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ラスト・コンテクスト Part1

大文字の夜に(14)

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全員が、混戦の泥濘の中に突入していた。
そんな中、最初に空を駆けるソレに気づいたのは、カオルに付き添っている方の童仙だった。

「……そんなバカな!? こんなに早く辿り着けるコトはないハズなのに!?」

カオルが、そして次に近くにいた遠藤も天を仰ぐ。
その動作は、徐々に全員に伝播していった。

「皆、ボケっとオレたちを見てるな」

ツヅキが言った。
メイが下方に目をやる。

「思ったより早く見つかっちゃったわね」

「はは~、手ぇ振っときますぅ」

ウィーがふりふりと手を振る。
皆が目を見開いて彼女らを見ていた。


◇◇◇


「そろそろ一分経ったか?」

祭壇に置いてけぼりを食らって、座り込んでいたツヅキが言った。
同じく置いてけぼりを食らったウィーは、頭の上にハテナを浮かべるような顔をして頭を傾ける。

そう、デル・ゾーネの一行は、南山城国そして他の国々から完全に置いていかれてしまっている。

「もう何も聞こえなくなっちまったな。皆、遠くに行っちゃったか。カップのためにも、早く行かないと、だが」

「どおやって行くかですねぇ」

「一分は考えるには十分だったわ」

近くの樹に寄りかかって休んでいたメイが、目を開いた。
そして二人に近づく。

「進行方向に背を向けて」

「何するつもりだ? 進行方向?」

「相変わらず勘が鈍いわね」

「そりゃ心を読める方に比べると」

「はっは~ん。私はもうわかりましたよぉ、ツヅキさん」

ウィーはメイに接近した。

「……記念写真でも撮るつもりか? ふざけてるヒマはないぞ」

「前にやったコトの応用よ」

メイが杖茶杓を取りだし、手の中で反転させた。

「ソレかぁ」

ようやく思いついたのか、そう言って、ツヅキもメイに近寄る。

「ただ、この角度だとかなり上だぞ。ソコからは……」

ツヅキは視界の端に動く物を感じ、ウィーの方を見た。
ウィーも杖を取りだしており、ソレを顔の横にふりふり掲げながら、自慢気な表情をツヅキに返す。

「安心だ」

「行くわよ」

メイの杖が、光を放った。


◇◇◇


「アレは、かつて私の攻撃を避けた時の……!」

童仙が言った。
カオルはソレを聞いて、合点した。

以前に、童仙が樹の上からメイに斬りかかった時、メイは自らに魔力を放出して“自らを吹き飛ばす”コトでその攻撃を避けた。
ソレを使って、今度は祭壇からココまでメイらは自分たち三人を吹き飛ばしたのだ。

「でも、あのままじゃあ……」

カオルが呟く。
そう、彼らの飛距離は何処に行くにしても中途半端になりそうに見えた。しかし、

空中でウィーが杖を振るう。
既に落下運動に入りつつあった三人が、空中で何かに小さくバウンドし、“滑り”だした。

コレも、南山城国の面々にはデジャヴを想起させる光景だった。
ギリギリで“ゲート”に入られた際、同じような光景を目にしている。

ウィーは空中に、柔らかくしかし直線で傾斜のある、滑り台を成型していた。
もちろん、魔力によって作られた透明なソレだ。

地上の皆が、デル・ゾーネの三人が真っ直ぐにカップへと滑空しているコトに気づくのに、時間はかからなかった。
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