251 / 271
ラスト・コンテクスト Part1
大文字の夜に(24)
しおりを挟む
「ツヅキ君!」
カトリーヌとの闘いを終え、中腹の広場にいち早く戻った、メイが駆け寄る。
ツヅキは座っていたが、右手で“巻物”を掲げてみせた。
「やったやった! 私たちが“所有者”ね」
メイにしては、無邪気で子供らしい喜びの表現だった。
心底からのモノだろう。
ツヅキの傍らには、まだ気を失っているララと座り込んでいるオクルスがいた。
メイはソチラにも問いかけた。
「大丈夫?」
「ああ。ララさんは気を失ってるけど、ソレだけだよ。おめでとさん」
「ありがとう。ギリギリだったようね」
「ベストは尽くしたよ。今は休憩。ソレよりも……」
オクルスが“鍵”をチラリと見やる。
「中身、見るんだろ?」
「ええ、もちろん」
メイも鍵に目を移したのち、オクルスを見て言った。
「もちろん、私たちが先だけれど」
「そりゃあそうさ。でも今んトコ俺たちの他には鍵の近くには誰もいないし、次には見せてもらえるかな……と」
「ま、二等賞の特権ね」
「やりぃ」
ツヅキはメイに鍵を差しだす。
「ほれ、読んじゃって」
「一緒に読みましょ」
メイは鍵を手に取ると、ツヅキの横に座った。
巻物の帯を解き、展開する。
その反応は、オクルスが思ったモノとは違っていた。
メイとツヅキの顔が曇っていく。
メイが言った。
「……何よコレ。コレが南蛮への対抗策である“鍵”なの?」
◇◇◇
夜はまだ明けていない。
彼らの“争奪戦”は陽が沈んですぐに始まった。
戦いは決して短くはなかったが、終わった頃には、まだ夜は更けていく一方の時間帯だった。
戦いの間中は、天空の“大文字”の無数の篝火がその戦場を煌々と照らしていたため、昼間同然の明るさが確保されていた。
しかし、中腹を少し下がったトコロのこの場所は既に真っ暗だった。
ソコで彼らは、焚き火を囲んでいた。
「ソレで? ソレが“鍵”の内容だってのか?」
ムサシが問う。
メイが答えた。
「そうよ。自分の目で見る?」
メイは巻物をU.S.Jの一行の方に投げて渡した。
ジュディが腕を“延ばして”受け取る。
思わず、ムサシがメイに言った。
「オイオイ。“鍵”だぞ」
「内容を見れば、こんな扱いも当然よ」
「もう全員見たのか?」
フランシスがそう言い、皆を見渡した。
アルマージュが答える。
「ああ、見たよ。俺たちはな」
「私たち、南山城国はまだだけど……内容については聞いたわ」
アサヒが巻物を開く。
「でも内容通りだとしたら……“所有者”のデル・ゾーネさんたちはどうするんですか?」
ノワールが問いかける。
二度の爆発を、魔力で強化しているとはいえ生身で凌いだパクスの一行を、オクルスは今だに不思議に思っていた。
「さあね。個人的には破壊したいトコロだけれど、“所有権”が確定した“鍵”を破壊するってのは、前例がないしね。できるのか、わからないわ」
「破壊、私も賛成ですぅ」
「まあそもそも、破壊していいのかわからないけどね」
メイが肩をすくめる。
U.S.Jの一行は、巻物の内容を読み進めていた。
カトリーヌとの闘いを終え、中腹の広場にいち早く戻った、メイが駆け寄る。
ツヅキは座っていたが、右手で“巻物”を掲げてみせた。
「やったやった! 私たちが“所有者”ね」
メイにしては、無邪気で子供らしい喜びの表現だった。
心底からのモノだろう。
ツヅキの傍らには、まだ気を失っているララと座り込んでいるオクルスがいた。
メイはソチラにも問いかけた。
「大丈夫?」
「ああ。ララさんは気を失ってるけど、ソレだけだよ。おめでとさん」
「ありがとう。ギリギリだったようね」
「ベストは尽くしたよ。今は休憩。ソレよりも……」
オクルスが“鍵”をチラリと見やる。
「中身、見るんだろ?」
「ええ、もちろん」
メイも鍵に目を移したのち、オクルスを見て言った。
「もちろん、私たちが先だけれど」
「そりゃあそうさ。でも今んトコ俺たちの他には鍵の近くには誰もいないし、次には見せてもらえるかな……と」
「ま、二等賞の特権ね」
「やりぃ」
ツヅキはメイに鍵を差しだす。
「ほれ、読んじゃって」
「一緒に読みましょ」
メイは鍵を手に取ると、ツヅキの横に座った。
巻物の帯を解き、展開する。
その反応は、オクルスが思ったモノとは違っていた。
メイとツヅキの顔が曇っていく。
メイが言った。
「……何よコレ。コレが南蛮への対抗策である“鍵”なの?」
◇◇◇
夜はまだ明けていない。
彼らの“争奪戦”は陽が沈んですぐに始まった。
戦いは決して短くはなかったが、終わった頃には、まだ夜は更けていく一方の時間帯だった。
