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テラ・ドス・ヴェルメロス(13)

暗黒山脈(26)

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皆が立ち止まり、メイの方を振り向いた。
メイがクシャミをしただけだった。

「あ、ゴメン。誰かに噂されたみたい」

「さっきの相手かもな」

ツヅキの言うさっきの相手とは、ヴェルメロスの一行のコトだ。

「じゃあ恨み節ね」

「いやぁ、案外惚れられたのかもですよぉ?」

「で、でもソレなら彼らの前にちゃ、ちゃんと姿を現していたのはウィーさんだけですし、う、噂されるのはウィーさんだけなんじゃあ……?」

「ですねぇ。私、邪魔しかしなかったですし、じゃあやっぱり恨み節ですかねぇ」

デル・ゾーネの一行は暗雲の下を進んでいた。
幸い、雷が煌めいてはいるものの、音までは聞こえず、雨も蒸気の雲を通過してはこなかった。
『調整しておいたからね』とは、メイの談だ。

「“地雷”の反応はどうだ?」

「まだ破裂してはないわね。個人的には、引っかかるような相手じゃあないコトを祈ってるけど」

「ウィー、持続できそうか?」

「計画通り、私たちが雲の下を抜けるまでは余裕ですよぉ」

先程、ヴェルメロスの一行は木々の上を飛び回っていた。
今は上手く、雷雲から相手の逃げられる方向を“誘導した”コトもあって、ツヅキらの遥か後方にいるはずだ。

追いつくにはまた空を飛ぶしか相手にはないだろうが、木々の上の空には今だメイの雷雲が鎮座している。
となれば、雲を迂回するしか飛行ルートはないが、ソコに彼らは“地雷”を設置していた。
いや、“機雷”……ソレとも“空雷”とでも呼ぶべきだろうか。

雲の端と端には、メイが強化して生みだした雷を、ウィーが空間魔術で“包み込んだ”爆弾が配置
されていた。
コレは近づいた“異世界からの人物以外”に反応して自動で爆発、雷を放出する。

「流石に、相手もコッチが何もせずにいるとは思ってないでしょ。コッチが心を読まれているようで、少しイヤだけど。まあ、抑止力ってヤツね」

ツヅキにもメイの心が少し読めていた。いや、他の二人にもだ。
先の、ボソッと言った『引っかかるような相手じゃあないコトを祈ってる』という科白。そして“異世界からの人物以外”に反応するようにした爆弾。

メイは異世界からの人物は守りつつ、しかし相手の戦力は確実に削げるように爆弾の設置を指示した。
ソレでもまだ引っかからないよう祈る辺り、本人的には苦渋の決断だろう。

人には厳しい口調が目立つときもあるが、メイはやはり心根の優しいヤツだと、ツヅキは思った。
他の二人、特にウィーはよりソレがわかっているだろう。

時に厳しい口調も、生まれた頃から人の心が読めるから故に違いない。
信じていた相手の心が読めて、その本心が手に取るようにわかる人物の成長というのは、一体どうなるのだろうか。

意識して人の心を敢えて読まないコトも選択できるようになり、そして特にツヅキと会ってから、お嬢さまはますます変化していると、ウィーは思った。
カップもメイに影響を与えているのを、ウィーは感じていた。どちらも、コレまでのお嬢さまの人生にはいなかった、“対等な男の子”と“可愛い妹”のような存在だ。

「ウィー、なんかニヤケてるわよ。心、読んだ方がいい?」

メイに問いかけられ、ウィーは我に返った。
より顔を綻ばせると、ウィーは「大丈夫ですぅ」と言って、いつの間にかほんの少し遅れていた足取りを、皆に追いつかせた。
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