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シュロッス・イン・デル・ゾーネ(11)
接近遭遇(29)
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「ソレじゃあ、始めて」
「待て、最後に一つ。過去の俺“たち”が半分を越えて“過去方向の部屋”を見ようとしだしたら、どうする? その時、お前含め全ては拘束される」
「その時はその時」
「ですね」
ツヅキは顔の右側に手を当て、覆いの役目をさせた。
そのまま、部屋の半分以上が見えないように注意して振り返る。
ツヅキの視野が部屋のおよそ半分と過去の自らを捉えた時、身体が拘束された。
全く動けない。
「今見ている光景を頭の中で想像して。普段行わないコトだから慣れてないでしょうけど、ぼんやりで大丈夫」
横からメイの声が聞こえる。ツヅキは言われた通りに従った。
自分でもできているのかわからないが、脳裏に眼前の光景を展開しようと努める。
「……良し。じゃあ私のいる方の部屋半分ってワケね」
ツヅキは動けないまま、メイの呟きを聞く。
数秒後、轟音が響いてツヅキの視界の右端から、過去方向の部屋と今いる部屋を隔てている透明の壁にヒビが入ってくるのが見えた。
そして、過去のツヅキたちが勢いよく、ツヅキから見て左側の壁に吹っ飛ばされていく。
吹っ飛ばされたツヅキたちは回転しながら壁に衝突して、部屋の反対側を見ながら痛みに顔をしかめていた。
ツヅキは気持ちの準備をした。
自分の番だ。
右側から不可視の力に押され、コレまでの自分たちと同じようにツヅキは吹き飛ばされた。
空中で半回転し“過去の部屋”が見えなくなったトコロで、身体の支配権が戻ってくる。
ツヅキは身体中に力を入れ、追突に備えた。
壁にブチ当たる。肩甲骨の辺りから頭にかけて衝撃が走った。
床に落下し、臀部からも骨身に染みる痛みを感じる。
数秒、顔をしかめつつ、ツヅキは前を向いた。
「いってぇ……」
メイが立っていた部屋の残り半分側は消失し、床と壁、天井があった部分からは真っ黒な空間だけが覗けた。
ツヅキの今いる場所の真反対、壁と床だけが僅かに残された場所に、メイが目を閉じながら、上体を少しだけ起こして横たわっている。
右手は杖を構え、左手は杖から放たれている力を制御するように掲げられていた。
「ツヅキくん、無事?」
「ああ。何があった?」
「過去方向の壁の右半分に“魔術核”があるとわかったから、見ないように破壊したのよ。力を行使すると同時に、未来方向からの攻撃を受けないように飛び避けてね。そして、見れなかったけど何となく方向だけ定めて、自由にするために貴方も吹き飛ばしたの。上手くいったようね」
「……ソレ全部言ってから、やってほしかったが」
「ごめんごめん、結果オーライ。だけど……」
「まだ何かあるのか?」
腰を押さえながら、ツヅキは立った。
「ええ。吹き飛ばした壁と核が、また戻りつつある。やはりカップの言ってた通り、私たちは未熟みたいね。開いた出口を留めておくので精一杯」
「……となると、俺一人でこの先は進む流れかな?」
「ご名答。私が操作するから、近づいてもらえるかしら?」
「この先は?」
「どういうルートになるのかはわからないけれど、目的の“場重ねの鏡”のある部屋に辿り着くはず。そして鏡は、貴方が目的とする場所を映しだすハズよ。ようやく“暗黒山脈”までの扉を手にできる。皆を助けて、連れていって」
「待て、最後に一つ。過去の俺“たち”が半分を越えて“過去方向の部屋”を見ようとしだしたら、どうする? その時、お前含め全ては拘束される」
「その時はその時」
「ですね」
ツヅキは顔の右側に手を当て、覆いの役目をさせた。
そのまま、部屋の半分以上が見えないように注意して振り返る。
ツヅキの視野が部屋のおよそ半分と過去の自らを捉えた時、身体が拘束された。
全く動けない。
「今見ている光景を頭の中で想像して。普段行わないコトだから慣れてないでしょうけど、ぼんやりで大丈夫」
横からメイの声が聞こえる。ツヅキは言われた通りに従った。
自分でもできているのかわからないが、脳裏に眼前の光景を展開しようと努める。
「……良し。じゃあ私のいる方の部屋半分ってワケね」
ツヅキは動けないまま、メイの呟きを聞く。
数秒後、轟音が響いてツヅキの視界の右端から、過去方向の部屋と今いる部屋を隔てている透明の壁にヒビが入ってくるのが見えた。
そして、過去のツヅキたちが勢いよく、ツヅキから見て左側の壁に吹っ飛ばされていく。
吹っ飛ばされたツヅキたちは回転しながら壁に衝突して、部屋の反対側を見ながら痛みに顔をしかめていた。
ツヅキは気持ちの準備をした。
自分の番だ。
右側から不可視の力に押され、コレまでの自分たちと同じようにツヅキは吹き飛ばされた。
空中で半回転し“過去の部屋”が見えなくなったトコロで、身体の支配権が戻ってくる。
ツヅキは身体中に力を入れ、追突に備えた。
壁にブチ当たる。肩甲骨の辺りから頭にかけて衝撃が走った。
床に落下し、臀部からも骨身に染みる痛みを感じる。
数秒、顔をしかめつつ、ツヅキは前を向いた。
「いってぇ……」
メイが立っていた部屋の残り半分側は消失し、床と壁、天井があった部分からは真っ黒な空間だけが覗けた。
ツヅキの今いる場所の真反対、壁と床だけが僅かに残された場所に、メイが目を閉じながら、上体を少しだけ起こして横たわっている。
右手は杖を構え、左手は杖から放たれている力を制御するように掲げられていた。
「ツヅキくん、無事?」
「ああ。何があった?」
「過去方向の壁の右半分に“魔術核”があるとわかったから、見ないように破壊したのよ。力を行使すると同時に、未来方向からの攻撃を受けないように飛び避けてね。そして、見れなかったけど何となく方向だけ定めて、自由にするために貴方も吹き飛ばしたの。上手くいったようね」
「……ソレ全部言ってから、やってほしかったが」
「ごめんごめん、結果オーライ。だけど……」
「まだ何かあるのか?」
腰を押さえながら、ツヅキは立った。
「ええ。吹き飛ばした壁と核が、また戻りつつある。やはりカップの言ってた通り、私たちは未熟みたいね。開いた出口を留めておくので精一杯」
「……となると、俺一人でこの先は進む流れかな?」
「ご名答。私が操作するから、近づいてもらえるかしら?」
「この先は?」
「どういうルートになるのかはわからないけれど、目的の“場重ねの鏡”のある部屋に辿り着くはず。そして鏡は、貴方が目的とする場所を映しだすハズよ。ようやく“暗黒山脈”までの扉を手にできる。皆を助けて、連れていって」
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