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シュロッス・イン・デル・ゾーネ(11)
接近遭遇(23)
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扉の先の空間、カップだけが残った先程の部屋よりも、更に現実感のない真っ白さの空間にツヅキとメイはいた。
あまりにも明るいその場所で、識別できるのは部屋の辺のみだ。
「お次は何だ?」
「コレが最後の試練のハズだけど……」
背後で勢いよく、通ったばかりの扉が閉まる音がした。
二人は音に驚き振り返ったが、瞬間、部屋の空間が大きく広がった。
いや、後に二人にはわかったコトだが、部屋そのものが広がったのではなく、部屋が“連なって”いた。
閉まったはずの扉は消えていたが、ツヅキとメイはソレ以上の光景に、扉のコトなど忘れてしまった。
部屋は前後左右、そして上下に連なっていた。
そして隣の部屋には、自分たち二人の姿がある。
いや、隣の部屋だけではない。
そのまた隣の部屋にも、そしてそのまた向こうにも、延々と無数の自分たちがいた。
前の自分たちは前を、左右を向けばその先の自分たちも顔を隠すように更にその先を向いていた。
後ろも同じだ。
一瞬、光景に合わせ鏡を連想したが、合わせ鏡とは異なり自分同士が顔を合わせるコトはない。
上下に関しては、上を向けば自分たちの靴が真っ先に見える。
下を向けば、同じく下を向いている自分たちの頭を見下ろす形になった。
部屋と部屋は、透明の壁で仕切られているようだった。
「さっきの廊下みたいな部屋の、扉のないバージョンか?」
「ちょっと見て」
ひとりごちるツヅキにメイが言う。
ツヅキはメイに従って、前方を見た。
隣のメイが腕を上げる。
すると、前方のメイ“たち”も手を上げていく。
「何が言いたい」
「見てて」
メイが腕を上下にバタバタする。
まず普段ならやりそうもない動作に、ツヅキは少し笑いそうになる。
前方に目をやると、メイたちも手を振っていた。
そして、ツヅキにはメイが伝えたいコトがハッキリわかった。
「なるほど。わかってしまえば当たり前っちゃあ当たり前だったけど、こうして連続で動かれるとわかりやすいな」
「でしょ。前の私は奥に行けば行くほど『少し遅れてる』」
「後ろはどうだ」
ツヅキは背後を振り返った。
後ろの自分“たち”は既に全員振り返り終えていた。
と、後ろのメイ“たち”はツヅキの方を見ていたのだが、彼女らも“奥の方から”向こうを振り返った。
順番に、コチラに後頭部を向けているメイになっていく。
「あら、やっぱり後ろは既に後ろを向いてるのね」
隣の、後ろを向き終えたメイが言う。
ツヅキは嫌な予感を振り払おうとしていた。
しかし、すぐにソレが振り払えないコトを確認した。
「メイ、失敗だ」
「何が? ……っ!」
メイは自らの顔をツヅキの方に向けようとしたが、動かせなかった。
「……鏡の中の自分が動いてないから?」
「だろうな。後ろを向いたのは失敗だったかも。
俺たちの最初見ていた方向は、振ってる腕の動きが遅れていたコトから考えて、未来の自分だったんだと思う」
「……流石、頭の回転だけは速いわね。
ってコトは背後の方向は、自分が振り返った時にはもう既に後ろを見ていたから、過去ってワケかしら?」
「そうだろうな。『だけ』は余計だ。
過去の自分たちが動いてない以上、今の自分たちも動けない」
と、言い終えるが早いか“過去の”ツヅキたちが振り返り始めた。
あまりにも明るいその場所で、識別できるのは部屋の辺のみだ。
「お次は何だ?」
「コレが最後の試練のハズだけど……」
背後で勢いよく、通ったばかりの扉が閉まる音がした。
二人は音に驚き振り返ったが、瞬間、部屋の空間が大きく広がった。
いや、後に二人にはわかったコトだが、部屋そのものが広がったのではなく、部屋が“連なって”いた。
閉まったはずの扉は消えていたが、ツヅキとメイはソレ以上の光景に、扉のコトなど忘れてしまった。
部屋は前後左右、そして上下に連なっていた。
そして隣の部屋には、自分たち二人の姿がある。
いや、隣の部屋だけではない。
そのまた隣の部屋にも、そしてそのまた向こうにも、延々と無数の自分たちがいた。
前の自分たちは前を、左右を向けばその先の自分たちも顔を隠すように更にその先を向いていた。
後ろも同じだ。
一瞬、光景に合わせ鏡を連想したが、合わせ鏡とは異なり自分同士が顔を合わせるコトはない。
上下に関しては、上を向けば自分たちの靴が真っ先に見える。
下を向けば、同じく下を向いている自分たちの頭を見下ろす形になった。
部屋と部屋は、透明の壁で仕切られているようだった。
「さっきの廊下みたいな部屋の、扉のないバージョンか?」
「ちょっと見て」
ひとりごちるツヅキにメイが言う。
ツヅキはメイに従って、前方を見た。
隣のメイが腕を上げる。
すると、前方のメイ“たち”も手を上げていく。
「何が言いたい」
「見てて」
メイが腕を上下にバタバタする。
まず普段ならやりそうもない動作に、ツヅキは少し笑いそうになる。
前方に目をやると、メイたちも手を振っていた。
そして、ツヅキにはメイが伝えたいコトがハッキリわかった。
「なるほど。わかってしまえば当たり前っちゃあ当たり前だったけど、こうして連続で動かれるとわかりやすいな」
「でしょ。前の私は奥に行けば行くほど『少し遅れてる』」
「後ろはどうだ」
ツヅキは背後を振り返った。
後ろの自分“たち”は既に全員振り返り終えていた。
と、後ろのメイ“たち”はツヅキの方を見ていたのだが、彼女らも“奥の方から”向こうを振り返った。
順番に、コチラに後頭部を向けているメイになっていく。
「あら、やっぱり後ろは既に後ろを向いてるのね」
隣の、後ろを向き終えたメイが言う。
ツヅキは嫌な予感を振り払おうとしていた。
しかし、すぐにソレが振り払えないコトを確認した。
「メイ、失敗だ」
「何が? ……っ!」
メイは自らの顔をツヅキの方に向けようとしたが、動かせなかった。
「……鏡の中の自分が動いてないから?」
「だろうな。後ろを向いたのは失敗だったかも。
俺たちの最初見ていた方向は、振ってる腕の動きが遅れていたコトから考えて、未来の自分だったんだと思う」
「……流石、頭の回転だけは速いわね。
ってコトは背後の方向は、自分が振り返った時にはもう既に後ろを見ていたから、過去ってワケかしら?」
「そうだろうな。『だけ』は余計だ。
過去の自分たちが動いてない以上、今の自分たちも動けない」
と、言い終えるが早いか“過去の”ツヅキたちが振り返り始めた。
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