カメリア・シネンシス・オブ・キョート

龍騎士団茶舗

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南山城国(12)

暗黒山脈(6)

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「旧村域侵入後、事前資料の通りに、四方の山頂に巨人の姿を確認。加えて、上空に巨大な蛾か蝶のような影も視認しました。
影の通過後、異形の村民たちが出現したため、稚郎子(いらつこ)の国(=U.J.I)の装置を使用して視覚汚染を防御。その後は速やかに村域半ばまで到達できました」

「お主がこの国に戻らざるを得なくなったのはソレ以降か」

夢絃が口を開いた。

「はい。村民たちに悟られぬよう“印”も使用しておりましたが、上空の影には効果が少なかったようです。
影と共に村民たちとの戦闘も余儀なくされ、私の技量不足故に……こうして戻る事態と相成りました」

童仙は指をつくと、頭を下げた。

「よい。その他の旅の連れは、無事に村を抜けだせたとのコトであるからな。ソレに童仙……」

「はい」

「よう戻った」

下を向いていた童仙の目が見開かれる。
そして、思わず顔を上げた。

「稚郎子の国のモノを身につけておらぬ。相手に奪われたのであろうが、ソレなしであの村から帰るのは難しかったろう。盲(めしい、盲目のコト)となるも同然であるからな」

童仙は村で最後に聞いた声の主について、言うべきか迷った。

「……確かに、自分でも戻れるか不安でした」

「で、あろうなあ。幾度でも自らの茶園に戻れるとは言え、腹を召す練習などそうできるワケでもないからな。立派に召したのであろう」

権左が豪快に笑った。
夢絃は笑みこそ浮かべなかったが、その声音は少し慈愛を含んだモノとなった。

「して、いかがする。童仙」

「旅へ戻りまする」

「ソレはわかっておる」

「……村を再度、抜けようと思います。先のような失態は二度と致しませぬ」

「ソレがよい。だが用心せよ。お主の旅の連れは村を抜けたようだが、その後から村の雰囲気が妙であるようだ」

「恐れながら、妙とは」

「わからぬ。お主にはソレについても突き止めてもらいたい」

「委細承知いたしました」

童仙はそう言い、平伏した。
村で突き止めなければならないコトの中に自ら、“あの声の主の正体について”を含めながら。


◇◇◇


童仙は日の出と共に、旅路に戻った。
その駿足は飛脚よりも速く、かつての道をなぞらせた。

再びの旅路を下半身に任せながら、童仙は頭の中で昨夜の会話の終わりをなぞっていた。

『夢絃先生、皆が村を無事に抜けたというのは、村の見張りからの便りですか』

『いや、ソレよりも先にわかっていた。“まれびと”殿に短刀を持たせたであろう。アレは儂の分身なのでな』

『そのような術があるのですか』

『霊を分けるコト自体は容易い。その資格を得るのは易くないが喃。いずれお主にも教えよう、童仙』
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