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シュロッス・イン・デル・ゾーネ(11)

接近遭遇(24)

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「お……うわっ」

ツヅキは“過去”の自分たちと同じく、振り返った。
すると、次は“未来”の自分たちが前を向いていくのが見えた。

「ツヅキ君、今どんな感じかしら?」

メイが前を向き直ったツヅキに聞いた。
だが、ツヅキは答えるコトができなかった。

「……私がまだ“過去”を向いてて、なおかつコッチのツヅキ君たちはまだ喋ってないから、貴方もまだ喋れないってコト? なるほどね」

メイはツヅキの心を久しぶりに読んだ。
こういう時だけは役立つかもしれない。

「こういう時だけはってどういう意味よ。えっ、何?」

ツヅキは「どうした?」と言いたかったが言えな

「どうした?」

ツヅキの口が勝手に動いた。

「いえ、コッチの貴方たちの口が『どうした?』って風に動いたから……そういうコトね。ややこしい」

二人は完全に、この空間に翻弄されつつあった。

「あ、戻れそう。私“たち”が振り返りつつある」

メイが呟く。
そしてすぐに振り返った。

メイが前を向いた瞬間、ツヅキは身体の自由を取り戻した。

「どういう仕組みだよコレ」

「とりあえず、後ろは向かない方が良さそうね」

「となると、横と縦はどうなってるって話だが」

「見る前に、準備したいトコロだけれど」

「何の準備だよ」

「そうよね」

ツヅキは右、メイは左を向いた。
それぞれ、向こうの部屋で自分たちが向こうを向いている。

「……変化ないな」

「そうね」

ツヅキがメイの見ている方向と同じ方向を向く。
メイが間にいるので、少し前かがみで覗き込む格好だ。
向こうの部屋の自分も、前かがみになる。

ツヅキは仔細に観察した。
先程、右を向いた時はコチラを見るメイが邪魔で、自分と、向こうの自分との差異が今ほど確認できなかった。

と、急にツヅキはクラクラした。一瞬、平衡感覚がおかしくなる。

前かがみの変な姿勢になったせいかと、姿勢を正して目を何度か瞬いた。

「大丈夫?」

「ああ……え?」

メイの声は、ツヅキの右側から聞こえた。
音も遠い。

右を見ると、向こうの部屋のメイがコチラを向いていた。
メイも驚いた顔をしている。

ツヅキは振り返り、自らの隣にいるメイを見ながら、向こうの部屋のメイにも聞こえるよう声の大きさを上げて言った。

「メイ、ソッチの俺を見ながら、何か喋ってみてくれないか」

「ツヅキ君、貴方、ソッチにいる?」

一言ずつ、確認するようにメイが言う。
ツヅキの目の前のメイは、口をパクパクするだけだ。
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