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ラスト・コンテクスト Part2

プリマキナ・オルソグナス(2)

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土煙の中、一行には蜘蛛のシルエットしかまだ見えなかった。
が、

何かが動作し始めた機械音が響く。
ツヅキが言った。

「何だ……?」

皆が驚きのあまり、危機感を想起できないでいた。
しかしその音に“詳しい”U.J.Iの一行は、最も早くその状態を脱した。

「ウィー! 壁で防御して!」

「は、はぃい!」

U.J.Iの一行が事態を察知し、その心状が言葉よりも先に身体に現れたのを見て、メイは心を読んだ。
そして、ウィーに指示したのだった。

ウィーが壁を展開するのが一瞬早かったお陰で、皆は穴だらけにならずに済んだ。
透明の壁に、まるで土砂降りの雨のように打滴音が響く。
実際、透明の壁の向こう側には虹色の波紋が無数に広がった。

「やっぱり、今のはガトリングの起動音か。ウィーのお嬢ちゃんに助けられたな」

「ああ、あとメイちゃんな」

フランシスは既に自らの“弾丸”を手の中で転がしている。
ムサシも二丁の拳銃を抜いていた。

全員が攻撃態勢に入る。

壁、そして土煙の向こうでまたも音が響いた。
だが次は、機械の軋む音が強い。
蜘蛛の影の、半分が見えにくくなった。

次の瞬間、煙と壁を突き破り、鈍く光る蜘蛛の脚が飛びでてくるのと、自らの魔力で作った壁を破壊された反動でウィーが吹き飛ぶのは同時だった。
ウィーは皆から勢いよく離され、後方の樹の一本にブチ当たる。

「かはっ……!」

「ウィー!」

メイが叫ぶが、眼前の敵への対処を放りだすワケにも行かなかった。
巨体が皆の前へ、煙を抜けて現れる。

大きな、機械の蜘蛛だった。
いや、機械として見える駆動部はごく僅かで、そのほとんどは金色に鈍く輝く金属合板で覆われている。

蜘蛛は身体を捩らせると、天を仰いで甲高い叫び声のような雄たけびを上げた。
そして皆の前に首を伸ばした。

8つの眼球から、空中に映像が投影される。
軍服に身を固めた男が、操縦桿を握って座っている姿が映しだされた。

「四ヶ国の諸君! 実にご苦労様です。我々は残る一ヶ国、テラ・ドス・ヴェルメロスの“ララ”率いる旅団です。私は旅団長のメストール・マニプルドスと申します」

「は?」

疑問を呈したのはオクルスだ。
アルマージュを除くヴェルメロスの一行も、お互いを、特にララを見た。

「どういうコト?」

「わかりません……!」

レインスの問いかけに、ララが申し訳なさそうにぶんぶんと首を振って答える。
メストールが続けた。

「“鍵”をめぐっての戦い、本当にご苦労様でした! 後は我々にお任せください。鍵を我らが母国に持ち帰らせていただきます。何卒、ご抵抗などはお考えになさらず、どうか平穏無事にお見送りいただけることを心より願っております」
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