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シュロッス・イン・デル・ゾーネ(13)
暗黒山脈(24)
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ヴェルメロスの一行は全員、『90℃弾』で強化されていた、が。
「くそっ! 結構……! 強いなっ!」
アルマージュが空中を走る少女を銃撃しながら言う。
少女はその弾丸を避けつつも、被弾が確実なソレは杖を振るって弾いていた。
いや、その弾かれた弾丸の一部は、彼女の魔力によって“撃ち返されて”いた。
アルマージュは拳銃の銃身を使って防御する。
「コレはいいんだよっ! まだ」
少女が続けざまに杖を振る。
アルマージュはきりもみ飛行で軌道を変えた。
残されたアズールの蒸気が、アルマージュが避けた空間に渦を巻いて引き寄せられ、ぐるりと圧縮されて小さな球体になったかと思うと、破裂した。
「もうちょっと相手に対する思いやりとかないのかよっ! 銃は当たり所にもよるけど、スマートだぜ。んで、俺は当たり所良い方だが」
「大丈夫ですよぉ。外から見るとちょっとアレですけど、私の魔術、痛みは伴いませんから」
彼女は言い終わった直後に、身体を捻って空中に飛んだ。
レインスのライフル弾を避けるためだ。
避けた弾を撃ち返すために、彼女はその弾丸を魔力で捕捉した。
その弾丸自体が撃ち弾かれた。
撃ったのはオクルスだ。
弾かれたライフル弾が再度、少女を襲う。
頭部目がけてのその弾を、すんでのトコロで彼女は避けた。
いや、頬にかすり、僅かに出血が生じた。
「さっきからずっと一歩引いて何か考えてたから、頭脳派かと思ったんですけどねぇ」
傷から伝ってきた血をペロリと舐める。
その頬に一滴、水の粒が落ちた。
「いや、頭脳派だよ。ありがとう」
彼女に弾丸が命中した。
ララの放った『審査弾』だ。
「雲行きが怪しくなってきましたねぇ」
「ああ、本当に」
彼女の自虐にオクルスが返す。
実際に、雲行きは怪しくなり始めていた。
彼女の頬に当たった一滴を皮切りに、ぽつりぽつりと雨が降り始める。
「この独特の香り、『ごこう』だね。じとりとした甘味があるコトを考えると、玉露かな?」
「苦くなかったですかぁ? すみませんねぇ」
「いえいえ、結構なお点前でした。キミの魔術の特徴は……空間操作だね」
「皆さんにしっかり味わっていただいているようで、何よりです。
――お足元をお忘れになるぐらいに」
ララを除く全員に『審査弾』が着弾した。
「お茶は緊張を忘れさせてくれる、良い飲み物ですねぇ。いや、私が美味しすぎたというコトにしておきましょうかぁ?」
「……乾杯ってワケか」
「ええ、そしてさようならです。スカイフォールってヤツですねぇ」
少女はぺこりとお辞儀をすると、そのまま後方に倒れ、見えない足場から落ちた。
アルマージュとレインスが追撃するが、透明の壁に阻まれる。
続けて、少女の真下の蒸気雲に穴が空いたかと思うと、少女はその落下速度を加速して消えた。
重力異常だ。
「どうして蒸気の雲の向こう側にいる俺たちに、奴らは『審査弾』を撃ち込めたんだ?」
オクルスにアルマージュが近づいて言う。
「……今の娘の空間操作だ。雲の下で、空間操作で透明のドームを作って、音波を拾うレーダーを展開したんだと思う」
「そんなコトまでできるのか?」
「ああ。……ってかお前ももっと彼女を味わえ。そのぐらいまで読めるだろ」
「スカイフォールって、何だったのかしら? あの娘が落ちていくってコト?」
レインスの言葉に、皆は少し考えた後、空を見上げた。
いつの間にか雨は強くなり、周囲は暗くなっている。頭上には眼下の蒸気雲よりも黒々とした、正真正銘の雨雲、いや雷雲が広がっていた。
