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南山城国(12)

暗黒山脈(4)

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「やっぱり、あの村の怪異の元はこの山脈?」

「そうかもしれないね」

カオルに対し、遠藤が答えた。

南山城国の一行は童仙と別れた後、何とか村を脱出するコトに成功した。
村から山脈まではほぼ地続きで、休む間もなく山道へと突入したのだった。

パクスの一行が進んでいる山脈中部と違い、南山城国の一行が足を踏み入れた山脈南部は薄暗く、樹海の様相を呈していた。
ソレでも“人を誘い込む”奇妙な山道自体は、草を生やすコトなく存在していたが。

道を進み始めてすぐに、気味の悪い蛾と蛭が一行を出迎えた。

蛭には二種類が存在し、片方は個体によって大きさと位置が違う、しかし必ずその肥え太った体の何処かに眼球を備えた種類。
もう片方はかつての“村人”を思わせるコウガイビル様のソレで、一見すると普通だが、頭の裏側にある口は歯を揃えた人間のモノに酷似していた。

蛾はというと、背中側から見る分にはコレも普通だが、腹側にある6本の足はよく見ると、小さな人間の手足だった。
しかも左右不釣り合いに手足が存在している。右は手、足、足。左は足、手、足という具合にだ。

コレらの事実は、山道に入ってすぐにそれぞれの虫が這い寄ってきたために、龍之介が切り捨てたコトで発覚した。
そしてその事実から、先のカオルの発言へと繋がったのだった。

「うええ~。この“うええ~感”は確かにあの村と同じよね」

「確かにそうですね、カオルさん」

「龍之介くん、刀を綺麗にしとこっか? そのまま鞘に収めるのイヤじゃあない? ソレ」

龍之介は虫を切り捨てた後に刀を振って、僅かに付着した体液を払っていた。
しかし何となくイヤな感じは残る。

「すみません。お願いします」

「あいよ」

カオルは刀に手をかざした。
暖かな光がその手を中心に放出され、刀身を癒していくかのように見える。

先の村で童仙と別れた後、一行はすぐに村を脱出できたワケではなかった。
その最中、カオルは自らの魔力の制御に、完全ではないが目覚めたのだった。

村で敵を斬り進んでいる中、龍之介は刀を振るう感覚が徐々に重くなっていくのに気づいていた。
ソレがカオルに言わせると『何となくイヤ』で『綺麗にしたい』モノらしい。
恐らくソレの正体は“穢れ”のような何かで、村での経験を経てカオルはその視認ができ、祓えるようになったのだろう。

「僕の銃を使ってもいいのだが何分、音が派手でね。申し訳ない」

「いえ、大丈夫です。遠藤さん」

「そうそう、別に私もコレをしたら疲れるワケじゃなし。他の一行に見つかる方が厄介だよ。
まあ、同じ目的地に向かってるんだから、いずれは会うんだろうけど」

「その時には僕の表道具を存分に披露する故、どうか許してくれたまえ御二人」
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