夜の動物園の異変 ~見えない来園者~

メイナ

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第1章

第5話『監視カメラの映像』

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「——監視カメラを確認しよう。」

 透子のその言葉に、えまはゴクリと唾を飲み込んだ。

 昨夜、動物たちが恐れた"何か"がいた場所。
 そこに、本当に"何か"がいたのか?
 それとも、ただの錯覚だったのか——。

(でも、錯覚なんかじゃない。)

 えまは、胸の奥に残る動物たちの恐怖を思い出す。
 彼らは確かに「何か」を感じ取っていた。
 その証拠が、監視カメラの映像に残っているはず——。

「園長、昨夜の監視カメラ、確認できますか?」

「ああ……ちょっと待ってくれ。」

 園長は警備室に入り、カメラの映像を巻き戻し始めた。
 モニターには、夜の動物園の映像が映し出される。

「ここのカメラは24時間動いてる。ただし、夜は自動で赤外線モードになる。」

「赤外線……。」

 えまと透子は、昨夜の時間帯に合わせて映像を食い入るように見つめた。

 ——そこには、昨夜のえまの姿があった。
 動物たちを見回り、ホワイトタイガーの檻の前で足を止める。

 その時——。

「……待て。」

 透子がモニターを指さした。
 園長が映像を一時停止する。

 ホワイトタイガーが、何かを見つめていた。
 その"視線の先"—— そこには、ぼんやりとした"影"が映っていた。

「……何これ。」

 えまの背中に、冷たい汗が伝った。

 人影のようで、人ではない。
 輪郭がぼやけていて、まるで霧の塊のようだった。
 しかし、それは確かに"そこに存在していた"。

「……これが、昨夜動物たちが怯えていた"何か"?」

 透子がモニターを指でなぞる。

「……園長、このカメラの記録を少し巻き戻せる?」

「わかった。」

 園長が映像を少し戻し、再生する。

 すると——影は、最初はどこにも映っていなかった。

 しかし、えまがホワイトタイガーの檻に近づいた瞬間——
 突如、ぼやけた影が"現れた"のだ。

「……出た。」

 透子の声が低くなる。
 それはまるで、えまがその場に来たことで反応したように見えた。

「これ……もしかして、私に気づいた……?」

 えまが息をのむ。

「可能性はあるな。」

 透子は腕を組んだまま、じっとモニターを睨む。

「通常、こういう"不可解な映像"はカメラのノイズや光の加減で発生することもある……けど、これは違う。」

「な、なんでそんなことが分かるんですか?」

「……普通のノイズなら、"ランダムな揺らぎ"になるはず。でも、この影……"意思"を持って動いているように見える。」

 えまの心臓が強く打つ。
 確かに、その"影"は、ただそこに浮かんでいるだけではない。
 ほんの僅かに、えまの動きに合わせて"揺らいでいた"。

「でも……そんなの、普通に見えなかったよ……。」

「肉眼では見えない。でもカメラには映る。」

 透子が目を細める。

「つまり、"可視光では捉えられない何か"ってことね。」

「そんな……。」

 透子は腕を組みながら、小さく息をついた。

「つまり、今のところ言えることは——」

 ・ "何か"は確実にそこにいた。
 ・ 肉眼では見えないが、赤外線カメラには映る。
 ・ えまが近づいた瞬間に現れた。

「……まるで、"お前を見ているぞ"って言われてるみたいだな。」

 園長の言葉に、えまはゾクリとした。

「でも……これって、一体……?」

 その時——。

 ——「カタンッ。」

 不意に、背後で何かが動く音がした。

「……え?」

 えまと透子、園長の三人が、一斉に振り向く。

 警備室のドアの前。
 そこに—— 何かが立っていた。

「……っ!!」

 えまの息が止まる。
 影が——ほんの一瞬だけ、揺らいで見えた気がした。

「……いる。」

 透子が低く呟く。

 えまは恐る恐る、一歩前に出る。

「……あなたは、誰?」

 誰に向けたのかも分からない問いかけだった。

 しかし、次の瞬間——
 突然、監視カメラのモニターがバチバチッと音を立ててノイズを走らせた。

「……っ!?」

 映像は乱れ、モニターがブラックアウトする。

「な、何が——?」

 えまが言葉を発しようとした、その時。

 耳元で、かすかな「囁き声」が聞こえた。

 ——「……見てるよ……」

「っっ!!!!!」

 えまの血の気が引いた。

「えま!!」

 透子が腕を引き、えまを警備室から引きずり出す。

「何!? 今の……!?」

「……"あれ"は、私たちが近づきすぎたのかもしれない。」

 透子の言葉に、えまは震えた。

(……私たちが、何かを探ろうとしたから……?)

 監視カメラの映像に映った"影"。
 それは、ただの"不可解な存在"ではなかった。

 ——"向こうも、こっちを見ている"。


 ---

  (続く)
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