戦いの間中は、天空の“大文字”の無数の篝火がその戦場を煌々と照らしていたため、昼間同然の明るさが確保されていた。
しかし、中腹を少し下がったトコロのこの場所は既に真っ暗だった。
ソコで彼らは、焚き火を囲んでいた。
「ソレで? ソレが“鍵”の内容だってのか?」
ムサシが問う。
メイが答えた。
「そうよ。自分の目で見る?」
メイは巻物をU.S.Jの一行の方に投げて渡した。
ジュディが腕を“延ばして”受け取る。
思わず、ムサシがメイに言った。
「オイオイ。“鍵”だぞ」
「内容を見れば、こんな扱いも当然よ」
「もう全員見たのか?」
フランシスがそう言い、皆を見渡した。
アルマージュが答える。
「ああ、見たよ。俺たちはな」
「私たち、南山城国はまだだけど……内容については聞いたわ」
アサヒが巻物を開く。
「でも内容通りだとしたら……“所有者”のデル・ゾーネさんたちはどうするんですか?」
ノワールが問いかける。
二度の爆発を、魔力で強化しているとはいえ生身で凌いだパクスの一行を、オクルスは今だに不思議に思っていた。
「さあね。個人的には破壊したいトコロだけれど、“所有権”が確定した“鍵”を破壊するってのは、前例がないしね。できるのか、わからないわ」
「破壊、私も賛成ですぅ」
「まあそもそも、破壊していいのかわからないけどね」
メイが肩をすくめる。
U.S.Jの一行は、巻物の内容を読み進めていた。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
私、幸せじゃないから離婚しまーす。…え? 本当の娘だと思っているから我慢して? お義母さま、ボケたのですか? 私たち元から他人です!
天田れおぽん
恋愛
ある日、ふと幸せじゃないと気付いてしまったメリー・トレンドア伯爵夫人は、実家であるコンサバティ侯爵家に侍女キャメロンを連れて帰ってしまう。
焦った夫は実家に迎えに行くが、事情を知った両親に追い返されて離婚が成立してしまう。
一方、コンサバティ侯爵家を継ぐ予定であった弟夫婦は、メリーの扱いを間違えて追い出されてしまう。
コンサバティ侯爵家を継ぐことになったメリーを元夫と弟夫婦が結託して邪魔しようとするも、侍女キャメロンが立ちふさがる。
メリーを守ろうとしたキャメロンは呪いが解けてTS。
男になったキャメロンとメリーは結婚してコンサバティ侯爵家を継ぐことになる。
トレンドア伯爵家は爵位を取り上げられて破滅。
弟夫婦はコンサバティ侯爵家を追放されてしまう。
※変な話です。(笑)
ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました
杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」
王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。
第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。
確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。
唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。
もう味方はいない。
誰への義理もない。
ならば、もうどうにでもなればいい。
アレクシアはスッと背筋を伸ばした。
そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺!
◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。
◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。
◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。
◆全8話、最終話だけ少し長めです。
恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。
◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。
◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03)
◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます!
9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる