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バクエット・ド・パクス(12)
暗黒山脈(1)
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「なんか思ったより、普通の山だな」
ミサトが言った。
「どういう意味ですか♪」
カトリーヌが聞く。
「いや、もっと“暗黒”って言うぐらいだから、おどろおどろしいのかなと。樹海っつーか」
「ずっと遠くからも見てたじゃあないですかぁミサトさん。何を今更♪」
「いや、近くで見ると何か違うのかなと思ってたんだよ」
バクエット・ド・パクスの一行は先週にU.J.Iを出国した後、カトリーヌの思いつきで、出国前に購入した人数分の自転車等の装備による、2日間のマウンテンバイク旅とグランピング的キャンプを決行した。
その後、暗黒山脈への前衛となる小高い山脈を4日かけて越え、今こうして最後の目的地を抱く山を見上げているというワケだ。
「全然、暗黒っぽくねえなあ。この山」
「アレ? ミサトさんは暗黒山脈の名前の由来をご存じないんですか?」
ノワールが問いかけた。
「いや、知らないよ」
「そうでしたっけ?」
「あっ」
カトリーヌが声を上げる。
皆が察した。
カトリーヌはてへへと頭をかきながら舌をだした。
その後、継続して注がれる皆からの冷たい視線に、慌てて申し訳なさそうな顔をして手を合わせた。
「すみません! ……ブレーズさん! 貴方なら言いたいコト伝わらない気持ち、わかってくれますよね?」
ブレーズに駆け寄って抱き着くカトリーヌ。
「いや……………時は言う」
「うんうん、わかります」
わかってなさそうなカトリーヌを尻目に見た後、ミサトはノワールに目を移した。
ノワールはブレーズらを見て少し口角を緩めていたが、目線を感じるとミサトの方を向いて肩を竦めた。
「じゃあ、説明しますね。暗黒山脈が暗黒たる一番の所以は、コレです」
ノワールが小走りで山へと向かう。
山に近づくと、ミサトの方を振り返り、後ろ向きで山へと入った。
瞬間、ノワールの姿が消えた。
「おい、ノワール?」
声はない。
「ちょっとちょっと」
ミサトが駆け寄ろうとしたその時。
「大丈夫ですよ、ミサトさん」
ノワールが姿を現した。
山からミサト達の方へ歩いてくる。
「ご覧の通りです。私からは皆さんが見えてましたし声も聞こえてましたが、皆さんの方は私の姿はもちろん、声も聞こえなかったでしょう?」
「何? 何か喋ってたのか?」
「ええ、ミサトさんの良いトコロを三つほど上げさせていただきました」
「もう一度言ってもらっていいか? この場でいいから」
ミサトが言った。
「どういう意味ですか♪」
カトリーヌが聞く。
「いや、もっと“暗黒”って言うぐらいだから、おどろおどろしいのかなと。樹海っつーか」
「ずっと遠くからも見てたじゃあないですかぁミサトさん。何を今更♪」
「いや、近くで見ると何か違うのかなと思ってたんだよ」
バクエット・ド・パクスの一行は先週にU.J.Iを出国した後、カトリーヌの思いつきで、出国前に購入した人数分の自転車等の装備による、2日間のマウンテンバイク旅とグランピング的キャンプを決行した。
その後、暗黒山脈への前衛となる小高い山脈を4日かけて越え、今こうして最後の目的地を抱く山を見上げているというワケだ。
「全然、暗黒っぽくねえなあ。この山」
「アレ? ミサトさんは暗黒山脈の名前の由来をご存じないんですか?」
ノワールが問いかけた。
「いや、知らないよ」
「そうでしたっけ?」
「あっ」
カトリーヌが声を上げる。
皆が察した。
カトリーヌはてへへと頭をかきながら舌をだした。
その後、継続して注がれる皆からの冷たい視線に、慌てて申し訳なさそうな顔をして手を合わせた。
「すみません! ……ブレーズさん! 貴方なら言いたいコト伝わらない気持ち、わかってくれますよね?」
ブレーズに駆け寄って抱き着くカトリーヌ。
「いや……………時は言う」
「うんうん、わかります」
わかってなさそうなカトリーヌを尻目に見た後、ミサトはノワールに目を移した。
ノワールはブレーズらを見て少し口角を緩めていたが、目線を感じるとミサトの方を向いて肩を竦めた。
「じゃあ、説明しますね。暗黒山脈が暗黒たる一番の所以は、コレです」
ノワールが小走りで山へと向かう。
山に近づくと、ミサトの方を振り返り、後ろ向きで山へと入った。
瞬間、ノワールの姿が消えた。
「おい、ノワール?」
声はない。
「ちょっとちょっと」
ミサトが駆け寄ろうとしたその時。
「大丈夫ですよ、ミサトさん」
ノワールが姿を現した。
山からミサト達の方へ歩いてくる。
「ご覧の通りです。私からは皆さんが見えてましたし声も聞こえてましたが、皆さんの方は私の姿はもちろん、声も聞こえなかったでしょう?」
「何? 何か喋ってたのか?」
「ええ、ミサトさんの良いトコロを三つほど上げさせていただきました」
「もう一度言ってもらっていいか? この場でいいから」
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