「……なるほど、こういうコトですね」
雲を見ながらララが言った。嫌な汗が背中を流れた。
雲海は稲光を発しながら、彼らに落ちてきた。
「くそっ! 結構……! 強いなっ!」
アルマージュが空中を走る少女を銃撃しながら言う。
少女はその弾丸を避けつつも、被弾が確実なソレは杖を振るって弾いていた。
いや、その弾かれた弾丸の一部は、彼女の魔力によって“撃ち返されて”いた。
アルマージュは拳銃の銃身を使って防御する。
「コレはいいんだよっ! まだ」
少女が続けざまに杖を振る。
アルマージュはきりもみ飛行で軌道を変えた。
残されたアズールの蒸気が、アルマージュが避けた空間に渦を巻いて引き寄せられ、ぐるりと圧縮されて小さな球体になったかと思うと、破裂した。
「もうちょっと相手に対する思いやりとかないのかよっ! 銃は当たり所にもよるけど、スマートだぜ。んで、俺は当たり所良い方だが」
「大丈夫ですよぉ。外から見るとちょっとアレですけど、私の魔術、痛みは伴いませんから」
彼女は言い終わった直後に、身体を捻って空中に飛んだ。
レインスのライフル弾を避けるためだ。
避けた弾を撃ち返すために、彼女はその弾丸を魔力で捕捉した。
その弾丸自体が撃ち弾かれた。
撃ったのはオクルスだ。
弾かれたライフル弾が再度、少女を襲う。
頭部目がけてのその弾を、すんでのトコロで彼女は避けた。
いや、頬にかすり、僅かに出血が生じた。
「さっきからずっと一歩引いて何か考えてたから、頭脳派かと思ったんですけどねぇ」
傷から伝ってきた血をペロリと舐める。
その頬に一滴、水の粒が落ちた。
「いや、頭脳派だよ。ありがとう」
彼女に弾丸が命中した。
ララの放った『審査弾』だ。
「雲行きが怪しくなってきましたねぇ」
「ああ、本当に」
彼女の自虐にオクルスが返す。
実際に、雲行きは怪しくなり始めていた。
彼女の頬に当たった一滴を皮切りに、ぽつりぽつりと雨が降り始める。
「この独特の香り、『ごこう』だね。じとりとした甘味があるコトを考えると、玉露かな?」
「苦くなかったですかぁ? すみませんねぇ」
「いえいえ、結構なお点前でした。キミの魔術の特徴は……空間操作だね」
「皆さんにしっかり味わっていただいているようで、何よりです。
――お足元をお忘れになるぐらいに」
ララを除く全員に『審査弾』が着弾した。
「お茶は緊張を忘れさせてくれる、良い飲み物ですねぇ。いや、私が美味しすぎたというコトにしておきましょうかぁ?」
「……乾杯ってワケか」
「ええ、そしてさようならです。スカイフォールってヤツですねぇ」
少女はぺこりとお辞儀をすると、そのまま後方に倒れ、見えない足場から落ちた。
アルマージュとレインスが追撃するが、透明の壁に阻まれる。
続けて、少女の真下の蒸気雲に穴が空いたかと思うと、少女はその落下速度を加速して消えた。
重力異常だ。
「どうして蒸気の雲の向こう側にいる俺たちに、奴らは『審査弾』を撃ち込めたんだ?」
オクルスにアルマージュが近づいて言う。
「……今の娘の空間操作だ。雲の下で、空間操作で透明のドームを作って、音波を拾うレーダーを展開したんだと思う」
「そんなコトまでできるのか?」
「ああ。……ってかお前ももっと彼女を味わえ。そのぐらいまで読めるだろ」
「スカイフォールって、何だったのかしら? あの娘が落ちていくってコト?」
レインスの言葉に、皆は少し考えた後、空を見上げた。
いつの間にか雨は強くなり、周囲は暗くなっている。頭上には眼下の蒸気雲よりも黒々とした、正真正銘の雨雲、いや雷雲が広がっていた。
「……なるほど、こういうコトですね」
雲を見ながらララが言った。嫌な汗が背中を流れた。
雲海は稲光を発しながら、彼らに落ちてきた。
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