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南山城国(13)

暗黒山脈(20)

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「しかし、スピードが早くなるとコレまで以上に狙いにくいな」

「なに当たり前のコト言ってんの。いいから狙って」

アルマージュにレインスが述べる。

「アズールの飛行はまだ保つし、持久戦に持ち込めばコッチのが有利よ」

「……」

「どうかしましたか、オクルスさん」

口に手を当てて考えているオクルスに、ララが問いかけた。

「うん、持久戦だと有利じゃあないのは向こうもわかってるはずだ。ソレに、彼らの走りには迷いがなく直線的だ。何か狙いがあるような気がする」

「じゃあどうすんだ」

「そうなんだよ、アルマージュ。……少し距離を置こう。追尾を緩めよう」

皆がソレを聞いて、アズールの出力を下げた時だった。

「レインスさん、危ない!」

ララが叫んだ。
レインスの目の前に、人影が飛んでくる。

レインスは身体を捻りアズールの方向を無理やり変えると、何とかその人影を回避した。
回避された相手は、弧を描いて落下する最中に、アルマージュの弾丸を数発食らった。

「仕留めた!? 何なのよ一体! 出力下げてなきゃ突っ込んでたわ」

「いなくておかしいと思ってた、向こうの旅団の四人目か?」

「いえ、どうやら違うようです」

アルマージュとレインスは、ララとオクルスの視線の先を追った。
森の中、木々の上に、無数の人影が見える。

「何だ?」


◇◇◇


「喰屍鬼(グール)だよ。初めてかな」

遠藤がポツリと言った。
南山城国の三人は薮の中に隠れながら、追手とグールたちの模様を伺っていた。

「遠藤さん、こんな印で本当にグールたちからは見えていないんですか?」

「信じたまえ。グールたちは魔法生物としては、そんなに高位の存在じゃあないんだ」

三人は片手で印を結んでいた。
指の形で空間と角度を操作するコトで、グールには三人の姿は見えもせず、聞こえもしなかった。

遠藤の案は、グールのいる洞窟まで接近し、彼らを怒らせるコトだった。
洞窟に到達すると素早く石を投げ込み、彼らを誘いだした。
そしてグールたちは印を結んだ三人を認知せず、その追手たちに攻撃を受けたと思い込んだのだった。

「グールなら僕らよりも夜目が利くから、空にいる彼らが見えているだろうね。お相手は任せるとしよう」

「どうして遠藤さんは、喰屍鬼が此処にいるって知ってたんですか?」

龍之介が聞く。

「簡単なコトだよ。この山に入山するのは初めてではないからさ。もちろん“ゴール”まで行ったコトはないがね」

「この印や、喰屍鬼の生体にもスゴく詳しいですよね」

「他国での経験も少しあるからね」

「……学びたいです」

「あ、私も」

「心配しなくとも、学んでいくコトになると思うよ。さて、先を急ごうか」
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