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南山城国(14)
暗黒山脈(38)
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「形勢逆転ですぅ。覚悟してくださいねぇ」
ウィーが言った。
龍之介が見えない縄に引っ張られるかのようにして、空中に磔になる。
「ぐっ……!」
龍之介は腕に力を入れ、見えない縄を引きちぎろうとした。
「おっとぉ。そうはいきません」
ウィーが杖をもう一度振った。
龍之介は一切の動きができなくなる。
「覚悟してくれ、って言いましたけど」
ウィーは龍之介に近づき、言う。
「紳士な方でしたからねぇ。“ぎゅる”ってするのは、また今度にしてあげます」
一部始終を見て、カオルが童仙に問いかける。
「どういうコトだと思いますか」
「恐らくですが、彼(ツヅキ)が放った最初の二発は『審査弾』と『50℃弾』ですね」
「でも、彼が味方を撃ち抜けるほど、あの戦いには余裕はなかったはずです」
「彼にとっては、どちらかに当たりさえすれば良かったのですよ。『審査弾』は味方に当たったトコロで不利益はありませんし、『50℃弾』が彼女(ウィー)に当たれば龍之介殿の刃を止められる力を得ます。
対して、龍之介殿に『50℃弾』が当たれば刃を操る腕力などは強くなるでしょうが、その速さを失います。あの戦いにおいて、大事なのは龍之介殿の速さでした。
『50℃弾』が彼女に当たれば、その速さを失ったとしても、ソレまでずっと龍之介殿の刃を“空間に影響する魔術”で“一手先”に抑えていた相手です。龍之介殿の刃がその肌に触れるより先に、今実際に起こったように、『50℃弾』でより強化された“空間魔術”を行使できます」
「……つまり?」
「……龍之介殿は二発の弾丸が放たれた時点で詰んでいました。三発めの弾丸が王手です。
三発めの弾丸は恐らく『100℃弾』。動きが遅くなった龍之介殿に当てるのは造作もなかったでしょう。そしてその効力が現れる瞬間、その一瞬に合わせて彼女も魔力を行使した。『50℃弾』の効力が帳消しとなり、次の『100℃弾』の効力である“速さの増加”が現れるか現れないかのその一瞬のうちに拘束されてしまい、龍之介殿は“見えない縄”のようなものを引きちぎるコトもできない状態に置かれてしまったワケです」
「……なるほど。そして今向かってきている相手に対処するのが童仙さんってワケですね」
「ええ」
「“何℃”がいいですか?」
「では、『90℃』で。相手はお二人になりそうですから」
向かってくるウィーに二人は向きを変えていたが、先程まで向いていた方向の草むらからは、メイが姿を現した。
ダメージを負ってはいるが、目にはまだ戦闘の意志が残っている。
流石に内心「大丈夫かな?」と思わないでもないカオルだったが、童仙は違った。
「あの彼女(ウィー)、遠藤殿のトコロに行ってくれなくて良かったです。よほどコチラのお嬢さん(メイ)が気になるのでしょうね」
童仙の目が危険な光に輝くのを、カオルは見て取った。
「……多分、メイドだからじゃあないですかね」
「冥土? ……あの世へ行くほどの覚悟だから、遠藤殿より私の方に? 大変嬉しい話ですが」
「……いや、まあとりあえず集中してください」
ウィーが言った。
龍之介が見えない縄に引っ張られるかのようにして、空中に磔になる。
「ぐっ……!」
龍之介は腕に力を入れ、見えない縄を引きちぎろうとした。
「おっとぉ。そうはいきません」
ウィーが杖をもう一度振った。
龍之介は一切の動きができなくなる。
「覚悟してくれ、って言いましたけど」
ウィーは龍之介に近づき、言う。
「紳士な方でしたからねぇ。“ぎゅる”ってするのは、また今度にしてあげます」
一部始終を見て、カオルが童仙に問いかける。
「どういうコトだと思いますか」
「恐らくですが、彼(ツヅキ)が放った最初の二発は『審査弾』と『50℃弾』ですね」
「でも、彼が味方を撃ち抜けるほど、あの戦いには余裕はなかったはずです」
「彼にとっては、どちらかに当たりさえすれば良かったのですよ。『審査弾』は味方に当たったトコロで不利益はありませんし、『50℃弾』が彼女(ウィー)に当たれば龍之介殿の刃を止められる力を得ます。
対して、龍之介殿に『50℃弾』が当たれば刃を操る腕力などは強くなるでしょうが、その速さを失います。あの戦いにおいて、大事なのは龍之介殿の速さでした。
『50℃弾』が彼女に当たれば、その速さを失ったとしても、ソレまでずっと龍之介殿の刃を“空間に影響する魔術”で“一手先”に抑えていた相手です。龍之介殿の刃がその肌に触れるより先に、今実際に起こったように、『50℃弾』でより強化された“空間魔術”を行使できます」
「……つまり?」
「……龍之介殿は二発の弾丸が放たれた時点で詰んでいました。三発めの弾丸が王手です。
三発めの弾丸は恐らく『100℃弾』。動きが遅くなった龍之介殿に当てるのは造作もなかったでしょう。そしてその効力が現れる瞬間、その一瞬に合わせて彼女も魔力を行使した。『50℃弾』の効力が帳消しとなり、次の『100℃弾』の効力である“速さの増加”が現れるか現れないかのその一瞬のうちに拘束されてしまい、龍之介殿は“見えない縄”のようなものを引きちぎるコトもできない状態に置かれてしまったワケです」
「……なるほど。そして今向かってきている相手に対処するのが童仙さんってワケですね」
「ええ」
「“何℃”がいいですか?」
「では、『90℃』で。相手はお二人になりそうですから」
向かってくるウィーに二人は向きを変えていたが、先程まで向いていた方向の草むらからは、メイが姿を現した。
ダメージを負ってはいるが、目にはまだ戦闘の意志が残っている。
流石に内心「大丈夫かな?」と思わないでもないカオルだったが、童仙は違った。
「あの彼女(ウィー)、遠藤殿のトコロに行ってくれなくて良かったです。よほどコチラのお嬢さん(メイ)が気になるのでしょうね」
童仙の目が危険な光に輝くのを、カオルは見て取った。
「……多分、メイドだからじゃあないですかね」
「冥土? ……あの世へ行くほどの覚悟だから、遠藤殿より私の方に? 大変嬉しい話ですが」
「……いや、まあとりあえず集中してください」
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