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バクエット・ド・パクス(14)

暗黒山脈(36)

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爆音が響く。
アサヒが走ってきた、その方向からだ。

「!」

アサヒが振り返り、向かおうとする。
足元に弾丸が撃ち込まれた。アルマージュが言う。

「おっと、動くんじゃあないぜ! 異世界人が死んだらどうなるかはわかってる。だから殺しはしないけど、痛い目は見てもらうコトになるかもだ」

アサヒにとって痛い目を見るコトはどうでもよかった。
しかし、ソレで脚が使い物にならないなどの状態になってしまったら、皆の元に駆けつけるコトも叶わなくなってしまう。
レインスがアサヒ以外の二人にライフルを向け、言った。

「ソッチの二人もよ!」

ミサトは顔色一つ変えなかったが、駆けだしたい気持ちはアサヒに等しかった。
ブレーズは、その口調とはまるで異なり、雄弁に焦りを顔に物語らせている。

「オクルスの爆弾か?」

「でしょうね。あの黒煙の感じといい」

爆心地からは、煙が立ち昇り始めている。
そして空を切る稼働音が二つ、近づいてきていた。

森を抜け、ララとオクルスが姿を現す。
アルマージュが声をかけた。

「何があった?」

「お前ら! 先に行きすぎだぞ! 後ろの方が敵、多かったんだからな」

「悪ぃ悪ぃ。で、今はどういう状況なんだ?」

「多分、U.J.Iと……バクエット・ド・パクスの方々が交戦中だったんだと思います」

「え? マジかよララさん!? パクスは“召喚”をもうしなくなったハズなのに?」

「でも、確かに状況的にはやっぱそうよね……どうする? 後ろのヤツらは終わったんでしょ?」

「ちょっと手荒なマネにはなっちゃったけど……コッチのヤツらには、しばらくじっとしててもらおう」

オクルスはそう言うと、大きなライフルを取りだした。
レインスのライフルとは違い、先端がシュモクザメの頭部のような、特殊な形をしている。

「ソレ、“拘束用”? やっぱアンタらしいわね」

「うっせー。優しさには定評があんだろ」

オクルスが開発した“拘束用”ライフルは、一本の強化ヒモの両端に蒸気稼動式電磁ボールが付属しているモノを射出する。
ソレは対象物に命中すると何重にも縛りつき、相手を拘束してしまうのだった。

「おっと、動くなよ! 変に痛い目には遭わせたくない」

まずはアサヒにライフルが向く。

「優しいんですね。その科白、さっきソッチのお兄さんも言ってました」

オクルスが覗くライフルの照準の中、アサヒが言った。

「でも、貴方がたは動いた方が良いと思いますよ」

不敵な科白に、オクルスが照準から目を離す。
アサヒやミサト、ブレーズがいる地面一体を照らしている日の光は、オクルスら四人の背後に昇っている太陽から射している。

太陽光線は四人の形に縁取られた影を地面に映していたが、ソコにもう一つ、影が形作られつつあった。
複数の小さな影が、一つの形になっていく。

四人は振り向いた。
逆光に目が慣れた時、ソコには爆風によって吹き飛ばされたパーツから自らをまた再構成した、傷を負いながらも銃を構えるジュディの姿があった。
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