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南山城国(15)

暗黒山脈(49)

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「……」

剣士たちは、自らの刃を振り切った姿勢で静止していた。
己が相手を睨んだまま。

斬ったはずの相手たちは、各々の茶園へと還るコトもなく、そこにいた。
切断線から血が噴きでることもなく、ただ、輝く線だけが描かれている。

「……一手、遅かったようですね」

童仙が刀を鞘に納めた。
龍之介の前のウィーは、顔を押さえて言う。

「アレ? 大丈夫ですねぇ。コレが“ゲート”の作用ですかぁ」


「どうやら、そのようね」

童仙の前のメイも言った。

遠藤の眼下、“鳥居”とカップに命中した散弾も、その弾痕から輝きを放ってはいるものの、ダメージとはなっていないようだ。
鳥居も崩壊することなく、ソコにいた。

そしてカップの片手は、鳥居の中にあった。

「あちゃ~、到達されちゃったかあ。残念」

遠藤が言う。

「何々? どういうコト?」

カオルが童仙に問いかけた。

「彼らは、“門”に到達したのですよ」

「門って、裏口というか、近道みたいなモノだったっけ?」

「そうです。彼らの国の言葉では“ゲート”と言うらしいですが。到達するとどうなるかまでは聞き及んでおりませんでしたが、こうなるのですね」

「流石は、南山城国の戦士たちね。もののふ、と言うのかしら」

メイが童仙に話しかける。

「“ゲート”に先に到達できないと判断するや否や、相手の数を減らす方向に舵を切った。根っからの戦闘民族ね」

「お褒めを頂いたと受け取っておきます。見事でした」

「私たちもこうなるとは思ってなかったから、肝を冷やしたけど。“ゲート”に先に到達したチームは、もう“守られる”ってワケね」

メイがカオルと童仙の横を、手を上げてすり抜けた。

「じゃあ、お先にね。また後で」

「ええ。またお会いしましょう」

ウィーとツヅキも、悔し気な表情ながら目をつむったままの龍之介の横を通った。

「おにーさん。また後で、ですぅ。服はその時までに直しておきますね。ツケですよ」

ウィーが龍之介に囁く。
そして前を向くと、ツヅキに話しかけた。

「よくわかりましたねぇ。あの、最初の光が“ゲート”だって」

「何処かの国のチームが発見して発動したら、残りの“4つ”のゲートも発動するんだっけか? 発動ってのがイマイチわからなかったが、まあ光り輝く鳥居を見た時に、なんかピンときてさ」

「流石ですぅ」

「いや、流石なのは」

デル・ゾーネの一行が鳥居に集まる。

「カップ、ナイスだった!」

「ホント、助かったわ」

「い、いえ。ウィーさんのお陰です」

「いやぁ、ちょっと最後にイタズラしただけですよぉ。ありがとうございます、カップさん」

発砲音が森に響いた。

皆が顔を上げる。
遠藤が樹の上で、デル・ゾーネの全員に笑顔を向けていた。

「あ、ごめん。祝砲だよ。見事にしてやられたってワケだ」

遠藤が樹から飛び降りる。
着地点に、南山城国の一行も集まった。

「どうぞ、お先に行ってらっしゃい」

「ええ。それじゃあね」

デル・ゾーネの一行が三柱鳥居の中の、中心の光へと消えた。
鳥居も、同時に消失する。

「さて、どうしようか」

「そんなの遠藤さん、決まってますよ。ね? 皆」

「……すみません。私がもう少し速ければ」

「いえ、龍之介殿。皆が全力でした。その証拠に……」

童仙がくすくすと笑う。

「楽しい追いかけっこだったでしょう?」

「うん。違いないね」

「でも、まだもう少し続く追いかけっこでしょ?」

「ええ。次は私たちが到達する番ですね。“3つめ”の門に」

暗黒山脈の中、残り3つの光柱が、天を支えていた。
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