カメリア・シネンシス・オブ・キョート

ラスト・コンテクスト Part1

大文字の夜に（１１）

一方、“円”の外周付近。
片方の端ではララとオクルスが、ジュディたちによって撃墜されたレインスとアルマージュを助けようと戻っていた。

しかしソコを、ジュディたちは弾丸を装填しながら迎え撃とうとしている。
オクルスらにはそのコトがわかっていても、味方たちを助けるために戻るしかなかった。

そして、彼らに近づく影がもう一つ。
龍之介だ。

先程まではカップの重力攻撃を警戒し、円の外側を走りながらオクルスたちに向かっていた龍之介だったが、目聡くカップが遠藤に攻撃されたのを視認していた。
カップは樹に勢いよく打ちつけられ、しばらくは体勢が立て直せそうもない。

ソレを確認し、龍之介は円の内部に侵入するコトにした。
円の内部は樹々や草が一度押しつぶされたため、円の外側ほど身を隠せる物がないが、ジュディやオクルスたちは龍之介の射程距離に入ってしまうまで、彼に気づくコトができなかった。

龍之介がいなければジュディたちはオクルスとララも迎撃できていただろう。だが

龍之介の放った小刀が、ジュディに真っ直ぐに向かう。
ジュディはその飛来を察知したものの、かわし切れずに右肩に食らってしまった。

ジュディの身体は分離して操れる機械だ。
ジュディは咄嗟に右肩を分離して、小刀が刺さろうとする力を逃がした。
しかしその代償として、右肩は小刀を弾きつつもドコかに飛んで行ってしまった。

アサヒが龍之介に『50℃弾』を数発、撃った。
接近する龍之介のスピードを殺すためだが、弾丸はあえなくかわされるか太刀で斬り落とされてしまう。

その龍之介に、命中した弾丸があった。
ララの『100℃弾』だ。

龍之介には、カオル達と二手に分かれる直前に『90℃弾』が撃ち込まれていたが、ララはソレを更に加速した。
龍之介にジュディらを倒させるためだ。

そもそも、円の外周に沿って向かっていた龍之介からはオクルスたちの方が攻撃するには近かった。
しかしジュディらを先に攻撃したのは何故か。

龍之介はヴェルメロスと協力して、ヴェルメロスがその“茶”の正体を知っているU.J.Iを先に潰した方が良いと判断したからだ。
つまり、龍之介の中では先程の“問答”がまだ生きていた。

更に、現在の場ではU.J.Iの方がヴェルメロス側を押しつつあるコトもわかっていた。
よって、U.J.Iを始末した後に手負いのヴェルメロスを圧倒すればよいと判断したのだった。

そして、ララは龍之介のその判断を利用した。
もちろん、龍之介のシナリオ通りにコトが進めば、結局はその“利用”も最終的には不利になるのだが。

ソレ以上に、龍之介がジュディの“茶”の力を読めていないコトもわかっていた。
ララのシナリオでは、潰し合うのはジュディと龍之介だった。
『100℃弾』でスピードが上がった分、龍之介のパワーは下がっていた。