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ラスト・コンテクスト Part1

大文字の夜に(28)

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「ソレで? え~っと、つまりだな。あんたは異世界の管理人?」

「だからさ、そう言ってるじゃん。その、一員」

酔ったムサシが、ミサトに絡んでいた。

皆は焚き火やヴェルメロスの水銀灯、U.J.Iの蛍光触媒やデル・ゾーネの一行が点した魔術光の周りに数名ずつ集まり、飲食を楽しんでいる。

『まあとにかく、まだまだ夜は長い! 積もる話もありそうだし、飲みながら話そうぜ!』

『いいぞいいぞ!』

という、ムサシの発案にアルマージュが乗った結果だった。
ムサシは捜査官時代を、U.J.Iの一行として共にいる中で思いだしたのか『未成年は飲めないぞ』と付け加えたが。

「もう一回言ってくれないか? いや俺はわかってるんだが、コッチのボウズはわかってねえみたいだからさ」

「いやいや、わかってるって!」

ムサシが傍らのアルマージュをダシに使う。

「う~ん、僕も酔いが回ってきたみたいだ。僕からももう一回頼むよ」

「遠藤さん、いや遠藤。お前な~」

もう仲が深まり、ミサトが遠藤を呼び捨てる。

「まあいいや。私もドコまで話したか忘れちゃった。
だから、私は“異世界管理機関”の一員なワケよ。まあ管理できてないんだけど」

「その機関が『オータム・アトラス』?」

遠藤が問う。

「そうそう、『オータム・アトラス(8月の世界地図)』。で、この世界は異世界番号283。“キョート”って国の集まりがポータルに使われやすいから、“キョート”研究対象283号、通称『京研283号』とも呼ばれてる異世界ね」

「その呼び名云々の辺りで、もうワケわかんなくなるんだよなあ」

ムサシが酒をもう一杯、胃袋に流し込む。

「で、さっき私と同じ“異世界人”の皆には話したけど、この異世界に関しては、私たちの“元の世界”にいつ戻っても、コチラの世界にきた瞬間から異世界で通過した時間分後の時間軸まで、いつでも任意のタイミングで戻れるワケよ」

「オレはココでわからん」

アルマージュもモクテル、酒を模した疑似カクテルを一杯ぐびりとやった。

「つまり、例えばウチで言えばカオルちゃんが、この世界にきた瞬間の元の世界の自分に戻るコトもできるし、或いはこの世界にきてもう何ヶ月も経過しているけど、その何ヶ月も経過した後の元の世界の自分に戻るコトもできるってコトだね」

「その通り。で、私は戻る方法も知ってる」

「でも、ソレって都合良すぎない?」

遠藤が解説してミサトが肯定したトコロに、手に食べ物を持ったカオルがやってきた。

「何持ってるんだい? カオルちゃん」

「よく焼けた骨付きチキンで~す。デル・ゾーネさんのブース……いやブースじゃあないか。アソコでメイドさんが料理やってんの。美味しいよ~」

カオルは四人の輪に入って、座った。

「でさあ、あまりにもこの異世界、都合良すぎない?」

「そりゃあ、私の選んだ異世界だもの」

カオルが鶏肉を一齧りする。
ミサトも酒を一口。

「自分で選んできたんでしたっけ? 職権乱用」

「お嬢ちゃんも、大人になると逃げだしたく……逃げださなきゃあいけない時があるってもんよ」

「最初は南山城国にきたかったんでしたっけ?」

「そ。この子みたいなイケメンだらけでしょ」

ミサトが遠藤を示す。

「お褒めに預り恐縮だね」

「え? でもあんた女だろ? ショットガンの天使ったら有名だぞ」

ムサシがほろ酔いながらブッ込む。

「え? そうなのか?」

「え? やっぱそうだったんですか?」

ミサト、カオルが次々問いかけた。

「今はまた、そうだね。しばらくは覆いをせず自分の茶園を育ててたから、男の子だったんだけれど。今年のカオルちゃんの覆いは効いたよ。というか、ソレよりもソチラの話を」

「ええ~、また後でゆっくりお願いしますよ」

「ま、いっか。話の続きだけど、アソコのお嬢ちゃんのせいでパクスにきちゃったのよね」

皆がデル・ゾーネの、メイの方を向いた。

「私も何故“ズレちゃったか”わかったのは、あの娘が魔術回路に介入したからって、さっき知ったからだけど。まあお陰で、パクスのアイツらとも楽しかったけどね」

「過去形!」

ドコからともなくカトリーヌが大声を上げた。

「地獄耳め」

「いやー。ソレにしても都合の良い異世界ですよ」

「ソレ洒落? もっと都合の良い異世界もあるよ。“異世界人”なら転移した瞬間最強とかね」

「職権乱用して行くなら、ソッチの方が良くないですか?」

「そんなの面白くないじゃん。少なくとも、私は面白いとは思わないかな」

「オレはソッチの方が良いな」

通りがかりに、ツヅキが一言言って行った。
カオルが総括する。

「歳の差ですかね」

「あんた、割とハッキリ言うわよね。嫌いじゃあないわ」
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