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United Japanese tea varieties of Iratsuko(15)

暗黒山脈(52)

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遠くの方で、冥い黄昏色が燈った。
山脈の夜の真闇の中にソレは突然現れ、そしてコチラにゆっくりと向かってきていた。

しばらくしてもう一つ、ソレが燈った。
また時間を置いて、もう一つ。
しかし動いているのは最初の一つだけだ。

向こうの方からソレらが燈ってくるにつれ、唯一動いている灯りの傍らに、ソレを持っている人物が見え始めた。
そしてその後ろにも人影が見える。

人物の数は1、2、3……4。
一列縦隊で歩いてきていた。

灯りの正体は松明だった。
手に持たれている一つと、地面に固定されている複数。

ジュディは順番に、ソレらに炎を燈していた。
後ろにはアサヒ、フランシス、ムサシが続いている。


◇◇◇


「ココが“鳥居”の中か……!」

ムサシが驚嘆した。

ムサシは“ゲート”に指先を入れた後、光に包まれ、眩い光が収まる頃には、品の良い和室住居の中に居た。
書院の造りで、後に探索してわかったコトだが、小間の茶室と広間の茶室、草庵茶室と書院茶室が存在した。
全体的な雰囲気は、アサヒのいた世界で言うトコロの「細川三斎」と「片桐石州」の好みを伴っている。

しかし何より皆が驚いたのは、その立地と天井だった。
いや、というより天井は存在せず、遠くの空が見えていた。
建物は水の上に建っており、建物周辺は成人女性の胸の高さまでが浸かるぐらいの水深だが、遠くに行くにつれてより深くなっているコトが見てとれた。
水底は砂で、生物は存在していなかった。

そして、遥か遠くの方には陸地はおろか水平線すら存在せず、大きな波が隆起していた。
その波は見上げ入道のように高く、建物をぐるりと取り囲んでいたため、天井がないと言えど見える空は、遥か上方で丸く切り抜かれて見える少しの範囲だけだった。

ムサシは建物を歩いた。
縁側に座っている、大きな背中を発見する。

「フランシス! 大丈夫か!」

「ああ。光に包まれて、次の瞬間にはココにいると思ったら、何だか……傷も治ってたよ」

と、フランシスが見ていた方向の水面に、二人の人物が顔を上げた。

「アサヒ! ジュディ!」

ジュディは周囲を見回してフランシスらを見つけると、アサヒを連れてソチラへと泳いだ。


◇◇◇


「“ゲート”を発見し、いずれかの国が入ると、そこから“鍵”のある領域は緊急プロトコルモードに移行する」

「“鍵”の捜索は一時的に不可能になり、全ゲートが待機状態に移行する。各国がゲートに入るか、もしくは脱落しない限り、その状態は継続される」

「各国がゲートに入るか脱落し、ゲートの状態が準備状態に移行すると、しかるべき時間の後にまた全ての国が元の場所へ戻される」

「そして、旅の最終段階が始まる」


◇◇◇


全く変化しなかった波の壁が、音を立てて崩れ始めた。

「何だ? 各国がゲートに入ったのか?」

ムサシが空を仰いで言った。

「どうやらそのようね。そして“準備状態”も終わったみたい」

「このまま、波が落ちてくるのを待ってればいいのか?」

「ええ、フランシス。横の、貴方より小さな勇者さんでも落ち着いているのよ。リラックスして。ねえ、アサヒ?」

「いえ、内心はドキドキしています」

そう言いながらも、アサヒは笑みを浮かべていた。
大波が落ちてくるからではなく、いよいよ最後の邂逅が始まるからだった。


◇◇◇


その他の各国の皆も、他の国々が全て“ゲート”に入ったコトを悟った。
そして最後に行わなくてはならないコトも、また悟っていた。

ジュディらは、他にも四つの灯りがそれぞれ、近づきつつあるのを見ていた。
見ながら、ジュディらも近づいていく。炎を燈しながら。

そして、全ての国々が一点に集った。
炎を持っていた五名が、中央の祭壇に松明を投げ入れる。

すると、コレまで燈してきた松明たちから、炎が分裂して夜空へと放たれた。
炎は空中のある高さで静止すると、一層大きく燃え上がった。

周囲が一気に明るくなる。
各国の一行の姿が一際照らされた。



山脈上空に燈った炎は、各国の街々からも見えた。
その炎の連なりは、巨大な大文字を描いていた。
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