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シュロッス・イン・デル・ゾーネ(15)

暗黒山脈(47)

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「彼女は横に自由落下運動をしているワケだから……」

遠藤は樹上を走りながら、腕を伸ばして手のひらを空に向けて構えた。
自らの手の大きさや腕のリーチ、そしてカップの推定身長と今見えているカップのサイズを比べ、計算する。

「大体、この辺りかな?」

ショットガンを構え、放った。
カップの所へ届く頃には、弾丸は拡散していたが

「うわぁっ!」

無数の破片が命中した。
一つ一つのダメージは小さくとも、カップの魔術的集中を削ぐには十分だ。

カップは降下し、樹々の枝々に突っ込んだ。
遠藤から見れば前方、カップが一時的に見えなくなる、が。

「で、彼女は樹々の中を進むのに僕みたいには慣れてないだろうし、“高温度弾(80℃より温度が上の、スピードや反応速度を上昇させる弾丸)”もないから……」

カップは何とか、樹々の中から浮上する。

「ほらね」

遠藤は再度、ソレを狙撃する。

「女の子に対して可哀想だけれど……いや、そんなコトないか。

僕も女の子だし」


「……イヤなやつ」

メイは遠藤の心を読みながら、言った。
カップを援護したいが、童仙の心も読んだところ、そういったコトは何としてでも阻止するという鋼の意志を感じる。

「メイ!」

ツヅキがメイを呼んだ。
メイが見ると、ツヅキは無表情にウインクだけを行った。

「もう少し、このまま距離が縮まれば……」

遠藤はそう言いながら、ショットガンに次弾を込める。
その手を弾丸が掠めた。

飛来方向を見る。
ツヅキが銃を構えていた。

「この速度の僕を、どうやって……?」

ツヅキは拳銃の空のマガジンを手首を捻って素早く排出すると、すぐさま装填した。
ほぼゼロ秒で、遠藤に12発が降ってくる。

「くっ……! マグフリップリロードに、意外と良い腕してるじゃん。にしてもこの精度は、数撃ちゃ当たる戦法ってワケね」


「ウィー、サンキュー。前のアイツは大丈夫か?」

「大丈夫ですよぉ。“ソレ”は省エネ魔力で運用中ですし」

ソレとは、ツヅキの頭を覆うようにして出現している小型の“レーダードーム”のコトだ。
ドームはリアルタイムで、遠藤の移動位置予測をツヅキに示していた。
半透明のソレは、遠藤からは遠くて視認できない。

「『50℃弾』か。僕のパワーを上げる代わりにスピードを落として、あの女の子の追尾をやめさせるつもりだね。
しかしあのリロードと早撃ち、どっかで似たのを見たコトあるな。確かU.J.Iの裏稼業の……“ムサシ”さんだっけ?」

遠藤は弾丸を避けながら言った。
そんなコトも露知らず、ツヅキは撃ち続ける。

「ヤツの動きも落ちたな。後はカップが持ちこたえてくれればいいんだが……」
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