192 / 288
バクエット・ド・パクス(13)
暗黒山脈(18)
しおりを挟む
「“急須”を持ってる以上、コチラの可愛い少年からまずはお相手しないといけませんねえ♪」
パクスの彼女が、アサヒの方を向いた。
アサヒは“銃”を連射する。
アサヒの狙いは良かったが、女性はその弾丸を容易く回避した。
回避しながらも、アサヒに一歩また一歩と近づく。
「大丈夫。取って食おうってワケじゃあありませんから」
女性はムサシたちのコトも計算し、位置を選んでいた。
もしもムサシかフランシスが攻撃を行えば、アサヒにも当たりかねない場所を上手く選び、戦闘の状況を操作していたのだった。
彼ら二人もそのコトはわかっていたので、アサヒと女性に向かって既に走り始めていたが、ソレは間に合いそうもなかった。
アサヒは弾倉を装填するでもなく、その銃口を下げた。
「諦めていただけましたか♪ その方がコチラも助かります」
「いえ、もう終わりました。命中したので」
女性は全身に何かが衝突し、身動きができなくなるのを感じた。
彼女の反応速度を上回るスピードだった。
「ぐっ!」
「『90℃』弾が狙っていたのは、私の方だ」
耳元で、ジュディの声が聞こえた。
辛うじて動かせるだけ首と目を女性が動かすと、背後で、空中に浮かんだジュディの“右胸”に弾丸が命中しているのが見えた。
「バラバラにしたのは悪手だったわね。お陰で『90℃』弾の力もあって、貴女を拘束するコトができた」
「こんな拘束ぐらいっ……!」
銃声がまたも森に響いた。
アサヒがジュディの、次は右腕に弾丸を撃ち込んでいた。
女性を縛るジュディの力が激しくなる。
「ぐあっ……! 『50℃』弾……ですか」
「いや、『60℃』だ。残念だったな」
「……どこかでお会いしましたっけ?」
「ああ。確かに、私の脳の中にも貴女の記憶があるよ」
「メモリーじゃあ、ないんですか」
「こう見えて、私はロボットじゃあなくてね」
「あら、身体は私の方が柔らかそうですけど」
「いや、ご覧の通り関節も柔らかいよ」
「そういうコトじゃあ、ないんですけどね」
「わかってるさ。お陰で掴みやすいよ。身体の凹凸がハッキリしててね」
「……じゃあ、精一杯掴んでいてくださいねっ!」
女性は上半身に比べて拘束の緩い下半身に力を込めると、空中にジャンプした。
そのまま背中から、地面目がけて落下する。
女性の全身を、電磁力で少し身体を離しつつ、くまなく拘束していたジュディだったが、その主要部分は女性の背中に集中していた。
体幹部分と頭部もそうだ。
女性が背中から地面に落下したコトで、ジュディに衝撃が加わった。
「ぐぅっ……!」
ジュディの拘束は少し緩んだが、まだ女性を離さない。
「じゃあもういっちょ!」
女性が立ち上がり、再度同じ攻撃を加えた。
しかし次は、同じようにはいかなかった。
女性の背中に、貫くような衝撃が来た。
「かはっ……!」
ジュディが体幹部位に少し空間を開け、ソコに左手を置いたのだった。
その指先を女性の背中に添え、手刀のようにして。
地面に衝突した力は、左手首からその指先へと、そして女性の背中へと伝わっていた。
「痛いわね……。どうする? 私と貴女の我慢比べ、する? 確かに、私より貴女の方が柔らかそうだけれど」
「……機械はコレだから嫌いです。おっと失礼。脳みそ以外だけ、でしたっけ?」
パクスの彼女が、アサヒの方を向いた。
アサヒは“銃”を連射する。
アサヒの狙いは良かったが、女性はその弾丸を容易く回避した。
回避しながらも、アサヒに一歩また一歩と近づく。
「大丈夫。取って食おうってワケじゃあありませんから」
女性はムサシたちのコトも計算し、位置を選んでいた。
もしもムサシかフランシスが攻撃を行えば、アサヒにも当たりかねない場所を上手く選び、戦闘の状況を操作していたのだった。
彼ら二人もそのコトはわかっていたので、アサヒと女性に向かって既に走り始めていたが、ソレは間に合いそうもなかった。
アサヒは弾倉を装填するでもなく、その銃口を下げた。
「諦めていただけましたか♪ その方がコチラも助かります」
「いえ、もう終わりました。命中したので」
女性は全身に何かが衝突し、身動きができなくなるのを感じた。
彼女の反応速度を上回るスピードだった。
「ぐっ!」
「『90℃』弾が狙っていたのは、私の方だ」
耳元で、ジュディの声が聞こえた。
辛うじて動かせるだけ首と目を女性が動かすと、背後で、空中に浮かんだジュディの“右胸”に弾丸が命中しているのが見えた。
「バラバラにしたのは悪手だったわね。お陰で『90℃』弾の力もあって、貴女を拘束するコトができた」
「こんな拘束ぐらいっ……!」
銃声がまたも森に響いた。
アサヒがジュディの、次は右腕に弾丸を撃ち込んでいた。
女性を縛るジュディの力が激しくなる。
「ぐあっ……! 『50℃』弾……ですか」
「いや、『60℃』だ。残念だったな」
「……どこかでお会いしましたっけ?」
「ああ。確かに、私の脳の中にも貴女の記憶があるよ」
「メモリーじゃあ、ないんですか」
「こう見えて、私はロボットじゃあなくてね」
「あら、身体は私の方が柔らかそうですけど」
「いや、ご覧の通り関節も柔らかいよ」
「そういうコトじゃあ、ないんですけどね」
「わかってるさ。お陰で掴みやすいよ。身体の凹凸がハッキリしててね」
「……じゃあ、精一杯掴んでいてくださいねっ!」
女性は上半身に比べて拘束の緩い下半身に力を込めると、空中にジャンプした。
そのまま背中から、地面目がけて落下する。
女性の全身を、電磁力で少し身体を離しつつ、くまなく拘束していたジュディだったが、その主要部分は女性の背中に集中していた。
体幹部分と頭部もそうだ。
女性が背中から地面に落下したコトで、ジュディに衝撃が加わった。
「ぐぅっ……!」
ジュディの拘束は少し緩んだが、まだ女性を離さない。
「じゃあもういっちょ!」
女性が立ち上がり、再度同じ攻撃を加えた。
しかし次は、同じようにはいかなかった。
女性の背中に、貫くような衝撃が来た。
「かはっ……!」
ジュディが体幹部位に少し空間を開け、ソコに左手を置いたのだった。
その指先を女性の背中に添え、手刀のようにして。
地面に衝突した力は、左手首からその指先へと、そして女性の背中へと伝わっていた。
「痛いわね……。どうする? 私と貴女の我慢比べ、する? 確かに、私より貴女の方が柔らかそうだけれど」
「……機械はコレだから嫌いです。おっと失礼。脳みそ以外だけ、でしたっけ?」
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

どうぞお好きに
音無砂月
ファンタジー
公爵家に生まれたスカーレット・ミレイユ。
王命で第二王子であるセルフと婚約することになったけれど彼が商家の娘であるシャーベットを囲っているのはとても有名な話だった。そのせいか、なかなか婚約話が進まず、あまり野心のない公爵家にまで縁談話が来てしまった。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる