268 / 271
ラスト・コンテクスト Part2
プリマキナ・オルソグナス(10)
しおりを挟む
デル・ゾーネの一行は防御魔法を展開した。
手負いのウィーと、童仙のもとへ向かっていたカップは後方から、それぞれ透明の壁と重力波を発生させる。
その前方で、メイは強力な風圧を相手に向けていた。
U.J.Iの二人――ムサシは“蜘蛛”の複眼を目がけて二丁の銃撃を行い、フランシスは脚の関節部に成人男性の頭よりも少し大きなサイズの岩を投擲していた。
ムサシの銃撃は複眼を破壊していたが、ソレらはすぐに再生する。
しかし絶えず破壊するコトで、敵の視界を妨害はできていたようだった。
その証拠に敵は蜘蛛の頭部を動かし弾丸の雨を避けようとするが、ムサシの弾幕はソレを許さない。
フランシスの投擲はその頭部よりも激しく動く脚部のため、なかなか命中はしなかったが、徐々にそのエイムは正確になってきていた。
超高性能頭脳がそのフィードバックした計算結果を、人間の肉体へと素早く電気信号を介して伝達する。
何投擲めかの一撃が、蜘蛛の左前脚の第一関節にヒットした。
「入った!」
フランシスが力強く命中を宣言する。
蜘蛛はバランスを崩し、大きく左脚側に傾いた。
右中脚などは地面から離れつつある。
「コケろッ……!」
ツヅキが願う。
しかし地面を滑りながらも蜘蛛は一瞬体勢だけを静止して、左前脚を引きずり右中脚は掲げたまま、云わばその二本への対応を放棄して疾走を続けようとした。
「させるか。ね、ブレーズちゃん」
ブレーズはミサトにコクリと頷くと、その“声”を発した。
超高密度に圧縮された音波が、音速で敵へと向かう。
一直線に、その掲げられた右中脚に向かって。
音波が炸裂する。
敵は再度バランスを崩し、更に大きく掲げることになった右中脚にその巨体を引っ張られた。
右後ろ脚も地面を離れる。
もはや相手には転倒するか、姿勢を保つために右前脚とその他の脚部で静止するしかないように見えた。
しかし次の瞬間、相手は右中脚を自ら“捨てた”。
分離され、その衝撃のみを慣性の力で一人抱え、回転しながら右中脚が吹っ飛んでいく。
「ウソだろ……!?」
ムサシが言う。
敵はむしろ身体を軽くし、より加速した。
バランスの崩れはあるが、その速度を弱めるコトはない。
「アレが機械の動きですか……?」
皆の後方でアサヒに支えられて何とか座っている童仙が呟く。
その直後、敵はウィーの透明の壁に激突し、そして皆のいる森へと激突した。
手負いのウィーと、童仙のもとへ向かっていたカップは後方から、それぞれ透明の壁と重力波を発生させる。
その前方で、メイは強力な風圧を相手に向けていた。
U.J.Iの二人――ムサシは“蜘蛛”の複眼を目がけて二丁の銃撃を行い、フランシスは脚の関節部に成人男性の頭よりも少し大きなサイズの岩を投擲していた。
ムサシの銃撃は複眼を破壊していたが、ソレらはすぐに再生する。
しかし絶えず破壊するコトで、敵の視界を妨害はできていたようだった。
その証拠に敵は蜘蛛の頭部を動かし弾丸の雨を避けようとするが、ムサシの弾幕はソレを許さない。
フランシスの投擲はその頭部よりも激しく動く脚部のため、なかなか命中はしなかったが、徐々にそのエイムは正確になってきていた。
超高性能頭脳がそのフィードバックした計算結果を、人間の肉体へと素早く電気信号を介して伝達する。
何投擲めかの一撃が、蜘蛛の左前脚の第一関節にヒットした。
「入った!」
フランシスが力強く命中を宣言する。
蜘蛛はバランスを崩し、大きく左脚側に傾いた。
右中脚などは地面から離れつつある。
「コケろッ……!」
ツヅキが願う。
しかし地面を滑りながらも蜘蛛は一瞬体勢だけを静止して、左前脚を引きずり右中脚は掲げたまま、云わばその二本への対応を放棄して疾走を続けようとした。
「させるか。ね、ブレーズちゃん」
ブレーズはミサトにコクリと頷くと、その“声”を発した。
超高密度に圧縮された音波が、音速で敵へと向かう。
一直線に、その掲げられた右中脚に向かって。
音波が炸裂する。
敵は再度バランスを崩し、更に大きく掲げることになった右中脚にその巨体を引っ張られた。
右後ろ脚も地面を離れる。
もはや相手には転倒するか、姿勢を保つために右前脚とその他の脚部で静止するしかないように見えた。
しかし次の瞬間、相手は右中脚を自ら“捨てた”。
分離され、その衝撃のみを慣性の力で一人抱え、回転しながら右中脚が吹っ飛んでいく。
「ウソだろ……!?」
ムサシが言う。
敵はむしろ身体を軽くし、より加速した。
バランスの崩れはあるが、その速度を弱めるコトはない。
「アレが機械の動きですか……?」
皆の後方でアサヒに支えられて何とか座っている童仙が呟く。
その直後、敵はウィーの透明の壁に激突し、そして皆のいる森へと激突した。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました
杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」
王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。
第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。
確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。
唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。
もう味方はいない。
誰への義理もない。
ならば、もうどうにでもなればいい。
アレクシアはスッと背筋を伸ばした。
そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺!
◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。
◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。
◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。
◆全8話、最終話だけ少し長めです。
恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。
◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。
◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03)
◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます!
9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる