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南山城国(13)
暗黒山脈(21)
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「どうなってる……?」
童仙は思わずそう言った。
本人は門に近づきつつ一人ごちたつもりだったが、門番はソレを聞き逃さず返事した。
「コレは童仙殿。月野ヶ瀬さまよりご連絡は頂戴しておりましたが、遥かにお早く。村の隔離措置の解除も、まもなくでございます」
童仙は門まであと一歩の所に立った。
かつて村域内に入る際に踏み越えた紋様、ソレが今は跡形もない。
「紋様は如何したのですか!? なぜ村の隔離措置が解除に……? まさか!」
童仙はかつて取り決められた村の“終焉シナリオ”について、思いだした。
童仙村の隔離及び封じ込めが不可能と判断された時、その怪異ごと村は虚無に滅せられる。
ソレが南山城国及びU.J.Iが共同で取り決めた、村の“終焉シナリオ”だった。
「どうしたのですか童仙殿。どうか、落ち着いてください」
「村に何があったのです?」
「……もしや童仙殿、余りに到着が早いとは思いましたが、連絡すらも及びつかぬ速さだったのでしょうか」
「連絡とは?」
「……少し、お待ちください」
門番はもう一人の門番と話し始めた。
童仙にとってソレは長く感じられたが、実際には数秒の会話だっただろう。
「童仙殿、落ち着いて聞いてください」
「わかりました」
「童仙殿が村域内より一度、ご自身の茶畑へと戻られたコトは聞き及んでおります。言うまでもないと思いますが、ソレは童仙殿が村に入られた当日の夕刻のコトですね」
「ええ」
「その次の日の朝、童仙殿は月野ヶ瀬さまの御屋敷から再度、コチラへと急がれたのだと思いますが……その御足の速さ故に、今の村の事態をご存じではないのでしょう。よろしいですか?」
「はい。ココまで、連絡などは一度も……」
門番が咳払いをして、話を続けた。
「童仙殿が再び旅立たれたその日の昼、我々も驚くコトが起こったのです。突如、村全体の魔術回路が正常化し、あらゆる怪異が消え失せたようなのですよ」
「俄かには……信じられませんが……」
「私たちも全く同じように、事象そのものを疑いました。ですが、どのような観測手段を以てしても、もはや異常は確認できませんでした。以前の如く偽りの村の光景が見えているのではありません、真に、村は元に戻ったようなのです」
童仙は自らの口を押さえた。
「信じられないとは思いますが、ソレが今より二日ほど前の出来事です。
そうだ! 村域内より先刻も、出てこられた村民の方がおられます。何名かそのような方々が続いておりまして……」
「本当ですか!? 問題は?」
「我々も厳重に検査した後、まだその方々への隔離措置自体は続いてはおりますが、今もって異常は発生しておりません。よって我々もまさに現在、村への調査隊を組織しているトコロで……」
「もう入られるのですか?」
「いえ、もう一日程度の準備の後に」
童仙は居ても立っても居られなかった。
「御免」
童仙は村域内に数歩入ると、振り返った。
門番である役人たちは、入ってまで引き止めるコトはできない。
「童仙殿!」
「私は村について、最後に入って確認した“調査隊”です。“第二次”調査隊の先陣も切るとお伝えください。いずれにせよ、村がどうあろうとも再度、近道として通り抜けるつもりでした。月野ヶ瀬さまにとっては全て見えていたコトでしょう」
「……わかりました。どうか御無事で。おい! 彼の国の道具をココへ!」
童仙はU.J.Iのゴーグルを受け取ると、村の中心部へと走った。
童仙は思わずそう言った。
本人は門に近づきつつ一人ごちたつもりだったが、門番はソレを聞き逃さず返事した。
「コレは童仙殿。月野ヶ瀬さまよりご連絡は頂戴しておりましたが、遥かにお早く。村の隔離措置の解除も、まもなくでございます」
童仙は門まであと一歩の所に立った。
かつて村域内に入る際に踏み越えた紋様、ソレが今は跡形もない。
「紋様は如何したのですか!? なぜ村の隔離措置が解除に……? まさか!」
童仙はかつて取り決められた村の“終焉シナリオ”について、思いだした。
童仙村の隔離及び封じ込めが不可能と判断された時、その怪異ごと村は虚無に滅せられる。
ソレが南山城国及びU.J.Iが共同で取り決めた、村の“終焉シナリオ”だった。
「どうしたのですか童仙殿。どうか、落ち着いてください」
「村に何があったのです?」
「……もしや童仙殿、余りに到着が早いとは思いましたが、連絡すらも及びつかぬ速さだったのでしょうか」
「連絡とは?」
「……少し、お待ちください」
門番はもう一人の門番と話し始めた。
童仙にとってソレは長く感じられたが、実際には数秒の会話だっただろう。
「童仙殿、落ち着いて聞いてください」
「わかりました」
「童仙殿が村域内より一度、ご自身の茶畑へと戻られたコトは聞き及んでおります。言うまでもないと思いますが、ソレは童仙殿が村に入られた当日の夕刻のコトですね」
「ええ」
「その次の日の朝、童仙殿は月野ヶ瀬さまの御屋敷から再度、コチラへと急がれたのだと思いますが……その御足の速さ故に、今の村の事態をご存じではないのでしょう。よろしいですか?」
「はい。ココまで、連絡などは一度も……」
門番が咳払いをして、話を続けた。
「童仙殿が再び旅立たれたその日の昼、我々も驚くコトが起こったのです。突如、村全体の魔術回路が正常化し、あらゆる怪異が消え失せたようなのですよ」
「俄かには……信じられませんが……」
「私たちも全く同じように、事象そのものを疑いました。ですが、どのような観測手段を以てしても、もはや異常は確認できませんでした。以前の如く偽りの村の光景が見えているのではありません、真に、村は元に戻ったようなのです」
童仙は自らの口を押さえた。
「信じられないとは思いますが、ソレが今より二日ほど前の出来事です。
そうだ! 村域内より先刻も、出てこられた村民の方がおられます。何名かそのような方々が続いておりまして……」
「本当ですか!? 問題は?」
「我々も厳重に検査した後、まだその方々への隔離措置自体は続いてはおりますが、今もって異常は発生しておりません。よって我々もまさに現在、村への調査隊を組織しているトコロで……」
「もう入られるのですか?」
「いえ、もう一日程度の準備の後に」
童仙は居ても立っても居られなかった。
「御免」
童仙は村域内に数歩入ると、振り返った。
門番である役人たちは、入ってまで引き止めるコトはできない。
「童仙殿!」
「私は村について、最後に入って確認した“調査隊”です。“第二次”調査隊の先陣も切るとお伝えください。いずれにせよ、村がどうあろうとも再度、近道として通り抜けるつもりでした。月野ヶ瀬さまにとっては全て見えていたコトでしょう」
「……わかりました。どうか御無事で。おい! 彼の国の道具をココへ!」
童仙はU.J.Iのゴーグルを受け取ると、村の中心部へと走った。
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