夜の動物園の異変 ~見えない来園者~

メイナ

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第1章

第16話『もう一つの影』

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 夜の静寂が、動物園を包み込んでいた。
 透子とえまは、ホワイトタイガーの檻の前で思考を巡らせる。

 "それ"は、かつてここで命を落とした動物たちの亡霊かもしれない。
 しかし、"それ"はただの怪異ではなく、何かを警戒している。

「"それ"が警戒しているもの……?」

 えまの言葉に、透子は腕を組んで考え込む。

「"それ"自身が動物たちを怖がらせていたのではなく、もっと"別の存在"がいるということ?」

「そうかもしれません。でも、もし"それ"が敵じゃないのなら……。」

 えまは慎重にロイへ意識を向ける。
 ホワイトタイガーのロイは、相変わらず落ち着いていた。

 そして──

 『……あぶない。』

 えまの頭の中に、ロイの声が響いた。

「……ロイが"危ない"って……!」

 えまが顔を上げた瞬間だった。

 「バチッ!!」

 突如、鋭い音が響き渡る。

「っ!?」

 透子が素早くタブレットを確認する。

「赤外線カメラがまた干渉されてる……!」

「また"それ"が……?」

 しかし、その時──

 「カサ……カサ……」

 違う。

 今度の音は、明らかに"それ"とは別の気配だった。

 えまと透子は顔を見合わせる。

 そして──

「透子さん、今の、聞こえました?」

「……ええ。」

 音は、檻の奥から聞こえてきた。

「……ロイが警戒してるのは"それ"じゃない。"もう一つの影"が、まだいる。」

 透子は赤外線カメラを調整しながら、言葉を続けた。

「今まで"それ"が現れるときは、必ずカメラに干渉が起こっていた。でも、今の音が聞こえた瞬間、"それ"はまだ何もしていないのに、カメラがノイズを出した……。」

「つまり……"それ"とは別の何かがカメラに干渉している?」

「そう考えられるわね。」

 えまは、ロイへ再び意識を向ける。

 『……ちがう。これは……"しらないもの"。』

「……ロイも"知らない何か"がいるって……。」

「"それ"はこの動物園をずっと見守っていた存在。だけど、ロイが"知らない"と言うなら、"それ"とは別の侵入者がいる……。」

「でも、それは何のために?」

 透子はタブレットを慎重に操作しながら、映像を遡る。

 すると──

「……えま、これを見て。」

 透子が映し出したのは、数時間前の監視カメラの映像。

 そこには、檻の近くに"黒い影"が揺らぐ様子が映っていた。

 「……これが"それ"?」

「そう。でも、問題はその後よ。」

 透子は映像をさらに進める。

 すると、"それ"の後ろに──

 もう一つの影が、わずかに動くのが見えた。

「……っ!」

 えまと透子は、息をのむ。

 それは、"それ"とはまったく異なる動きだった。

 "それ"は、まるで何かを守るように静かに動いていた。
 しかし、もう一つの影は──不規則に、這うように動いていた。

「これ……"それ"とは別の存在ですよね?」

「ええ。大きさも動きも違う。」

 透子は画面を拡大し、影の形を詳しく分析した。

「……これは、人間の形をしていない。」

「じゃあ……やっぱり、動物……?」

「いいえ。"それ"とも違う、完全に"別のもの"よ。」

 えまの背筋が寒くなる。

「……この動物園には、"それ"とは異なるもう一つの影が存在している。」

「しかも、"それ"を怖がらせるほどの何か……。」

 この動物園に潜んでいたのは、"それ"だけではなかった。

 そして、その正体が明かされる日は、もうすぐそこまで迫っていた──。

(続く)
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