだった。
確かに心温は、洋服は毎日同じ――洗っていないのではなく、同じのを何着か持っている――だし、髪はとかさない。
どこからどう見ても女子力ゼロなのだが。
言われたことが無かった、というか気にしたことが無かったからか、心に残ったのだ。
そしてそのまま、海に落ちてしまった。
心温は、海にどんどん沈んでいった……。
***
目を開けて初めて見た物は、夜空だった。
いつもと変わらない光景に、心温は、誰かに助けられたと考えた。
だが、目を凝らしてみて、違和感に気付いた。
夜空に浮かんでいるものが、月ではなかったからだ。
月の代わりと言わんばかりに浮かんでいるそれは、とても青い。
(まさか――)
「地球?」
心温は、自分自身がたどり着いた結論に驚愕している。
「えっえっ、ここ月なの?? だけど自然がある!!」
もちろん、海に落ちただけで月にたどり着くわけがない。
これ、小説とかドラマとかアニメとかマンガによくある異世界転生!? と、なぜかハイテンションで心温は考えていた。
(でも、よく考えたら、月って異世界じゃないよね……?)
まわりは、地球と変わらない町並みだ。
家があり、道路があり、スーパーまである。
「いったい、どうなって……」
呆然としている間、右手から人が近寄ってきていることに心温は気付いていない。
「あら? この子、捨てられているのかしら? 家族にしようかしら」
右手から突然現れた女性が、心温に向ってそう言う。
女性は、レースやフリルが沢山ついた、茶色のドレスを着ている。
まるで貴族のようだ。
年は、18から21くらいだろうか。
ハシバミ色の目とキャロットオレンジの髪が、優しそうな雰囲気を醸し出している。
が、いきなりすぎて、困惑するしかない。
「は?」
思わず心温はそう返してしまう。
別に捨てられてはいない。というか、海に落ちて死んだ――というのが心温の過去について妥当である。
だがこの女性がこのことを知るはずもない。
そもそも、心温はグレーのパーカーに紺色のズボンという、この女性からしたら雑な服で、家の塀に寄りかかっていたのである。
捨てられたと勘違いされるのも致し方ない……かもしれない。
「じゃあ、手を離さないでね」
心温は、女性に手を握られた。
「【ワープ】」
謎の言葉で、体が上空へと浮いていく。
もちろん女性も一緒に。
(浮いてる!? ちょっ、まっ、どこ行くのっ!?)
だがそんな叫びもむなしく、体は急降下した。
「ギャー!!!!!!」
この叫びまで、女子力のかけらもない。
ぼーっと歩いていたら落ちたのだ。
彼女は、普段からぼーっとしているわけではない。
学校で言われたことについて考えていたら、気付かず右折する道を直進してしまった。
運悪く直進した先は港である。彼女はそのまま気づかず海に真っ逆さま……。
右折する道に気付かないほど考えていたこととは――
☆★☆★
「ねえねえ、心温ちゃんってさ、女子力無くない?」
「確かにー!」
たったこれだけのつぶやきだった。
確かに心温は、洋服は毎日同じ――洗っていないのではなく、同じのを何着か持っている――だし、髪はとかさない。
どこからどう見ても女子力ゼロなのだが。
言われたことが無かった、というか気にしたことが無かったからか、心に残ったのだ。
そしてそのまま、海に落ちてしまった。
心温は、海にどんどん沈んでいった……。
***
目を開けて初めて見た物は、夜空だった。
いつもと変わらない光景に、心温は、誰かに助けられたと考えた。
だが、目を凝らしてみて、違和感に気付いた。
夜空に浮かんでいるものが、月ではなかったからだ。
月の代わりと言わんばかりに浮かんでいるそれは、とても青い。
(まさか――)
「地球?」
心温は、自分自身がたどり着いた結論に驚愕している。
「えっえっ、ここ月なの?? だけど自然がある!!」
もちろん、海に落ちただけで月にたどり着くわけがない。
これ、小説とかドラマとかアニメとかマンガによくある異世界転生!? と、なぜかハイテンションで心温は考えていた。
(でも、よく考えたら、月って異世界じゃないよね……?)
まわりは、地球と変わらない町並みだ。
家があり、道路があり、スーパーまである。
「いったい、どうなって……」
呆然としている間、右手から人が近寄ってきていることに心温は気付いていない。
「あら? この子、捨てられているのかしら? 家族にしようかしら」
右手から突然現れた女性が、心温に向ってそう言う。
女性は、レースやフリルが沢山ついた、茶色のドレスを着ている。
まるで貴族のようだ。
年は、18から21くらいだろうか。
ハシバミ色の目とキャロットオレンジの髪が、優しそうな雰囲気を醸し出している。
が、いきなりすぎて、困惑するしかない。
「は?」
思わず心温はそう返してしまう。
別に捨てられてはいない。というか、海に落ちて死んだ――というのが心温の過去について妥当である。
だがこの女性がこのことを知るはずもない。
そもそも、心温はグレーのパーカーに紺色のズボンという、この女性からしたら雑な服で、家の塀に寄りかかっていたのである。
捨てられたと勘違いされるのも致し方ない……かもしれない。
「じゃあ、手を離さないでね」
心温は、女性に手を握られた。
「【ワープ】」
謎の言葉で、体が上空へと浮いていく。
もちろん女性も一緒に。
(浮いてる!? ちょっ、まっ、どこ行くのっ!?)
だがそんな叫びもむなしく、体は急降下した。
「ギャー!!!!!!」
この叫びまで、女子力のかけらもない。
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