カメリア・シネンシス・オブ・キョート

龍騎士団茶舗

文字の大きさ
上 下
232 / 287
ラスト・コンテクスト Part1

大文字の夜に(5)

しおりを挟む
上空の「大」を構成している篝火の一つ一つに照らされている森の中に、マズルフラッシュや魔力の閃光が、時に蒸気に乱反射しながら煌いていた。

U.J.I、ジュディは木々の間を駆けながら、拳銃を持った両腕を分離してリーチを伸ばし、U.J.I一行の両サイドを疾走しているパクスとヴェルメロスの一行を迎撃している。

基本的には全員『100℃弾』でスピードを強化しているが、適切なタイミングで『50℃弾』その他の弾丸を混じえるコトで、戦局を覆そうとしていた。

具体的には、例えばジュディの場合、腕のリーチが伸びて敵に弾丸を撃ち込む際には

「100、いや『90℃弾』を!」

「はい!」

アサヒがジュディの胴体に弾丸を撃ち込む。
迎撃が一時的に終わると改めて『100℃弾』を撃ち込み、腕が装弾のためにジュディに戻ってくる。

左手はパクスのカトリーヌを主に狙っていたが、この攻撃は有効だった。
カトリーヌは弾丸を弾き返しつつも、その走りを邪魔される。

「ちっ、鬱陶しいですねっ!」

しかし

「どうした! 俺とは相性が悪いんじゃあねえか? U.J.Iの機械のお姉さん!」

アルマージュには押されていた。
『審査弾』で完全に読まれた上での戦闘を強いられている。

「玉露寄りのかぶせ茶なのはいいけど、煎茶寄りの俺とパワー比べは良くないぜっ! 品種の相性も良くないんじゃあねえか?」

アルマージュは他の国にジュディの“茶”がハッキリとわからないよう、しかし相手を挑発する。

「アルマージュ、挑発するヒマがあったら早く仕留めてよね」

アルマージュの下にしがみついているレインスが言った。

アルマージュは『80℃弾』で強化した状態を保っていた。
そのせいでいくらか落ちたスピードを、レインスがアルマージュにしがみつき飛行を援助するコトによって、補っている。

つまり、ヴェルメロスは戦力である3人のうち1人、レインスが動けない状態のため、U.J.Iとしてはヴェルメロス迎撃に残りの全戦力を傾けたいトコロだったが

「クソっ、相変わらずしつこいなあ!」

「貴方とは決着をつけないといけませんので」

「ソレお前だけの都合だろぉ!?」

ムサシはノワールに対し防戦一方だった。
ノワールは残像を残すかのスピードでムサシに迫ると、拳と蹴りを繰りだす。

ムサシはソレを、以前にもそうだったように超至近距離にて弾丸で応戦する。
“逆流弾”も駆使してはいたが、相変わらずの効果だ。
「考えるより感じる」ヤツには“逆流弾”が通じにくいコトを、ムサシは悟った。

ノワールは一連の攻撃を行うと、一時的に自らの一行の元へ戻り、呼吸を整えまたも攻めてくる。
もはや『審査弾』がなくとも、ムサシとノワールの相性が悪いコトは明白だった。

また、フランシスとブレーズも、ムサシとノワールほどではないにしろ同様だった。
ブレーズの声による攻撃に、フランシスは走りながらもサイドスローで投石し応戦するが

「走りながら投げるってぇのは、プロのメジャーリーガーでも難儀だぞ」

一人愚痴る。

パクスはわかった上で応戦していた。
U.J.Iにはヴェルメロスに対する“盾”になってもらう。
あわよくば、共倒れしてほしい。

その戦闘の合間を縫って、ミサトが『審査弾』をU.J.Iに放つ。
U.J.Iはすんでのトコロでソレを回避できていたが、ミサトにとってU.J.Iはオマケだ。
本当に狙っているのは、その向こうのヴェルメロスだった。

ソレに対し、オクルスとララのコンビが、ジュディとアサヒのように応戦している。
ララによる『温度弾』の助けがあるとは言え、戦闘向きではないオクルスはミサトからの『審査弾』を拳銃の弾丸で弾くのに精一杯だ。

つまりこの時点で、三ヶ国の力はほぼ拮抗していた。
いや正確には時間の問題で、U.J.Iはやや押され気味、ヴェルメロスが勝利するか、そのどちらもをパクスが食ってしまうかという状態だった。

しかしU.J.Iにも勝算がないワケではない。
前方を行く遠藤とカップに、三ヶ国は肉迫しつつあった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

素材採取家の異世界旅行記

木乃子増緒
ファンタジー
28歳会社員、ある日突然死にました。謎の青年にとある惑星へと転生させられ、溢れんばかりの能力を便利に使って地味に旅をするお話です。主人公最強だけど最強だと気づいていない。 可愛い女子がやたら出てくるお話ではありません。ハーレムしません。恋愛要素一切ありません。 個性的な仲間と共に素材採取をしながら旅を続ける青年の異世界暮らし。たまーに戦っています。 このお話はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。 裏話やネタバレはついったーにて。たまにぼやいております。 この度アルファポリスより書籍化致しました。 書籍化部分はレンタルしております。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

【完結】聖女ディアの処刑

大盛★無料
ファンタジー
平民のディアは、聖女の力を持っていた。 枯れた草木を蘇らせ、結界を張って魔獣を防ぎ、人々の病や傷を癒し、教会で朝から晩まで働いていた。 「怪我をしても、鍛錬しなくても、きちんと作物を育てなくても大丈夫。あの平民の聖女がなんとかしてくれる」 聖女に助けてもらうのが当たり前になり、みんな感謝を忘れていく。「ありがとう」の一言さえもらえないのに、無垢で心優しいディアは奇跡を起こし続ける。 そんななか、イルミテラという公爵令嬢に、聖女の印が現れた。 ディアは偽物と糾弾され、国民の前で処刑されることになるのだが―― ※ざまあちょっぴり!←ちょっぴりじゃなくなってきました(;´・ω・) ※サクッとかる~くお楽しみくださいませ!(*´ω`*)←ちょっと重くなってきました(;´・ω・) ★追記 ※残酷なシーンがちょっぴりありますが、週刊少年ジャンプレベルなので特に年齢制限は設けておりません。 ※乳児が地面に落っこちる、運河の氾濫など災害の描写が数行あります。ご留意くださいませ。 ※ちょこちょこ書き直しています。セリフをカッコ良くしたり、状況を補足したりする程度なので、本筋には大きく影響なくお楽しみ頂けると思います。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

処理中です...