夜の動物園の異変 ~見えない来園者~

メイナ

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第1章

第20話『動物園の最も古いエリア』

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 透子の言葉に、えまは息をのんだ。

 ──"もう一つの影"の次の目的地は、動物園の最も古いエリア。

 それは、かつてここにいた"特別な個体"と関係があるのだろうか?

「透子さん、最も古いエリアって……具体的にどこですか?」

 えまの問いに、透子はタブレットを操作しながら答える。

「現在の地図には載っていない、昔の施設跡よ。」

「……施設跡?」

 透子は画面をえまに見せる。

「この動物園は、何度も改修されているわ。でも、昔の地図を見ると、今は使われていないエリアがあったの。」

 えまは、画面に映し出された古い地図をじっと見つめた。

 ──そこには、「旧保護エリア」と記された場所がある。

「……ここ、今はどうなってるんですか?」

「現在は立ち入り禁止区域になっている。でも、正式に封鎖された記録はないの。」

「じゃあ、何かが残っている可能性がある……?」

 透子は鋭い視線で頷く。

「そうね。"それ"が水族館の影響を受けたのも、"特別な個体"がかつてそこにいたから。そして、その仲間がいたのなら……最も古いエリアに、その痕跡が残されているかもしれない。」

 えまはゴクリと唾をのんだ。

「行ってみましょう。」

旧保護エリア

 動物園の奥へと足を進めると、徐々に雰囲気が変わってきた。

 手入れが行き届いていない古びたフェンス。
 草に埋もれた古い案内板。

 そして、その先に──

「……ここが"旧保護エリア"?」

 えまが呟いた先には、錆びついた鉄扉があった。

「明らかに、長年使われていないわね。」

 透子が慎重に扉に手をかける。

 「ギィィ……」

 ゆっくりと扉が開くと、その先には広大なスペースが広がっていた。

 だが、奇妙なことに、檻や建物の残骸はほとんどない。

 まるで、何かを完全に"消し去った"かのように。

「……ここ、何かが違う。」

 えまが足元の地面を見つめた。

 土の色が、他のエリアと違う。

 まるで、何かが"焼けた跡"のような──。

「……やっぱり、ここで火災があったんだ。」

 透子も、慎重に周囲を調べる。

「でも、火事があったのに、ほとんど何も残っていない。」

「もしかして、火災の後に完全に撤去されたんじゃ……?」

 えまがそう言いかけたとき。

 ──「ザザ……」

 不意に、背後で何かが動く音がした。

「っ!」

 二人は振り向く。

 しかし、そこには誰もいない。

「……今の、聞こえましたよね?」

「ええ。確実に"何か"がいたわ。」

 透子はすぐに赤外線カメラを起動し、周囲を映す。

 ──そして。

 「……!!!」

 画面に、はっきりと"影"が映った。

 "それ"ではない。
 "もう一つの影"が、目の前にいる。

「……ついに姿を現したわね。」

 透子がカメラを固定する。

 影は、形を変えながらじわじわと動いている。
 まるで"何かを探している"かのように。

「……"それ"が警戒していたのは、やっぱりこいつ……?」

 えまは、ロイの言葉を思い出す。

 『……しらないもの。あぶない。』

 ──これは、確実に"危険な存在"。

「透子さん……どうします?」

「このまま監視を続けるわ。"もう一つの影"が何をしようとしているのか、見極める。」

 二人は、息をひそめて影を観察する。

 すると──

 影は、旧保護エリアの中央部分に向かってゆっくりと移動し始めた。

「……あの場所に、何かがある?」

 透子は慎重にカメラの倍率を上げる。

 ──すると。

 そこには、古い金属製の蓋が埋められていた。

「……これは?」

 えまが蓋に近づき、慎重に確認する。

 表面には、何かの刻印が残っている。

 ──しかし、その文字はほとんど判別できないほど風化していた。

「ここに……何かが封じられている?」

 えまが呟いた瞬間。

 影が、蓋の上で一瞬止まる。

「……まさか。"もう一つの影"は、この蓋の下にある何かを狙ってる?」

 透子が目を細める。

「もしそうなら……"それ"が動物園を守っていた理由も、ここに関係しているのかもしれないわ。」

 ──その時だった。

 「バチバチッ……!!!」

 影が突然、大きく形を変えた。

 まるで"こちらに気づいた"かのように。

「っ……!!」

 透子がカメラを持ち直す。

 えまの心臓が、どくんと跳ねる。

 影が、ゆっくりと……"こちらに向かってくる"。

「……まずい、気づかれた……!」

「えま、下がって!」

 透子がえまの腕を引く。

 影は、不規則に揺れながら、二人を囲むように広がり始める。

「……これ、普通の影じゃない……!」

 えまの耳に、何かが囁くような音が響いた。

 ──「……だれ……?」

「っ……!?」

 えまは、思わず耳を塞ぐ。

「えま!?」

 透子がえまを支える。

 ──影の声が、直接頭の中に流れ込んでくる。

 「……そこに、いるのは……だれ……?」

 まるで、記憶を探るような、探し求めるような声。

 えまは必死に意識を集中させる。

 すると……

 ──影の奥から、"何かの気配"を感じた。

 それは、かすかに揺れる"もう一つの意識"。

 "もう一つの影"の奥に、何かが……眠っている?

 えまは、息をのむ。

「透子さん……この影、ただの存在じゃない……。」

「どういうこと?」

 えまは、震える声で答えた。

「この影の奥に……"誰か"がいる……!」

‐‐‐

(続く!)

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