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シュロッス・イン・デル・ゾーネ(12)

暗黒山脈(14)

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ツヅキが事態を完全に把握する寸前に、メイが前に出た。
そして杖を揮った。

一瞬の静寂の後、メイの服がはためいたかと思うと、杖の先から魔力が放出された。
魔力は物理的な力となって、前方の木々や草を地面ごと吹き飛ばしていく。

と、ウィーも続いてツヅキの前に出る。
同じく杖を揮うと、眼前に透明の壁が出現した。
透明の壁が認識できたのは、僅かに光の反射率が違うためだ。

「ココまでは、能力審査と学校の廊下の復習ですねぇ。ツヅキさん」

ウィーがツヅキに笑顔で語りかける。

「今回、この壁の向こう側に貼り付けてるのは森のテクスチャですけどねぇ」

「……コチラからは一方的に攻撃できて、向こうからはコチラの姿すら見えないってワケか」

「まあ、魔力の発生源でコッチの大凡の位置はわかるでしょうけど」

そう言いながらメイは、ツヅキにアイコンタクトをした。
ツヅキの顔と左手に、目線を繰り返し送っている。

ツヅキは思いだし、銃を構えた。

「この壁は」

「もちろん、ツヅキさんの銃弾は通しますよぉ」

「あっ、あの、わ、私は……」

「カップは、私の攻撃してる方向一帯を重くして。いける?」

「わっ、わかりました!」

カップが杖を揮う。
メイが吹き飛ばした木々や土塊が、一斉に落下し始めた。

と、メイが攻撃を止めた。
カップの攻撃範囲の外で空中に舞い残っていた種々の残骸も落ち、見通しの良い光景が眼前に広がる。

だが、敵の姿はない。

「カップ、ありがとう。お礼ついでじゃあないけれど、逆に、全てのモノを少し浮かせてくれないかしら? できれば重さ別で」

「は、はい!」

カップが杖を一振りする。
葉や草、樹々の破片、土塊、石や岩の順に、前方の物質が舞い上がった。

「敵の姿やソレっぽいのは……ないわね」

「逃がしたか?」

「もうちょっと調べてみるわ。ウィー、音を拾ってくれるかしら」

「あいあいさー、ですぅ」

ウィーも杖を一振りした。
一瞬、目の前の透明の壁に虹色の線が走る。

続いて、透明の壁には幾つかの波紋が現れるようになった。
メイがソレらをまじまじと観察する。
ウィーがツヅキとカップに話しかけた。

「音を視覚化してます」

「……この波紋は、その方向の音か?」

「そうですぅ。この壁を通して、伝わってきた音を波紋にして視覚化してます。レーダーってやつですかねぇ」

「み、見方が難しいですね」

「慣れれば、お嬢さまのように索敵にはもってこいですよぉ」

「……いないわね。ウィー、念のため、ドーム状にも展開して見ておきましょう」

「はーい」
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