カメリア・シネンシス・オブ・キョート

シュロッス・イン・デル・ゾーネ（１５）

暗黒山脈（４６）

童仙の刃がウィー、そしてメイへと振り下ろされそうな刹那、彼らの遠くの木々の間に、僅かな光が生じた。
次の瞬間、その光は巨大な閃光となり全員を包んだ。

「……！　何だ？」

ツヅキが光源の方向に目をやりながら言う
童仙も刃を止め、皆が光の方向に釘づけになっていた。

光はその強さを少し弱めた。
光源にあるソレが徐々に見えてくる。

その正体に最初に気づいたのはツヅキだった。
そして遠藤、続いてその心を読んだメイだ。

「カップ！　重力操作で向こうまで“飛べる”か!?」

「ええっ!?」

「皆！　マズい！　走るよ！」

カップは少し狼狽えたが、ツヅキの顔を見て察した。
遠藤の声に、南山城国の一行も瞬間、混乱する。

「こ、コントロールは良くないですけどっ……！」

カップは杖を地面に振った。
土埃が中空に舞ったかと思うと、カップは空へと“落下”した。

遠藤は木から木へと移動を開始する。
童仙はすぐさまカオルの近くで“一人”に戻った。

「なになに？　どういうコト？」

「カオル殿、走りますよ。私の後ろから離れないで」

童仙とカオルも走りだす。
ツヅキとウィーも同じタイミングだった。

遠藤が空を見上げる。
樹々の上空まで“落ちた”ウィーは、帽子を押さえながらもう一度空中で杖を振るうと、次は光の方向へと落下した。

「速い……！」

遠藤が銃を放つ。
しかし、樹上を素早く移動しながら、高速飛行する相手を銃撃するコトは至難の業だった。

「マズいね！　じゃあコレだけでもっ……」

遠藤は少し魔力を込めて、後方にショットガンを撃った。
魔力の込められた散弾は、龍之介のすれすれを避けて着弾し、その拘束を解いた。

童仙とカオルを、竜巻を解除したメイが追尾する。
ウィーとツヅキの目の前の龍之介は、彼らには目もくれず走りだした。

「ありゃりゃ……聴覚も奪っておくべきでしたねえ」

「邪魔できるか？」

「勿論ですぅ」

ウィーが走りながら杖を振る。
龍之介の前に透明の壁が幾重にも出現する。
察知した龍之介に、壁たちは斬り捨てられるが、その脚の速度を遅らせるコトには成功していた。

「良いぞ。追いつけるかも」

「追いつけたら、また目をつむってくれますかねぇ」

「……多分な」

「あっ。チラッと見ましたね」

「……」

メイも童仙とカオルを追いながら、杖を振るった。
童仙とカオルの両端の樹々が影響を受け、彼らになだれ落ちる。

童仙は走りながら素早く、その樹々をくり抜いた。
ちょうど自分たちだけが走れるようなトンネル状に。

「コッチは脚を遅らせてはくれない、か」

メイがひとりごちる。
童仙の背後のカオルの存在により、童仙へと直接に攻撃をするコトは躊躇われた。