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「足を入れるもの。魅せるもの。」
しおりを挟むスニーカーが欲しくてスポーツ用品店に訪れた。
冷房の効いた店内は
お父さん、お母さん、子供。
の構成が殆どを占めていて、もれなく子供がおねだりをするという構図になっていた。
目の前にあるスニーカーの長所をひとつひとつ述べ、未熟で鋭利な物欲を隠すかのように商品のメリットを説明する子供たち。
この時必死さがでてはいけないということをどこかで悟っているのか、冷静沈着に計画を進めていく。
大声をだしたり、露骨に機嫌を悪くした素振りを見せつけるのは最終手段なのだ。
8000円のサッカーシューズではなく1万円を超すものが欲しい男の子。
一緒についてきたらなんか自分もスニーカーが欲しくなってきて「おれも欲しい」と兄の緻密な計画を阻もうとしてくる弟。
学校で指定された白の靴をお洒落に履きこなしたくてアディダスの白をねだる女の子。
多分みんな欲しいものを家に持ち帰る。
ないということを知っているのだろうか。
あぁ。嫉妬だ嫉妬だ
僕には関係のないことだと思うようにしたらある出来事を思い出してしまった。
中学生の頃自転車が壊れた。
壊れてほしくない時に物は壊れる。
壊れてほしくないひとが大切に使うものが壊れる。
なんとか親に説明して、自転車屋で1番安いグレーのママチャリを買ってもらった。
お洒落な自転車はそれなりの対価を支払わなければならない。
これだけを言えば僕の自転車のミテクレはだいたい想像がつくだろうと思う。
当時好きだった人と遊ぶ約束をした休日、その買いたてのママチャリを乗って行ったら「なんでその自転車にしたん?」と少しニヤついた顔で言われた。
恥ずかしくて恥ずかしくて帰りたくなった。
この自転車を捨てたくなった。
でもそんなことはどれもできなかったから、笑ってごまかして話を変えた。
多分彼女との待ち合わせ場所に現れた僕は風に吹かれて少し笑い恍惚な表情を滲ませていたと思う。
「新しいチャリこうてん!」
みたいなノリでその場に現れてしまったことを未だに後悔している。
あの時の感情をそのままの温度で今も携えているのかを考えるとそれは違う気がしたが楽しい思い出ではないということは今現在の笑い方で笑いながら言える。
僕の目当てのプーマのスニーカーはちっとも安くなっていなくて帰ることにした。
試し履きだけして、あとはネットで探そうかと思ったが、店員に話しかけられたらどんな表情で声をだしたらいいのかわからなかったのでやめた。
店を出てから気づいたことがひとつある。
あの子供たちはみんな綺麗なちゃんとした靴を履いていた。
ということ。
この中で1番醜いのは誰や、ぼくや。
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