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ラスト・コンテクスト Part1
大文字の夜に(6)
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「キミと二人で飛ぶのは二回めだね」
遠藤は散弾を装填しながら、カップに話しかけた。
その両足は器用に、木々から木々へと遠藤を移動させている。
「そ、そうですね。で、でも今回は追われる者の弱みはありません」
カップは樹々の少し上を、“鍵”へと“落ちて”いた。
二人はほぼ並行移動している。
遠藤が散弾を放った。
散弾はカップの前でその弾道を、直角に変化させて落下した。
両者移動しながらなので、相対的にカップの斜め後方下に散弾が弾かれたように見える。
カップも杖を振る。
遠藤の前方の樹が重力にひしゃげるが、遠藤はその樹を素早く迂回した。
「おっと、今のは危なかったね」
「……」
「ねえ、いつまでコレを繰り返す気かな? キミ、何か企んでるよね?」
カップは黙ったままだった。
ちらりと背後を見る。
三ヶ国が迫りつつあった。
「キミのこの戦法のせいで、もうすぐ後続が追いつきそうだ。ただ、いまいちキミの狙いがわからない。追いつかれたら、お互いにとって不利だよ」
「お、追いつかれそうなのは、あ、貴方のせいでもあります。で、でももうあ、貴方もわかってるんじゃあないですか?」
「うん。キミは追いつかれたいんだよね」
遠藤がまたも散弾を放つ。
同じようにカップは弾いた。
「正直、ソレでどうするのかを見たい気持ちはある。とは言え、僕もこの速度で移動するのが精一杯で、このままじゃあソレを見ざるを得ないってのが正しいけれど」
カップが樹をねじ倒す。
遠藤も先程と同じように避けた。
「でも僕の考えによると、後続に追いつかれると僕ら双方にとって不利だけど、どう考えてもキミの方が僕よりもちょっと不利だ。僕はこの『100℃弾』で強化されたスピードでも、武器が物理的実体を持った機構だからね、パワーの低下には限界がある。でも」
遠藤が散弾を放つ。カップが弾く。
「キミはスピードを強化した分、もろに魔力のパワーが低下しているハズだ。僕と違って、後続には抵抗できないよ」
「……」
カップが樹を倒す。遠藤は避けた。
「そ、ソコまでわかってて、ま、まだわからないんですか?」
「?」
「も、もう少しか、考えてみてください。だとしたら、わ、私が仮に先に“鍵”に辿り着いたとしても、ソコを追いつかれて最初からつ、詰んでるとは思いませんか?」
「どういうコトだい?」
「わ、私がスピード強化型の弾丸を受けてるなら、ど、どうしてそのスピードで貴方を補足して攻撃しないんでしょう? 何故、貴方の前方の樹々をただ、た、倒すしかできないんですか?」
「……」
カップは再度後方を見た。
更に三ヶ国が近づいている。
遠藤も勢いよく、後方を振り返った。
そしてカップを、目を見開いて見た。
「わ、私のこの“移動”は移動に見えて、ら、“落下”です。スピードじゃあありません。この速度は重力魔法の、魔力の強さに依存しています」
マズい。
遠藤は前方の樹々を確認し、ルートを至急探した。
回避ルートを。
しかしカップが前方の樹をまたもねじ倒し、そのルートをいくつか潰す。
「……キミに撃ち込まれているのは『100℃弾』とかじゃあない。『50℃弾』だね。だから、僕のスピードに追いついて僕自体を攻撃してこれなかった」
「そうです。わ、私は最初から“鍵”を狙っていたんじゃあありません。“皆さん”です」
「くっ……」
遠藤はまだ生きている回避ルートを選択したが、間に合わなかった。
なにせカップが“爆心地”なのだ。
三ヶ国の射程距離に二人が入った時、三ヶ国もまたカップの射程距離内に入ってしまった。
カップは魔力を開放した。
遠藤は散弾を装填しながら、カップに話しかけた。
その両足は器用に、木々から木々へと遠藤を移動させている。
「そ、そうですね。で、でも今回は追われる者の弱みはありません」
カップは樹々の少し上を、“鍵”へと“落ちて”いた。
二人はほぼ並行移動している。
遠藤が散弾を放った。
散弾はカップの前でその弾道を、直角に変化させて落下した。
両者移動しながらなので、相対的にカップの斜め後方下に散弾が弾かれたように見える。
カップも杖を振る。
遠藤の前方の樹が重力にひしゃげるが、遠藤はその樹を素早く迂回した。
「おっと、今のは危なかったね」
「……」
「ねえ、いつまでコレを繰り返す気かな? キミ、何か企んでるよね?」
カップは黙ったままだった。
ちらりと背後を見る。
三ヶ国が迫りつつあった。
「キミのこの戦法のせいで、もうすぐ後続が追いつきそうだ。ただ、いまいちキミの狙いがわからない。追いつかれたら、お互いにとって不利だよ」
「お、追いつかれそうなのは、あ、貴方のせいでもあります。で、でももうあ、貴方もわかってるんじゃあないですか?」
「うん。キミは追いつかれたいんだよね」
遠藤がまたも散弾を放つ。
同じようにカップは弾いた。
「正直、ソレでどうするのかを見たい気持ちはある。とは言え、僕もこの速度で移動するのが精一杯で、このままじゃあソレを見ざるを得ないってのが正しいけれど」
カップが樹をねじ倒す。
遠藤も先程と同じように避けた。
「でも僕の考えによると、後続に追いつかれると僕ら双方にとって不利だけど、どう考えてもキミの方が僕よりもちょっと不利だ。僕はこの『100℃弾』で強化されたスピードでも、武器が物理的実体を持った機構だからね、パワーの低下には限界がある。でも」
遠藤が散弾を放つ。カップが弾く。
「キミはスピードを強化した分、もろに魔力のパワーが低下しているハズだ。僕と違って、後続には抵抗できないよ」
「……」
カップが樹を倒す。遠藤は避けた。
「そ、ソコまでわかってて、ま、まだわからないんですか?」
「?」
「も、もう少しか、考えてみてください。だとしたら、わ、私が仮に先に“鍵”に辿り着いたとしても、ソコを追いつかれて最初からつ、詰んでるとは思いませんか?」
「どういうコトだい?」
「わ、私がスピード強化型の弾丸を受けてるなら、ど、どうしてそのスピードで貴方を補足して攻撃しないんでしょう? 何故、貴方の前方の樹々をただ、た、倒すしかできないんですか?」
「……」
カップは再度後方を見た。
更に三ヶ国が近づいている。
遠藤も勢いよく、後方を振り返った。
そしてカップを、目を見開いて見た。
「わ、私のこの“移動”は移動に見えて、ら、“落下”です。スピードじゃあありません。この速度は重力魔法の、魔力の強さに依存しています」
マズい。
遠藤は前方の樹々を確認し、ルートを至急探した。
回避ルートを。
しかしカップが前方の樹をまたもねじ倒し、そのルートをいくつか潰す。
「……キミに撃ち込まれているのは『100℃弾』とかじゃあない。『50℃弾』だね。だから、僕のスピードに追いついて僕自体を攻撃してこれなかった」
「そうです。わ、私は最初から“鍵”を狙っていたんじゃあありません。“皆さん”です」
「くっ……」
遠藤はまだ生きている回避ルートを選択したが、間に合わなかった。
なにせカップが“爆心地”なのだ。
三ヶ国の射程距離に二人が入った時、三ヶ国もまたカップの射程距離内に入ってしまった。
カップは魔力を開放した。
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