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南山城国(11)

忌村(16)

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カオルと遠藤が村の外にでた。
残るは童仙だ。

「童仙さん!」

カオルが叫ぶ。

童仙は龍之介に続き、二人が村の外にでられたコトに安心していたが、同時に違和感を感じ始めていた。
自らの右腕に、刀を通じて感じる違和感。

敵の触手の再生を遅らせるために、斬り進みながらここまできた童仙。
相手の触手が“斬りにくく”なりつつあるのを感じていた。
触手が太く大きくなっている。

前方では、遠藤が銃を童仙の横に向けて構えていた。
援護するつもりらしい。

「待ってください! 何かおかしい!」

童仙の声に、遠藤が銃口を下げた。
村の出口までは残り30m。

童仙はようやく気づいた。
そうとも、簡単な計算だ。

敵の触手は今や童仙一人を追っている。
しかも、もう広範囲にその触手を広げる必要はない。
出口まで今や残り30m足らずの範囲内のみを、敵は攻撃すれば済むのだ。コレまでの手数の全てを集中して。

カオルたちも気づいた。
遠藤は試しに、童仙から離れた触手を撃つ。

撃たれた触手は先程までなら千切れ飛ぶか、対象の追跡を止めていたのに対し、今では散弾を受けてはじけつつも、更に複数の触手にその先が分裂してそのまま童仙を追っていた。

「なるほど、悪戯に撃った方がヤバいかもね」

「自分が行きます!」

龍之介が飛びだす。
再び村の領域内に入り、自分と童仙の間にある触手の一本を両断しようとした。

しかし、既に触手は刀の一撃に耐えるほどの太さを獲得していた。龍之介の刀が滑る。
完全に両断できずに生まれた裂けめから二本に分裂し、一本が龍之介へと向かった。

遠藤が龍之介の服を掴み、村の外へと引っ張りだす。
触手は見えない壁にぶつかったように跳ね返った。やはり村の外は、“蝶”の狩場である村内とは別領域らしい。

「遠藤さん! まだ」

「冷静に、龍之介殿。分裂したのに、触手の太さがさほど変わっていない。キミであれ僕であれ、むやみに攻撃するのは悪手かも」

「童仙さん!」

カオルの声に、二人が目の前の触手から童仙へと目を転じる。
触手の一本に、童仙は装着していたサーモグラフィを弾き飛ばされていた。

「遠藤殿が正しいです! 先に行ってください!」

目を閉じた童仙が叫んだ。
カオルたちの前で、複数の触手の先端が変形した。
サーモグラフィ越しに見るソレは、この忌まわしき村の変わってしまった人々と同じ、コウガイビル状の頭部だ。
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